【読み切り・長編連載中】未踏のダンジョンで育ったボクが父から引き継いだ竜の力を使って最強のハンターを目指す話～ハンター養成学校の令嬢を助けた姿が配信された結果、巷でシルバー様と崇められることになった～

第3話 待っててね、最古のダンジョン

「大丈夫だよ、可愛い女の子さん。ボクにはまだ手があるんだっ！ 【　竜翼　】！　」

　ボクがそう唱えると、背中から左右対称の大きな竜翼が現れた。

　これも全て父から引き継いだ『竜細胞』とやらがこの技を可能にしている。

　久しぶりに翼を出したなぁ。

　普段は重たいから仕舞ってるんだけど。

「ば、化け物だったのかよっ！！！！ 」

　バンバンバンバンッ――

　その銃から鉛の玉が放たれる。

　カキンッ――

「な、なに！？ 全て弾かれた……だと？ 」

　そう、ボクの体や翼に当たった鉛の玉は全て弾かれ、地面に転がっていったのだ。　

　それに彼女も無傷。

　この竜の翼で全身を覆い隠してるから。

　ボクはその鉛の玉を拾ってみた。

「へぇ、その銃っていう飛び道具はこの玉を飛ばすためのものなのか〜 」

「お前、なにもんだっ！？ 」

「なにもん？ なにって君と同じ人間だよ？ 」

「嘘つけっ！ そんな化け物じみた人間いねーって！ 」

　なんかあの男の人慌ててる？

　でもまだ銃向けてきてるし、倒してもいいよね！

「【 炎竜（サラマンダー）の翼・右翼 】」

　ボクの声に反応して、大きく広げた右の翼は炎に包まれていく。

「ひぃっ！！ 」

"おい、画面ついたぞ"

"やっとか"

"シルバーとレナは！？"

"レナがいない……"

"シルバーと敵はいるぞ"

"え……次はシルバー燃えてるんだが"

"さすがに合成乙"

"だからリアタイで合成は無理あるってwww"

"てか翼生えてね？"

"合成だ……合成だと言ってくれ"

　ボクは地面が陥没するほど強く踏み込み、相手の元へ駆けていく。

　彼は再び銃をこちらに向けてきたが、もう遅い。

　とっくにボクは君を通り過ぎ、炎の翼で体を焼き切ったのだから。

「うわぁっ！ 痛え……痛えよ 」

　さっきの威勢はなくなり、痛みを訴えながら地を転げ回っている。

"え、結局全員倒したの……"

"レナちゃんは！？"

"あ、シルバーの腕の中"

"俺のレナが……"

"いやいや、シルバーくんが守ってくれたんじゃない？"

"そういえばシルバー燃えてた……ってあれ！？ 炎は？"

"翼とか鱗もあった気がしたんだけど"

"いや？　銀髪の可愛い美青年が立ってるだけだが？"

"やっぱ合成だったんだって"

"もうこの際なんでもいい！ レナちゃんを守ってくれてありがとう！！！"

　ふう。久しぶりにたくさん竜の力を使ったな。

　力が解けちゃったってことは使いすぎちゃったんだろう。

「はいっ！ 」

　ボクは抱き抱えていた彼女を降ろしてあげた。

「あ、ありがとうございます 」

　それから湖へ水を汲みに行った。

　たしかここの湖って怪我とか治るらしいし。

　そう思って燃えていた男の人に手ですくった水をかける。

　ジュウ――

　ボクが水をかけると、彼の体に纏っていた炎とその焼け跡すらも綺麗に消え去った。

　おお……すごい。

　ボクは怪我をほとんどしないから知らなかったけど、こんなに回復するんだね。　

"オアシスの水すげぇ。あんな傷まで治るのか"

"そりゃみんな48階層行きたがるわけだ"

"だけどそこまで行けるハンターなんてほぼいないだろ"

"48階層の転移門をレポートした転移結晶がほちぃ"

"ありゃダメだ。中心都市の豪邸より高いらしいぞ"

"おいシルバーそんな奴治して大丈夫か？"

"もうすぐハンターギルドがレナの救援にくるらしいし大丈夫なんじゃない？"

"救援おっそwww"

"救援遅丸水産"

"てかA級ハンターとかいうやつ気絶してるの草"

"↑龍王会に殺されるぞw"

「あ……あの 」

　背後から声がしたので振り向いた。

　あぁ、さっきの女の子か。

「どうしたの？ 手なんか握ってきて 」

「シルバーさん、助けてくれてありがとうっ！ あなたがいなかったら私はきっと無茶苦茶に犯されて無惨な殺され方をされていたと思う…… 」

「君が可愛い女の子なら守るのは当然だよ　」

「え！？　かわ……っ！？　またあなたはそんなことを…… 」

　あ、また顔を赤くしてる。

"あーあ、レナちゃん……女の顔してらぁ"

"シルバーくん、あいつは生粋の遊び人"

"だめだレナ！　騙されるでないぞっ！"

"あんな助けられ方されて、更には口説かれて。惚れない女はいないって"

"でもシルバーくんならレナを守ってくれそうだぞ"

"シルバー様好き"

"私もシルバー様に口説かれたい"

"おい、シルバーファンまでできてんのか！？"

"ディックトックの切り抜きから来ました。シルバー様可愛い"

"シルレナカップル最&高"

"付き合っちゃえばいいのに"

「シルレナ……付き合っちゃえ……？　も、もうバカッ！！　」

　女の子はさっきよりも顔を赤くして、手のひらから大きな氷を飛ばした。

　そしてそれはあの飛行物体へ見事命中。

"あ、やばいっ！　レナちゃんの照れメーター振り切っちゃったぞ"

"あー配信止まるな、これ"

"ほーらドローンに氷魔法命中。画面切れましたー"

"いつものですね。ではお疲れ様でした、落ちます"

「あ……またやっちゃったぁ……。パパに怒られる……。」

「え、何をしたの？　」

　あの人急に飛行物体を壊したよね！？

　しかも自分でしといてなぜか落ち込んでいる。

　ボクはこの子の感情や行動原理がよく分からない。

　行動パターンが同じモンスターの方がよっぽど簡単だ。

　だから人間、怖いんだよね。

「え、あぁ。これは氷魔法だよ？　珍しいし見たことないのも仕方ないか　」

「氷魔法？　あぁたしか90層に似たものを使うモンスターがいたような…… 」

「90層！？　そ、そんな下層まだ開放されてないけど！？　」

「下層？　よく分からないけどボクこの上の94層に住んでるんだ　」

「94層……！？　94！？　はぁ――――っ！？　ここに住んでるってどゆこと！？　」

「え……そのままの意味だよ？　」

　びっくりした。

　この子急に大きい声出してきたんだけど？

　てっきりワイバーンが威嚇してきたのかと思った……。

「はぁ……とてつもない現実に頭がついてこない。で、そんなあなたがここ48層に何か用だったの？　」

「あっ！　そうそう！　青いマンゴーがボク大好きなんだっ！　それを食べにきたのっ！　」

「何その可愛い理由……。甘いものが好きなの？ 」

「う、うんっ！！ 甘いのって言ってもこの青いマンゴーくらいしか甘くないけどねっ！ 」

「か、可愛いぃ……。甘いものが好きなんだねぇ 」

　え、なに！？

　急にこの人近寄って撫でてくるんだけど！？

　……でも不思議と嫌な気はしない。

「あ、そうだっ！ 」

　なんだ？

　かわいい女の子が何かひらめいた顔をしている。

「な、なに……？ 」

　恐る恐る聞いてみると、

「シルバーくん、地上に来ない？ 」

「地上？ 」

　人間がいっぱいいるところ。

　正直怖いけど父も「リュウもいずれ外に出る時がくるだろう」とか言ってたっけな。

「うん、地上には甘くて美味しい食べ物がいっぱいあるよ？ ダンジョンみたいに危険だって少ないし 」

「あ、甘いものだって……！？ うーん…… 」

　危険がどうのってのはどちらでも良い。

　しかし甘いものってのは気になるなぁ……。

「ほらっ！ 行こっ？ 」

　彼女はボクの手を引いて進んでいく。

「えっ！？ 待ってよぉ、ボクにはまだすることが…… 」

　◇

　これをキッカケにボクは外の世界でハンターを目指すことになる。

　も、もちろん甘いものは食べたいけど……。

　地上に出るのはそれだけが理由じゃない。

　目的があるのだ。

　最古のダンジョンを攻略するという。

　そしてその先には、きっといなくなった父の真相が隠されているはず。

　待っててね、最古のダンジョン。

　そして父さん。

　ちょっと地上まで出てくるよ。

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これで3話読み切り分は完結です！

ここまでお付き合い頂きありがとうございました✨️

キリよく区切ったため、このような終わり方になっておりますが、もし長編版を掲載する場合は地上に出る前にもう少し細かいストーリーがございます😌

1話でも記載しましたが、初めてのダンジョン配信なので探り探り書いております！

読者様のご意見遠慮なくバシバシぶつけて下さい🙇

もし面白いよと判断して下さった方はよろしければ、フォローや応援コメント、レビューで教えて頂けると嬉しいです！

好評であれば6月以降になるかもしれませんが、長編バージョンで掲載していく予定です。

ちなみに好評かどうかの判断ですが、PVの推移とそれに対する作品フォロー数から検討するつもりです。

つまり目を通して下さった人の内、何人に1人がこの作品をフォローするに値すると判断して下さったのかを基準と考える予定です！

掲載する際は近況ノートやこの作品ページでお知らせするので、作品フォロー、作者フォローをして楽しみにお待ちください🥺