夏休み編(10)
「おはようございますー。」
「おはようございます。唯様。お食事をお作りしましょうか?」
「お願いします。」
「かしこまりました。出来次第お呼びいたします。」
楓さんに朝ご飯を頼んでから、今日はお昼前にここを出る予定なので荷物をまとめておく。荷物自体は必要最低限分しか持ってきていないが雪伺さんからもらった服が数着あるのでそれも何とかキャリーケースに詰め込んだ。荷物をすべてしまってしまったためすることが無くなってスマホを眺めていたら紗雪ちゃんが起き上がった。
「あ、おはよ。」
「おはよう。」
今日は珍しく紗雪ちゃんの目覚めがはっきりしていた。
「ご飯できたら楓さんが呼びに来るって。」
「わかったわ。唯は今何してるの?」
「荷物をまとめてたとこ。」
「私もやらなきゃ。」
ベッドから起きた紗雪ちゃんはてきぱきと荷物をまとめていく。紗雪ちゃんを手伝っているとドアが開いて楓さんがやってきた。
「唯様、お食事の準備が整いました。あら、おはようございますお嬢様。」
「おはようございます。」
「お嬢様も朝ご飯食べられますか?」
「お願いしてもいいかしら。」
「かしこまりました。」
リビングに移動して朝ご飯を食べた後私たちは樹さんに呼ばれて樹さんの部屋に来た。
「おはよう二人とも。昨日はすまなかったね。」
「おはようございます。お父さんはいつ帰ったんですか?」
「政明さんは昨日の夜に帰ったよ。」
「そうなんですか。」
「それでなんの用事?」
「ああ、すまない。まずこれを。」
そう言って樹さんは帰りの新幹線のチケットを渡してくれた。
「ありがとうございます。」
「唯さんには本当に感謝してもしきれないよ。ありがとう。」
「いえいえ。こちらこそ楽しかったです。」
「そうか。ぜひまた遊びに来てくれ。紗雪も体調に気をつけてな。」
「はい!」
「ええ。」
新幹線のチケットだけ貰って部屋を出る。
「もう帰らなきゃなのかー。」
「もうって。四日もいたじゃない。」
「そうだけどさー。」
「それにクルーズ旅行まであと一週間でしょう。帰ったらまた荷物まとめなきゃでしょ。」
「確かにー。」
そのあと特にすることが無かったので散歩に行ってみたり、眠いのでシャワーを借りたりしていたら新幹線の時間が近づいてきた。
「お嬢様。唯様。出発のお時間です。」
部屋に楓さんが呼びに来てくれた。私たちは部屋の隅にまとめておいた荷物を持って部屋を出る。玄関まで行くと樹さんがお見送りをしてくれた。
「4日間お邪魔しました。」
「大したもてなしもできなくてすまないね。よければ引っ越す前にまた来てくれ。」
「はい!」
扉を開けて家から出ると車が止まっていた。
「お乗りください。私が運転しますので。」
楓さんの運転で駅まで届けてもらった。
「ではお嬢様。唯様。お体ご自愛下さいませ。」
「ありがとうございます。」
「引っ越す前にまた会いに行きますね!」
「楽しみにしてます。お荷物お持ちしますね。」
「大丈夫ですよ。」
「そうですか。ではお見送りだけ。」
楓さんも車から降りて改札まで一緒に歩いてきた。
「楓さん。四日間ありがとうございました!」
「ありがとう。楓さん。じゃあ。」
紗雪ちゃんは軽くお辞儀をしてから改札を通った。楓さんは見えなくなるまでお見送りしてくれていた。
新幹線が来てそれに乗り込む。荷物をまた預けてからふかふかの椅子に腰を下ろす。あまりの寝不足に私の体が耐えられず新幹線が再び発車する前に私は寝落ちてしまった。
「起きて唯。」
紗雪ちゃんに体を揺すられて目を覚ました。
「あーごめん寝てた?」
「椅子に座った瞬間寝てたわよ。」
「ごめんごめん。もう着くころ?」
「ええ。あと10分くらいね。」
「ありがと。」
椅子の上で軽く伸びをして頭を覚醒させる。しばらくすると新幹線が停まったので荷物を持って席を立つ。預けていた荷物を回収してから新幹線から降りた。
「なんか疲れたよー。」
「新幹線で寝るからでしょ。」
「昨日全然寝付けなくて。」
「そ。」
改札を通ると紗雪ちゃんは電車の改札の方に向かう。
「じゃあ、私はこっちだから。」
「じゃあね。また一週間後?」
「多分ね。」
紗雪ちゃんと別れた後一度荷物を家に置いてから家を出た。家に何も食べれる食材がなかったからだ。面倒だと思いつつ晩御飯はちゃんと作ることにする。野菜を食べていない気がしたから生春巻きの具材を買うことにした。
家に帰って夜ご飯を食べ終わった後は荷解きをした。もらった服をハンガーにかけたり四日分の服を洗濯機に入れて洗濯機を回す。いろいろ終わらせてソファーでくつろいでいると電話がかかってきた。スマホの画面を見るとお父さんからだった。
「なにー。」
「もう家?」
「うん。荷解き終わったとこ。」
「お疲れ様。今日は早く寝なよ。」
「うん。」
「そういえば唯は樹さんから聞いた?」
「何を?」
「もう部屋契約したらしいよ。」
「え?」
「今唯の家って三階でしょ?9階の部屋を借りたらしいよ。ただ住む前にいろいろやらなきゃいけないことがあるから住めるようになるのは夏休み明けらしいけどね。」
「きいてなーい。」
「じゃあ電話して正解だったね。」
「うん~。じゃあ住めるようになり次第そっちに移った方がいい感じ?」
「そうだね。樹さんたちが引っ越していきなり住んでみるのも怖いから。」
「おーけー。紗雪ちゃんには伝わってるかな。」
「わからないから一応伝えておいて。」
「りょーかーい。」
「あと唯この夏帰ってこれる?」
「うーん。厳しいかも。ラスト1週間でギリギリ時間あるかもくらい。」
「時間あったら帰っておいで。」
「はーい。」
「じゃあね。おやすみ。」
「おやすみー。」
そのあとシャワーを軽く浴びてから紗雪ちゃんにメッセージを送ってから寝た。
朝まだ空に太陽が昇りきっていないころに私の目が覚めた。空はまだ深い青で窓を開けると少し冷たい風が入ってくる。スマホで時間を見ようと手に取ると通知いくつか点いていた
『私も聞いてなかった。父に聞いてみる。』
『夏休みが終わる3日前に住めるようになるらしいわ。家具とかは備え付けのがあるのよね?』
『一人じゃ運べない荷物があったら連絡して。業者が来るらしいわ。』
『寝てるのかしら。起きたらまた連絡して』
私が寝た直後に返信していたようだ。
『ごめん寝てた。家具はこのマンションのがあるよ。ベッドだけどうにかしたいかも。あとは一人で運べると思う。』
紗雪ちゃんはまだ寝てるだろうからメッセージを打つだけ打っておいて送信はしないでおく。朝ご飯を雑に作って食べてからメッセージを送信しておいた。
次回:クルーズ旅行編
1万pvありがとうございます。誤字の指摘も大変助かりました、ありがとうございます
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます