体育祭編(4)

「ねえねえさっきのお題なんだったの?」

クラス対抗のために第二グラウンドで待っているとやってきたリレーメンバー達から尋ねられた。

「え、そういえば聞いてなかった。」

「気にならないの?」

「どうせ友達とかでしょ。」

「あの九条さんから友達って認められてるのがすごいけどね....」

「あはは....話してみれば話しやすい....ってわけでもないけど印象よりも優しいと思うよ。」

「このクラスの誰も九条さんと瀬名さんの間には入れないけどね。」

「どういうこと?」

「あ、えーとそれは....」

【午前最後のプログラムはクラス対抗リレーです。】

「さ、そろそろ入場だよ!」

「円陣組もうぜ!」

「いいね!」

みんなで肩を組んで円陣を作る。

「で、誰が掛け声言うの?」

「快でしょ。」

「快君だね。」

「頼むぜアンカー。」

「俺かよ....まあいいや。絶対勝つぞ!」

「「「おお!!」」」

【クラス対抗リレー。1年生の入場です。】

歓声とともにグラウンドに入る。このリレーはポイントも大きいので紅白どちらの応援団も声を張り上げて応援している。

「緊張してきたー。」

「やっぱ本番はお腹がきゅってなるね。」

「頑張ろうね。」

「うん!絶対瀬名さんまで一位でつなぐよ!」

少し話してからクラスごとに一列で座ってトップランナーがスタートラインに並んだ。

「パン!」

銃声がなって一斉にスタートする。最初は2位でバトンが渡った。そこから1位でバトンをつないだ3組と抜いたり抜かされたりを繰り返して後半戦に突入した。徐々に差が付き始めて私の一人前にバトンが渡ったときには10mくらいの差がつけられていた。私の番が回ってきたので軽く屈伸をしてからトラックに出る。深呼吸をして緊張をほぐす。先に3組にバトンが渡りその3秒後に私にバトンが渡った。前を向くと1 位はコーナーを曲がろうとしているところだった。まだ追いつける。私はまずは加速しながらコーナを曲がり直線で一気にスピードを出した。少し距離は縮まったがそれでもまだ追いつけない。なので私は次のコーナで勝負を仕掛けることにした。

「はっはっ。」

呼吸がしづらくて苦しい。1位がコーナに入るのが見えたところで再びスパートをかけた。コーナはスピードを落とさないと膨らんでタイムロスになってしまうが私は思いっきり膨らんででもスピードを上げて外から追い抜かそうと考えた。膨らみ過ぎないように重心をかけながら走る。予想通り膨らんではしまったが膨らんだ分次は直線に走るだけだ。私は残っていた最後の力を振り絞って1位に並ぶとそのまま横並びの状態で快君にバトンを渡した。

「ナイスラン。」

快君はそう言ってバトンを受け取ると急加速からそのままトップスピードに乗り逆に10mくらいの差をつけて1位でゴールした。

「やったぁ!」

「よっしゃー!」

みんなはしゃいでゴールした快君の方に駆け寄る。

「ナイス快!」

「快君速すぎるよ!」

「ありがと。でもほぼ1位でつないでくれたおかげだよ。」


そのあとクラスの方に戻るとみんな拍手で迎えてくれた。

「ナイス一位!」

「マジで感動したわ。」

「ね、瀬名さんの追い上げからの快君の独走なんてアニメの世界じゃん。」

【これで午前の部を終了します。お昼休憩の後1時15分から開始いたします。繰り返します。―――】

「やっと休憩だー!」

「お疲れ様唯ちゃん。」

「ご飯どうする?一緒に食べる?」

「うん。でもお父さんたち来てるから一緒でもいい?」

「うん!美玖ちゃんと紗雪ちゃんにも声かけてくる。」


美玖ちゃんと紗雪ちゃんを誘ってから空き教室に向かった。

「お久しぶりです。」

「3週間ぶりかしら、唯ちゃん。」

空き教室で待っていると最初に来たのは雪伺さんだった。

「リレー見てたわ。足速いのね。」

「ありがとうございます。頑張りました。」

軽くガッツポーズをした。

「今日はお父様やお母様はいらっしゃらないの?」

「ちょうど仕事で....」

「それは残念ね。でも安心して。写真いっぱい取って送ってあげるから。」

「ありがとうございます。ところで紗雪ちゃんは?」

「紗雪は飲み物買いに行ってるわ。それであの借り物競争のお題はなんだったの?」

「私も知らないんですよー。」

「あらそうなの?」

「お待たせー!」

きなこちゃんがお父さんと美玖ちゃんを連れて教室に入ってきた。

「初めまして。きなこの父の三浦 なおと申します。」

「ご丁寧にどうもありがとうございます。今はいませんが九条紗雪の母の雪伺です。」

「九条さんのお母さん⁉初めまして三浦きなこです。」

「加藤美玖です。」

「きなこちゃんと美玖ちゃんね。紗雪がお世話になってます。」

「お待たせ。」

紗雪ちゃんも飲み物とお弁当の入った保冷バックを持って入ってきた。お弁当は二人で早起きして作った。

「待ってたわ。お腹が減ったわ。」

「うるさいわね。」

悪態をつきながら紗雪ちゃんがお弁当を広げていく。

「今日は二人の料理が食べれるのを楽しみにしてたのよ。」

雪伺さんはお弁当の方に乗り出してくる。紗雪ちゃんが布巾を敷いてその上に4段に重なったお弁当を広げていく。雪伺さんの分も作ったので量は大分多めにしてある。

「美味しそう。これ唯ちゃんと九条さんで作ったの?」

「ええ。」

「すご!ちょっと食べてみたい!」

「いいよ!きなこちゃんちのおかずと交換しよー。」

「うん!」

座ってお弁当を食べる。からあげなどの揚げ物やいろんな味のおにぎりを頬張る。

「美味しい。」

「そうね。」

「唯ちゃん。紗雪こっち向いて~。」

雪伺さんに呼ばれて振り向くと写真を撮られた。

「かわいいわ~。」

雪伺さんは写真を確認しながら言った。おにぎりを頬張っているところだったので少し恥ずかしい。

きなこちゃんと美玖ちゃんのお弁当とおかずを交換しながらお弁当を食べきった。

「お腹いっぱい~。」

「きなこちゃんいっぱい食べてたもんね。午後大丈夫?」

「午後は三種目目だから大丈夫!それよりも唯ちゃんは走れるの?」

「少し控えめに食べたから大丈夫だよ。」

「そうだみんなで写真の撮らせてくれないか?」

デザートのブドウを食べているときなこちゃんのお父さんがそう言ったので少し早めにグラウンドに行って体育祭の飾り付けがされた看板の前で写真を撮ることにした。

「暑い~。」

「さっきの冷房が恋しいよ~。」

「撮るよ~。ハイチーズ!」

シャッターを切る音がした。

「じゃあ次はこっち向いて~。」

次は雪伺さんに撮られ、そのあときなこちゃんときなこちゃんのお父さんが写真をとったり紗雪ちゃんと雪伺さんの写真を撮ったりした。




【100m走に出る生徒は本部まで来てください。】

テントで話してると放送が入った。

「あ、行ってくるね。」

「頑張ってね。」

「応援しに行くから。」

皆とハイタッチしてから本部のある教員用のテントの方に走った。

「1年の瀬名です。」

テントに行くと体育祭実行の生徒や先生がいた。

「1年の瀬名さんですね。」

体育祭実行の生徒が名簿にチェックをつけると白色のビブスを一枚渡された。

「これを着て第二グラウンドに向かってください。」

「はい。」

ビブスを着て第二グラウンドに行くと既に何人かの生徒が座って待っていた。そこにいた先生に名前を尋ねられたので言うと「アップとかしてて待ってて。」と言われたので軽くジョギングをして動けるようにする。

徐々に人がグラウンドに戻ってきて第二グラウンドにも全員揃った。

「よしみんな集合!」

先生が集合させて走る順番に並ばせる。私は午前と同じ第一レーンで走る。

「あ、さっきの。」

横には予選で1位だった子が座っていた。

「お互い頑張ろうね。」

「うん。」

彼女も白組なので一応味方だ。少しいつもより早い鼓動を落ち着かせようと深呼吸を繰り返す。

【100m走決勝の入場です。】

そうアナウンスが入り私たちはいっせいに立ち上がってグラウンドに足を踏み入れた。







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