第2話 人を守るって難しいね



「君はボクの友達? それとも可愛い女の子? 」


「……へ? 」


 あれ? なんだかこの子、困った顔をしている……?

 質問しただけなんだけど……。


"え、あいつ何言ってんだ?"

"新手のナンパか"

"これきっと助けたら体を求めるやつだ。そんなやつに助けてもらうな"

"いや……でも彼が助けてくれないと……"

"そうだ、あのシルバーの男の子に頼るしかない"

"おい、シルバー! レナは可愛い女の子だぞ!"

"可愛い女の子だ!"

"可愛い"

"可愛いぞシルバー!"

"頼むシルバー"

"シルバー! シルバー!"


「え……ええっと、視聴者さんから見て私は可愛い女の子みたいですけど…… 」


 彼女はなぜか頬を赤くしながらそう言っている。

 怒ってるのかな?

 父も怒る時、顔を真っ赤にしていたし。


 でもこれで彼女は守る対象なのだと把握できた。

 

「わかった。君を守る。父の言葉に従って『女の子は守れ! 可愛いなら尚更な! 』」


 再びボクは地面を強く蹴り込み、敵へ高速で向かっていく。

 今度は相当強く踏んだのか、地面がめり込む感覚がした。


 相手の目の前まできたが、ボクの動きが見えてないみたい。

 なので、すかさず上に拳を振り抜くと相手の顎に命中。


「グハッ! 」


 大きく宙を舞っている。


"今シルバーの動き見えたやつ"

"いないだろ"

"気づけば男がぶっ飛んでました"

"合成とかCGじゃ……"

"いや、リアルタイム発信でそんなことできるかwww"

"てかぶっ飛ばす前にあいつなんか言ってたぞwww"

"父の言葉に従って"

"女の子は守れ"

"可愛いなら尚更な"

"ちゃんと覚えてるの草"

"ファザコンの女好きだ"

"↑シルバーにぶっ飛ばされるぞ"


「あとは1人だけだね 」


「てめぇ、武器も持ってないハンターを倒したくらいでいい気になってんじゃねーぞ 」


 そう言って目の前の男は何かを取り出した。

 そしてそれを上に向けて、


 バンッ――


 何かを放った。

 と同時にものすごい音と、何かが焦げた臭いがここまで漂ってくる。


"おい、あれアサルトライフルじゃね?"

"しかもダンジョン945の中層ボス『麒麟』から作られたなんとかって銃"

"幻雷銃。別名【 麒麟の叫び 】"

"世界に2つとない伝説のとか言ってたっけ"

"そんなこと言ってる場合か。幻雷銃持ってるってことは元1級ハンターのなんとかってやつだ"

"元1級ハンター!? ハンターでも1割しかなれないと言われてるあれか"

"え、シルバーやばいじゃん"

"伝説の武器を持った1級ハンター。お疲れ様でした"


「シルバーさん、逃げてくださいっ! 」


"レナちゃん、自分よりシルバーの心配"

"健気で可愛い"

"いやいや、レナちゃんも逃げなって"


 あの可愛い女の子とやらが逃げてって言っている。

 逃げる? あの程度ならワイバーンの足元にも及ばないだろうに。


「可愛い女の子さん、すぐ終わるから待っててね 」


「この幻雷銃を見ても強がれるなんてよっぽどのバカなんだろうなぁ!! 」


 そう言って、あいつはその幻雷銃ってやつを向けてきた。


 さっきバンッて音の前に、あの鉄から何か飛んでいたな。

 あんなスピードのものが当たるとさすがにタダじゃ済まない気がする。

 このままの肉体では。


「硬化! 」


 ボクの体は再び竜の鱗に覆われていく。

 

"何あれ……?"

"知らない"

"体全身が何かに覆われてるのか?"

"か、かっけぇ……"


「なんだそれ……気色悪りぃが関係ねぇな。【 幻雷龍の咆哮 】」


 男がそう叫ぶと、あの鉄の塊から雷を帯びた何かが放たれた。


 バチンッ――


 その雷はボクの体を貫くと同時にこの周辺一帯に影響を与えた。

 うん、やっぱり硬化してると全く問題ないね。


 シュウウ――


 なんだかさっきまで飛んでた飛行物体は雷の影響で下へ墜落したみたいだ。


"あれ!? カメラ映らないんだけど!? 俺だけだったり? "

"いや、わいも"

"バグか!?"

"いや、幻雷銃の雷の影響でAIドローンがやられたのかと……"

"おいふざけんじゃねー! レナは!?"

"レナちゃん……"

"シルバー……"


 さっきの攻撃女の子にまでは届いてないみたい。

 今のはたまたま当たらなかっただけ、多分危なかった。

 守るって難しいね、お父さん。


「くっそ、なんであいつには効かないんだ!! ならせめてあの女だけでもっ! 【 幻雷龍の咆哮 】」


 また同じ技。

 次は女の子に向かってかっ!


「キャ――――ッ! 」


 彼女に直撃する瞬間、


「ふう……。なんとか間に合ったね 」


 ボクは彼女を抱えることができた。

 あの飛び道具人間には危なすぎるよ……ボクも人間だけどさ。


「あれ……私、生きてる? 」


「うん、生きてるよ。守るって言ったでしょ? 」


「ひゃ……シルバーさん、顔が近い…… 」


 そんなことを言って彼女はまた顔を赤らめている。

 なんだ? また怒ってるのかな?

 人間って難しい。


「顔が近いとダメなの? 」


「い……いえ、そんなことは……ないです、けど 」


 なんて言いながら顔を背けている。

 人間は顔を見られたくないものなのだろうか。


「おい、銀髪! 1級ハンターなめてんだろ? ダラダラ女と話しやがって 」


 男はもう一つ幻雷銃とやらに似てる形状のものを取り出した。

 おそらくあれからも飛び道具が出るのだろう。


「ひっ……銃が2つ……!? 」


「大丈夫だよ、可愛い女の子さん。ボクにはまだ手があるんだっ! 」


 そう、彼女を守りつつあの男と戦う手段が。

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