旅行編(前)
多分(前、中、後編)で終わります。
紗雪ちゃんの実家に行ってから一週間がたった。今日からクルーズ旅行に行く。5泊6日で北海道を一周しながら時々止まって観光できるらしい。まずは学校に行ってそこからバスで港まで行き船に乗るらしい。紗雪ちゃんの実家にもっていったものよりも二回りくらい大きいキャリーケースを持って私は学校へと向かった。
学校に着くと学年主任の先生がいたので話しかけに行く。
「おはようございます。」
「おお。久しぶりだな。元気してたか?」
「はい。」
「先にバスに荷物を積むからもってきてくれ。」
バスの座席の下にある荷物置きにキャリーケースを乗せてもらった。
「まだ他の人は来てないですか?」
「いや、三浦は来てたぞ。バスの冷房が効くまで会議室で待っててもらってる。そろそろ大丈夫だから呼んできてもらえるか。」
「わかりました。」
スマホだけ持って会議室に向かう。校舎の中は人の気配はなく、外から運動部の練習声だけが響いている。暑い中よくやるなぁと思いながら会議室に入るときなこちゃんがいた。
「おひさー。」
「唯ちゃん!」
「もう冷房効いてきたってさ。」
「わかったー。」
椅子を三個並べて横になっていたきなこちゃんは起き上がって少し着崩れた服を直してエアコンのリモコンで電源を消してから会議室を出た。
「暑い~。」
冷房が効いていて快適だった会議室から出るとからっとした暑さが私たちを襲った。
「こんな暑いのに運動部はすごいよね。」
「ね~。」
校舎から出ると暑さに加えて太陽の光もじりじりと焼き付けてくる。帽子を持ってくればよかったと後悔しながらバスに戻ると何人か来ていた。バスに乗って待っていると紗雪ちゃんと美玖ちゃんがバスに乗り込んできた。全員揃ったところで学年主任の先生がバスのマイクで話し始めた。
「おはよう。」
「「おはようございます。」」
「今日は待ちに待った旅行ということで浮かれている者もいると思う。がこれは学校が用意したものなのである程度の規則にはしたがってほしい。はしゃぎすぎて迷惑をかけないこと、時間を守ること、あとは体調管理だ。とりあえずこの三つは必ず守ってくれ。船内で使用可能なカードは支給されるが観光地では各自のお金でやってもらう。前に渡したしおりに書いてあったと思うが一応確認のために伝えておく。では以上のことを守って楽しく行こう。」
先生の話が終わるとバスが出発した。バスの中では各々スマホを見る人や友達と話す人など自由に過ごした。
港について諸々の手続きを済ませて船に乗る時間になった。大きなホテルがそのまま船に乗ったかのような見た目で圧巻だった。スタッフにお出迎えされながら乗り込むと先生がカードを渡してきた。
「この船の中でだけ使えるカードだ。失くさないように。」
先生はそれだけ言って荷物を持って行ってしまった。取り残された私たち生徒がぽかんとしているとスタッフの人が声をかけてくれた。
「生徒様でお間違いないでしょうか。」
「はい。」
「もしかして先生からの説明がなかったのでしょうか。」
「はい.....」
「そうですか。では軽く説明いたしますので、ついてきてください。」
私たちは椅子と机があって天井にはシャンデリアがあるラウンジに通された。シャンデリアなんて初めて見た。私たちが席に座るとスタッフの人が説明を始めた。
「改めてようこそ。クルーズ旅行へ。私はこの船のチーフマネージャーの
「それは大丈夫です。」
二人部屋は先生から説明があった。
「左様ですか。でしたらお部屋にご案内してもよろしいでしょうか。」
「はい。」
スタッフについて行く。廊下一つ取っても豪華で、庶民の私には慣れない。きょろきょろしながらついて行くと部屋の前まで到着した。
「こちらがキーカードでございます。」
キーカードを受け取った。
「では私は失礼いたします。船の揺れはおそらく感じられないようになっておりますが発進時のみ揺れますのでお気を付けください。」
スタッフはお辞儀をして去って行った。とりあえずここからは自由行動なので各自で部屋に入ることにした。紗雪ちゃんがカードを使ってドアを開けたので私も続いて入る。
「海だー!」
部屋に入ると目に着いたのは海だった。壁一面がガラスになっていて海が見える。太陽の光が当たってキラキラ輝いている。しかし早く船内を見て回りたいので荷物を置いてカードケースにカードとキーカードを入れて部屋を出る。まだきなこちゃんたちは部屋から出てきていなかったので部屋の前で待っているとドアが開いて出てきた。
「おまたせー。」
そう言って出てきたきなこちゃんと美玖ちゃんはペアルックだった。
「お揃い?」
「そう。この前買いに行ったんだー。」
「いいね。似合ってる。」
「ありがと。この後どうする?」
「とりあえず外出てみる?」
「そうだね。」
私たちは道に迷いながらなんとか外に出た。デッキにはプールやテニスコートがあると船内案内板には書いてあった。しばらく細い道を歩いていくと開けた場所に出た。
「プールだ!」
美玖ちゃんが指さした方にプールが見えた。大きくて泳いだり浮かんだりもできそうだ。
「でも水着持ってないから入れないね。」
「借りれるんじゃない?」
「聞いてみる?紗雪ちゃんも入る?」
「暑いから浮かぶだけね。浮き輪あるかしら。」
私たちは近くにいるスタッフに話しかけてみた。
「プールって入れます?」
「もちろんでございます。」
「水着のレンタルってありますかね...」
「ございますよ。ご案内いたしましょうか?」
「お願いします。」
「かしこまりました。」
私たちは更衣室と書かれたところへ案内された。
「こちらの水着をお使いください。」
奥からハンガーラックを持ってきてくれた。私たちはその中から水着を選ぶ。私はすぐに選び終わって着替えて待っていた。
「これかわいい。これにしようかな。でもサイズ合わなそう。」
「きなこ、こっちは?」
「サイズは....ぴったり!これにする。」
美玖ちゃんときなこちゃんが水着を決めて着替える中紗雪ちゃんは水着を取っては戻し取っては戻しを繰り返していた。
「どした?」
「私に合うサイズの水着はあまり布が多くなくて。」
「あー。いつも肌見せないもんね。」
「今日は他の客もいないから日焼け止め塗れば大丈夫かしら。」
紗雪ちゃんは水着を一着取ってカーテンを閉めて着替え始めた。私が先に着替え終わったので待っているとカーテンの中の紗雪ちゃんから声をかけられた。
「唯。」
「なにー。」
「日焼け止め塗ってもらえない?」
「いいよ。」
ビキニ姿の紗雪ちゃんが出てきた。
「それにしたんだ。」
「ええ。変?」
「ううん。かわいいよ。」
「そ。」
更衣室の中のベンチに寝てもらって日焼け止めを塗る。紗雪ちゃんは肌が白いなぁ。なんて思いながら日焼け止めのクリームを塗っていく。しっかり水に触れても溶けにくいタイプのものである。
「力加減は大丈夫ですかお客様~。」
「ちょうどいいわよ。」
「はーい。」
ふざけながら首と背中にクリームを塗っていく。
「足は塗った?」
「後ろの方は塗れてないかもだから一応塗って。」
「ういー。」
紗雪ちゃんのきれいな肌が日光に焼かれないように丁寧に塗っていく。最後に足の裏を塗ろうと触ったら紗雪ちゃんが飛び跳ねた。
「そ、そこは自分でやるわ。」
「くすぐったいの?」
「ソンナコトナイケド。」
なぜかごまかそうと目を背ける紗雪ちゃんをみて私のSの部分に火が付いた。
「いや。最後までやってあげるよ。」
「いや、大丈夫だから。」
「ほら足出して。」
強引に足を掴んでクリームを塗る。
「あなっ...た後で.....貴方にもやるか....らっ。」
「どうぞー。」
暴れる紗雪ちゃんを抑えつつクリームを乗り終えた。
「はい。お疲れ様ー。プール行こ。」
「待って。やり返してない。」
「私焼いてみようかなー。なんて。」
私はこっそりドアの方に移動しようとしたら紗雪ちゃんに腕を掴まれた。
「せっかく肌綺麗なのだから焼かせはしないわ。こっちにいらっしゃい。」
笑っているけど目が笑っていない紗雪ちゃんはにっこりとそういうと手にクリームを取った。
「もうお嫁にいけない....」
更衣室を出た私はプールに浮かびながらそうつぶやく。あのあと私は全身にクリームを塗られてしまった。逃げ出そうとしたがくすぐったくて体が動かなかった。
「はいはい。早くプールに行くわよ。」
紗雪ちゃんは気にもせずにどんどん歩いていく。
「ひどい!私は遊びだって言うの?」
「変な言い方しないでよ⁉」
「遅いよー。」
「ごめんごめん。日焼け止め塗ってたら遅くなっちゃった。」
「まあそろったからビーチバレーしよ。トスだけで。アタックはなしで。」
プールに感覚を取って広がる。紗雪ちゃんは浮き輪を使いながらだ。しばらくトスを続けていたら疲れてしまった。
「疲れたー。」
「そろそろ上がってお昼食べに行く?」
「そうだね。」
私たちはシャワーを浴びてから着替えてご飯を食べに行くことにした。
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