夏休み編(8)
私たちは車に乗って家から出た。今日はこのあたりにある観光できるところに連れて行ってくれるらしい。
車を駐車場に止まったのでドアを開けて外に出る。燦燦と照り付ける太陽の光に一瞬目を閉じてしまうが目を開けるとあたり一面に向日葵が咲いていた。
「ひまわりだー。」
「懐かしいわね。」
紗雪ちゃんも麦わら帽子を被って車から降りてきた。
「はい。これ唯の。」
紗雪ちゃんから紗雪ちゃんとお揃いの麦わら帽子を渡された。
「ありがと。」
「唯ちゃん道なりに一周してきてね。私は暑いのだめだから車に残ってるわ。紗雪も無理しないように。」
「わかりました。」
「水を持っていくわ。」
紗雪ちゃんは一度車にペットボトルを取りに行って戻ってきた。
「じゃあ行きましょうか。」
私の背丈くらいある向日葵の中に作られた道を歩いていく。綺麗に同じ方向を向いていて面白い。写真を撮りつつ進んでいく。帽子を被っているがそれでもじりじりと焼かれる感じがする。
「紗雪ちゃん大丈夫?」
「ええ。」
紗雪ちゃんの体調を確認しながら進んでいくと階段があって昇ると上からひまわり畑を見下ろすことができた。よく見ると通ってきた向日葵が咲いていない道がハートを作り出している。
「紗雪ちゃん写真撮ろ!」
スマホを内カメラにして写真を撮る。改めてひまわり畑を見ると圧巻だ。どれくらい咲いているのだろうか。
「綺麗ね。」
「ねー。」
少しその場所で眺めていると遠くで私たちが乗ってきた車が見えた。手を振ってみると窓が開いて手を振り返してくれた。
「そろそろ戻ろっか。」
「そうね。」
今度は違う道を通って駐車場まで戻る。車を降りる前に水を飲んできたが喉が渇いた。
「紗雪ちゃん水ちょうだい。」
「はい。」
紗雪ちゃんから渡されたペットボトルを飲む。
「ありがと。」
ペットボトルを紗雪ちゃんに返してまた歩く。汗がにじんできたころひまわり畑を抜けて車へと急ぐ。
「おかえり。」
「ただいまですー。」
車に乗り込むと冷房が効いていて急激に体が冷やされていく。車に置いたままだった水を飲む。
「生き返るー。」
「ひまわり畑はどうだった?」
「綺麗でした!道がハートになっててかわいかったです。」
「楽しめたようでよかったわ。写真は撮った?」
「何枚か撮りましたよ。紗雪ちゃんとも。」
「あとででいいから送ってくれない?」
「いいですよ。」
「私にも。」
「じゃあ今送っちゃいますね。」
紗雪ちゃんと雪伺さんに写真を送る。
「ありがとう。じゃあ次の場所に出発するわよ。」
また雪伺さんが車を走らせた。私たちは後部座席に座って涼む。
しばらくするとまた車を止めた。
「ここはどこですか?」
「降りれば分かるわ。」
とりあえず車から降りてみた。時計台があるだけで特に観光スポットではなさそうだが。
「こっちよ。」
紗雪ちゃんが呼ぶ方に着いて行くと既視感があった。ここには来たことはないはずなのに。しばらく考えながら見ていると私の記憶と一致した。
「あ!あのアニメのか!」
「正解。」
紗雪ちゃんを私の家に泊めた時に見たアニメのエンディングに使われたミュージックビデオのイラストにこの時計台が使われていた。
「うわー。聖地巡礼とか初めてするんだけど!」
テンションが上がって写真を何枚も撮る。唐突に私は一つ思いついた。
「紗雪ちゃん時計塔に寄りかかってくれる?」
「いいけど。」
紗雪ちゃんが時計塔に寄りかかったところで私は写真を撮った。完璧だ。
「何を撮ったの?」
「覚えてないの?7話のエンディングだけ私の推しが時計塔に寄りかかってたでしょ?」
「よく覚えてるわね。」
再現してみたかった構図が撮れて満足だ。
「私が撮っててあげるからあなたが時計塔の方行きなさいよ。」
「いいの?」
「ええ。」
走って時計塔の方に行って寄りかかる。紗雪ちゃんがオーケーサインを出したので戻って確認する。
「どう?」
「完璧!」
「じゃあ送っておくわね。」
「ありがと!」
「二人とも撮り終わった?」
「はい!ありがとうございます!」
「どういたしまして。そろそろご飯食べに行きましょうか。何か食べたいものある?特にないならパスタにしちゃうけれど。」
「パスタでお願いします。」
「じゃあ出発しましょうか。」
そのあとパスタを食べてからまた別の場所に行くことになった。
「パスタどうだった?」
「美味しかったです。特にクリームソースが。」
「そうでしょ。私のお気に入りなの。唯ちゃんがまた来たらミートソースも食べてみて。」
「わかりました!」
「次はどこに行くの?」
「次はここよ。」
「もう着いたんですか?」
出発してから5分も経ってない。立体駐車場に車を停めて車から降りる。
「ショッピングモールですか?」
「そう!少しやってみたいことがあって。」
ショッピングモールに入るとまっすぐに雪伺さんは進んでいく。エレベーターに乗って少し歩いた後雪伺さんは洋服店に入った。
「こんにちは。」
雪伺さんがお店の人に声をかけると店員さんは慌ててバックヤードに行って奥から店長らしき人を連れてきた。
「ご無沙汰しております。」
「今日はこの二人の服を選びに来たのだけれど。」
「お手伝いしましょうか?」
「お願いします。」
「かしこまりました。」
「お二人はこちらに。」
店長さんに連れられて試着室と書かれた部屋に案内された。そこに雪伺さんが次々に服を持ってくる。私たちは着替えては見せて着替えては見せてを繰り返した。
「母さん。そろそろ疲れたのだけれど。」
「あ、ごめんなさい。楽しくって。どれか気に入ったのあったかしら。」
「さっきのデニムと緑の服の組み合わせは好きです。」
「もう一度来てみてくれる?」
また着替えて見せる。
「いいわ。似合ってる。紗雪も同じの着てみてくれる?」
紗雪ちゃんも着替えてカーテンを開ける。
「いいんじゃない?紗雪はどう?」
「いい感じかも。気に入った。」
「じゃあこれ二着ください。」
「かしこまりました。」
「この調子で選んでいきましょう。」
そのあとも雪伺さんの着せ替え人形になった。
「じゃあありがとうね。」
「いえ。ぜひまたお越しくださいませ。」
服を紙袋にいれてもらって私たちはお店から出て車に戻った。
「もう家に戻ってもいい?どこか寄りたいところある?」
「私はないです。」
「私も。」
「じゃあ。帰るわね。」
「あの。雪伺さん。服のお代は...」
「気にしなくていいわよ。あのお店はうちの系列だから。」
「え、でも。」
「それよりも思ったよりいっぱい買っちゃったからお家のクローゼットに入る?」
「それは入りますけど.....」
「ならよかった。ぜひ今度の旅行で着てね。それでいっぱい写真送ってね。」
「はい!ありがとうございます。」
この場は買ってもらうことにした。家に帰ってからは特にすることが無くなっちゃったので一応持ってきた勉強道具でなぜか勉強をした。
「ねえ紗雪ちゃん。」
「なに?」
「なんで私たちは勉強してるのかな。」
「さあ。でも学生の本分は勉強よ。」
「だけどさあ....」
そんなことを話しながら勉強しているとスマホの通知が鳴った。何だろうとみてみるとお父さんからだった。
『明日、そっちに行くから。』
「え。」
思わず声が出る。
「どうしたの?」
「明日私のお父さんがこっちに来るって。」
「なんで?」
「わかんない。聞いてみる。」
『なんで?』
『樹さんに呼ばれたから。』
『へー。お母さんもくる?』
『いや私だけだね。』
了解!とスタンプを送っておく。
「樹さんに呼ばれたって。」
「父さんが?じゃあ十中八九あの件ね。」
「だろうねー。」
次回。政明さん久々の登場。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます