感情のグラデーションが素晴らしい!

「村上春樹好きな人の書いた小説」という企画から読みにきました、Athhissyaです。本棚に推挙された他の作品の多くは暗いとこが単に暗く、明るいとこは単に明るい語り口が多かったのですが、この文章はひと味違いました。暗い部分に愉快さを挟み、明るい部分に毒を挟んでいるナラティブが多く見られます。どっちつかずの心理をうまく描写できていて、感情のグラデーションが素晴らしい作品ですね。

そして、どのエピソードにも「死」のテーマが色濃く影を落としていますね。これも他の小説と読み比べたときに、例えば「死をどう扱うべきか」という単一のテーマだけにフォーカスしている作品が多かったんですね。しかし、この作品では最初に生きている人間の模様を描き、話の中で死のモチーフを導入する構成を取ることで、より深い「死とどう向き合うべきか、かつどう生きていくべきか」というテーマが伝わりやすくなっています。

個人的には第3話がお気に入りです。応援コメントにもあった通り、今後も創作活動を頑張ってほしいなと思います。とんでもない良作のご紹介、ありがとうございました。