幕間(3)

ゲームセンターから出ると館内放送が流れた。

『ただいま午後5時になりました。』


「もう5時かー。」

楽しい時間は時間の流れが早く感じるなぁ。

「そろそろ帰る?」

明日は学校があるので聞いてみる。

「そうだね。今日は解散にしよっか。」

きなこちゃんがそう言い、私たちはエレベータで受付のある2階に移動する。

「雨?」

紗雪ちゃんがそうつぶやいた。エレベーターについているガラスに水が打ち付けられている。

「ほんとだ。」

エレベーターから降りると雨の音が聞こえるようになった。

「うわぁ、結構強く降ってるじゃん。」

「このなか帰るのもきついね。」

「すこし雨宿りしていこう。」

受付前のラウンジに行き椅子に座って外の様子を見る。

「雨止みそうにないね。」

「うん。どうにかして帰らないと。」


私たちが悩んでいるときなこちゃんのお父さんがやってきた。

「ここにいたのか。今日は楽しめたかい?」

「はい。とっても楽しかったです!」

「そう言ってもらえてうれしいよ。しかし天気が崩れてしまったね。」

きなこちゃんのお父さんが外を見ながら言う。

「そうなんですよ。どう帰ろうか悩んでいるところです。」

「あ、そうだパパ。車で送ってくれない?」

「ふむ、今日は.....すまないきなここの後も予定があるんだ....。」

きなこちゃんのお父さんが申し訳なさそうに言う。

するとピカッと外が光りその数秒後に激しい雷の音が鳴り響いた。

「びっくりした。」

「雨も止みそうにないわね。」

そう紗雪ちゃんもため息をつく。するときなこちゃんのお父さんの横にいた人がきなこちゃんのお父さんに耳打ちをした。

「なるほど.....ああ、それにしよう。君たちは外泊しても平気か?この建物には宿泊施設の階層もあってそこに一晩泊まってもらっても構わないが。」

「私は大丈夫です。」

紗雪ちゃんと美玖ちゃんも大丈夫だと言った。

「では案内させよう。ではよろしく。」

「かしこまりました。では皆さんついてきてください。」

きなこちゃんのお父さんに指名された男性は先頭に立って歩いていく。私たちはそれについて行った。

「到着いたしました。本日はこちらの部屋にお泊りください。」

男性は1つのドアの前で止まってそう言った。

「ありがとうございます。」

「いえ、では夜ご飯のお時間になりましたらご連絡差し上げます。」

男性がいなくなったところで私たちはドアを開けた。部屋は4人用で4つベッドが置いてあった。私は靴を脱いで靴箱に置くとすぐさまベッドにダイビングした。ベッドはふかふかでとても寝心地がいい。しばらく堪能した後起き上がる。

「ひまだね。」

「そうだね。」

することが無さすぎる。今日1日遊んで疲れたから早めに寝るのは確定としてもまだ寝るのには早すぎる。とりあえずベッドでゴロゴロしながら日課のスマホゲームでもする。各々自分の時間を過ごしていると部屋に置かれた電話が鳴った。

『はい。』

『ご食事はいつごろになさいますか?』

「みんな―ご飯はいつごろがいいー?」

「いつでも。」

「お腹減ったー。」

「私もいつでも構わないわ。」

『今すぐにでも大丈夫ですか?』

『かしこまりました。係りの者をそちらに行かせますね。』

1分もかからずにドアをノックする音が聞こえた。部屋を出るとスタッフの証明書を首にかけている女性がいてその人に着いて行く。

「お腹へったー。」

「きなこちゃんあと少しだから。」

エレベータで3階分移動すると食堂に着いた。何人か席に着いている人が見える。

「本日はビュッフェ形式でのお食事となります。スタッフも食事をしますがどうかご容赦ください。」

案内してくれた女性は頭を下げる。

「案内ありがとうございます。」

感謝を伝えるとお辞儀をしてスタッフルームへと帰って行った。

私たちは料理を取って席に着く。

「なんか最近こんな光景見た気がする。」

「臨海学校かな?」

「あれももう3週間前だよー。」

「最近は家で泊まる方が少ない気さえするわ。」

「え?九条さん臨海学校以外でどこかに泊まりに行ったんですか?」

紗雪ちゃん失言だ....って顔をしている。

「あーこの前紗雪ちゃんうちに泊まりに来たんだよ。」

「そうなんだー。」

「学校でも九条さんは唯ちゃんとよく話してるしね。」

「そ、それよりもテストの出来はどうだったかしら。」

あ、話そらしたな。

「私は今回自信あるよ。」

「私はきなこには負けないかな。」

「そんなこと言って美玖は私に勝ったことあった?」

「それは中学までの話。高校では違うんだから。」

紗雪ちゃんの話題そらしが効いてテストの話になった。私たちは食事を食べながらおしゃべりに勤しんだ。


ご飯を食べ終わり部屋に帰ってきた。歯磨きとかは済んでいるのでもう寝てもいい。ちなみにパジャマは部屋に置いてあったものを使わせてもらった。

「どうしよっか。」

横でテレビのリモコンをいじっている美玖ちゃんに聞く。

「んーどうしよーか、あ、これ映画見れるじゃん。」

「ほんと⁉見よ!」

「何見る?ホラー?ホラー見ようよ!」

なぜか美玖ちゃんはホラーを押してくる。

結局去年流行った映画を見ることになった。

「私これ初めて見る。」

「これは名作だよ。何回見ても感動できる。」

「去年美玖と4回くらい見に行ったんだよ。」

「5回だよ。」

部屋の電気を消してベッドに入ってみる。その瞬間からの記憶は私にはない。


映画を見ようとしたはずなのに寝てしまったようだ。カーテンの隙間から除く太陽の光をみて私は悟った。みんなはまだ寝ているようなので起こさないようにしてベッドから降りる。昨日の服に着替えておく。今日は朝ご飯をここで食べさせてもらってから車で家まで送ってくれるらしい。今日はテスト返しで学校だからね。30分くらい後にみんな起き始めて食堂に向かった。旅館の朝ご飯かと思うくらい豪華な朝食だった。食べ終わるとすぐに荷物をまとめてこの建物を出る。きなこちゃんのお父さんが見送ってくれた。外に駐車してある車に乗って出発した。最初に紗雪ちゃんで次に私が降りた。

「じゃあまたあとで。」

「うん。」

「じゃ。」

家に入って制服に着替えたがまだいつもの出発時間まで30分あったのですこし家事をしてから学校に向かった。


次回 テスト返しと夏休み編スタート!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る