体育祭編(3)
体育祭本番の日になった。体操着を着て鉢巻きを巻いて暑い日差しの中校長先生の話を聞いている。
「本日は天候にも恵まれ、快晴の中体育祭に臨めることを嬉しく思います。ぜひ練習の成果を存分に発揮してもらいたい。ではここに体育祭の開催を宣言する。」
校長先生は短めに話を終わらせた。これが校長先生が人気な理由の一つでもある。開会式は素早く行われ全体での準備運動のあと各クラスの応援場所に戻った。テントが張られてその下にはパイプ椅子が並べられている。
「テントあって良かったね。」
「そうね。もしこの暑さの中で日影がないと思うとぞっとするわ。」
紗雪ちゃんと話しているとアナウンスがグラウンドに響いた。
【第一種目の100m走に出場する生徒は第二グラウンドに集合してください。】
「あ、行かなきゃ。」
「瀬名さん。行くよ。」
もう一人の100m走に出る快くんと第二グラウンドに向かう。100m走はまず学年で走ってそのあと各学年の上位二名が午後にある決勝に進出する。
「頑張ろうな。」
「うん。」
快くんはそう言って男子が集合している方に行った。私も女子が並んでる方に行ったが知り合いが誰もいなくてさみしかった。
【100m走の入場です!】
アナウンスが入り第二グラウンドからグラウンドに出るための門が開く。まずは全員でトラックを一周してからスタートラインに立つ。
「せんぱーい頑張ってください!」
「○○君ふぁいとー!」
トラックの外に生徒がいるのでいろんな人が応援されている。見ると紗雪ちゃんの顔が見えた。ここは私たちのクラスか。
「「「せーのっ!快君、唯ちゃんファイトー!!」」」
おおお、クラスのみんなが応援してくれた。快くんは拳を高く上げて応えた。さらっとあれができるのかっこいいな。
トラックを一周して順番に着く。走る順番は一年女子、男子、二年女子、男子.....のような感じなので私は一番最初に走る。スタートラインに並んで呼吸を整えていると名前を呼ばれた。呼ばれた方を見ると紗雪ちゃんやきなこちゃん、美玖ちゃんに由乃ちゃんや芽衣ちゃんもいる。
「「がんばって!」」
一瞬笑い返してから頷いた。息を大きく吸ってゴールを見る。クラウチングスタートの姿勢になってスタートを告げる銃声のタイミングで足を蹴り出した。
(完璧だ。)
飛び出るタイミングは練習含めても一番きれいに決まった。あとはこのスピードを保つだけだ。ラスト20mくらいまでは私がリードしていたが最後の最後で横にいた子に抜かされてしまって二位でフィニッシュした。
「あー!」
ゴールした後悔しくて叫びながら止まると一位の子が寄ってきた。
「速いね。何部?」
「帰宅部だよ。」
「帰宅部?それであんなに速いの?」
「ありがと。でもあなたの方が速いよ。」
「まあバスケ部だしね。っと男子始まるからどかなきゃ。また午後に会お!」
あの子は色が違ったので私とは反対方向に帰って行った。
「パン!」
私が背中を向けていたところで男子の100m走が始まった。男子はみんな早くて驚いていると快君が抜け出してそのままぶっちぎりでゴールした。
快君はそのままの勢いで走ってきて私の前で止まった!
「お疲れ様。速かったね。」
「ありがとう。瀬名さんも予選突破おめでとう!」
そのままクラスのテントに戻ると歓声が起こった。
「二人とも決勝おめでとう!」
「快はやすぎねーか。」
「ぶっちぎりだったもんね。」
いろいろ褒められながら席に座って水筒を飲んでいると紗雪ちゃんがうちわであおいでくれた。
「ありがとー。」
「お疲れ様。速かったわよ。」
「紗雪ちゃん出てたら一位だったんじゃない?」
「そんなことないわ。」
「九条さん!唯ちゃん!次私たち二人三脚だから応援しててね!」
「うん!頑張って!」
「応援してるわ。」
きなこちゃんと美玖ちゃんは第二グラウンドの方に向かっていった。
「そういえば借り物競争はいつあるの?」
「この後の玉入れの次。でその次がクラスリレーね。」
「頑張ってねー。パワーあげる!」
紗雪ちゃんに抱きつくと紗雪ちゃんは一瞬ため息をついた後に「暑苦しい。」と言って私の腕を振りほどいた。
【二人三脚の入場です。】
アナウンスが入ると紐を持って入場が始まった。
「きなこちゃんだ!頑張れー!」
きなこちゃんを見つけ叫ぶ。気づいたきなこちゃんと美玖ちゃんが手を振ってくれた。
「きなこさんたちは最初なのね。」
「ほんとだ!」
きなこちゃんたちはトラックに入って足を結んでバトンを持っている。
「パン!」
銃声で一斉にスタートした。スタートはみんな慎重になっていたがどんどんスピードを上げている。きなこちゃんたちも負けじとスピードを上げて七組中二位でバトンを渡した。そのあといろんなクラスが転んだり、ひもが解けたりしながら最後のクラスがゴールした。私は途中でクラスを見失ったから何位でゴールしたかがわからない。アナウンス待ちかな。
「唯ちゃーん。」
遠くからまだひもが結ばれたままのきなこちゃんと美玖ちゃんが走ってきた。
「どうだった?」
「速かったよ。何位だった?」
「三位だったよ。」
「惜しかったけどすごかったよ。」
「きなこ早く紐解いて....」
「そうだった!唯ちゃん紐解いてくれない?ほどけなくなっちゃって。」
「うわ。ガッチガチじゃん。」
固く結ばれた紐を何とか解くときなこちゃんは玉入れに出るためにまた走って第二グラウンドへと向かっていった。
玉入れはあまり盛り上がらないかなと思っていたがクラスの子が3pカップと呼ばれる普通の籠のさらに上にあるグラスに二つも入れたことでうちのクラスと応援団は大盛り上がりだった。
「じゃあ行ってくるわ。」
「うん。頑張ってね。」
紗雪ちゃんは借り物競争に出るために歩いて第二グラウンドの方に向かっていった。
「借り物競争ってなにが出るんだろうね。」
「漫画とかだと好きな人とか気になる人とかあるけどそんなこともないだろうしね。」
「そんなベタな事あるわけないじゃん。」
「まあねー。」
そんなことを話している間に紗雪ちゃんの番になった。私はスマホを構えて動画を撮る。スタートして地面に落ちている紙を拾った紗雪ちゃんは紙を広げると一目散にこっちにめがけて走ってきた。それはもう美しいフォームで。
「唯!」
紗雪ちゃんはそう叫んだので手を振る。紗雪ちゃんはテントまで走ってくると私の手を掴んだ。
「紗雪ちゃん!?」
「走って!」
紗雪ちゃんはそれだけ言って走り出した。バランスと崩しそうになったのを何とかこらえて紗雪ちゃんに追いつく。
「手握られたままだと走りづらいんだけど!」
「仕方ないでしょ手をつないだままゴールしろって書いてあったんだもの。スピード上げるわよ。」
「え。」
紗雪ちゃんはさらにスピードをあげてそのまま一位でゴールした。
「お題の紙を確認していいですか?」
「ええ。」
紗雪ちゃんはゴールのところにいた体育祭実行委員に紙を渡した。
「はい!大丈夫です!一位おめでとうございます。」私たちは一位の旗の下に座った。そのあとどんどん競技者が戻ってきて終了の銃声が鳴った。
【ただいまの借り物競争一位は白組の1組です!】
アナウンスが入ると応援団は太鼓をたたいて盛り上げた。クラスの方も盛り上がっているのが見えた。順位発表が終わってからクラス対抗リレーのために紗雪ちゃんと別れて第二グラウンドまで向かった。
次回。体育祭本番 午後。
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