定期テスト編(5)
朝起きると身動きが取れない。後ろからがっちりホールドされている感覚がある。なんでだろうかと体を動かそうとすると私のお腹あたりに手があった。少し脳が起きてきて思考を始める。多分私は紗雪ちゃんに背を向けて寝ていて紗雪ちゃんに後ろから抱き着かれている構図だろう。寝返りを打ちたかったので何とか体をひねって半回転する。紗雪ちゃんの顔が見えたがこれだけ動いてもまだ紗雪ちゃんは起きる気配がない。時計を見るとまだ寝てもよさそうな時間だったので私は再び瞼を閉じた。
それからどれくらい経ったのだろうか、ベッドが揺れたことでまた私は起きた。目を開けると紗雪ちゃんは体を起こしている。紗雪ちゃんはまだ覚醒してないみたいだ。
「おはよ。」
「....おはよう。」
ベッドから出る。もう夏だから暑い。とぼとぼと洗面台まで歩いて顔を洗う。シャキッとしたら髪をセットするのが面倒だったのでカチューシャをつけて髪を上げる。
視界がクリアになったところで朝ご飯を食べる。昨日作った海苔巻きを冷蔵庫から出してお味噌汁を作る。ちょうど出来上がって紗雪ちゃんを呼びに行こうとエプロンを脱いで部屋に向かう。
部屋に行くと紗雪ちゃんは二度寝をしていた。
「おきてーご飯できたよー。」
そう声をかけるが起きない。肩を持って揺らしていたら紗雪ちゃんが私の方に腕を伸ばしてきた。その手に捕まった私はベッドの方に引っ張られる。体勢を崩してベッドに倒れそうになった私はとっさにベッドに手をついて何とか紗雪ちゃんを潰すことを回避した。
「さゆきちゃーん。」
最終手段だ。私は紗雪ちゃんの耳元にスマホを持っていきアラームを大音量で鳴らした。すると紗雪ちゃんが飛び起きた。
「おはよもう起きて。」
今度こそ完全に起きたようでベッドからでて洗面台に歩いて行った。
リビングのテーブルで少し待っていると紗雪ちゃんが来たので朝ご飯を食べる。紗雪ちゃんは起きたばかりのせいか食べるのがものすごく遅かった。
先に食べ終わった私は寝間着から着替えて勉強を始めた。紗雪ちゃんも少し後に勉強を始めた。明日からテストなのでお互いに真剣に勉強する。部屋にはカリカリとシャーペンの音だけが響いていた。
時計を見ると12時を超えていた。
「もう12時だって。」
「今日は帰るわね。」
「そうなの?お昼食べてく?」
「大丈夫、少し用事があるから。」
「そっかー、また明日ね。」
「ええ。」
今日は勉強したいから駅までは送らないので玄関で紗雪ちゃんを見送ってご飯を軽く食べてからまた勉強を再開する。テストは3日に別れているのでまずは初日の国語と英語を重点的にやった。高校の初めてのテストなのでやりすぎなくらい勉強してるけどこれで点数とれなかったら嫌だな。
夜ご飯まで勉強してそこからはゆっくりした。お風呂に入ってそのあとはアイマスクで目を休めたりしていたら眠くなったので今日は早めに寝ることにした。
--テスト一日目--
目覚ましのアラームよりも30分くらい早く目が覚めたので復習をすることにした。ベッドの上で漢文の文法表や英単語帳を開いて読む。しばらくするとアラームが鳴ったのでそのタイミングでベッドから出て朝ご飯を作る。いつもより時間があったので栄養バランスに気を付けて作った。
朝ご飯を食べてから制服に着替えて家を出る。
学校に着くといつもよりも人が多かった。それぞれ席で勉強する人や友達と問題を出し合っている人がいた。私も席に着く。
チャイムのタイミングで先生が来た。
「今日はテスト本番ですね。頑張ってください。では15分後に始めますので10分前には席に着いていてください。」
カバンをロッカーにしまって机にはシャーペンと消しゴムだけになった。最後のあがきで漢文の文法を確認して席に着く。頭の中でそれを反芻する。先生が問題用紙と回答用紙を配っていく。そして時計が9:00になったとき。
「はじめ!」
と先生が言った。
クラス中から紙をめくる音がした。私も紙をめくって文章を読む。現代文は得意分野だからすぐに終わらせて古文に行く。古文も授業で習った通りだった。多く時間を残して漢文に突入する。どんな問題が来るか身構えていたが杞憂に終わった。漢文は問題は違うが文章は紗雪ちゃんから見せてもらったあのことわざの文だった。なんかずるい気がするが紗雪ちゃんに心の中で感謝しながら解いていく。テスト時間の半分も使わずに終わってしまった。そのあとは焦らずにもう一度現代文から見直しした。
「ペンを置いてください。」
その声で一斉にみんなペンを置く。先生が回答用紙を回収して
「次も15分後です。一度休憩してください。」
と言う。私は一目散に紗雪ちゃんのとこに行く。
「あの問題だったね。」
「ええ、偶然だけど。」
「せっかく勉強したのにー。」
軽口をたたきながら英語の復習をする。
また先生が来て英語のテストが始まった。
英語は特に引っかかることもなく終わった。
テストが終わると英語を教えた芽衣ちゃんから話かけられた。
「英語解けたよ!唯ちゃんのおかげ!」
「ほんと⁉よかった!」
「唯ちゃんが教えてくれた通りに要点を掴んでから問題を見るとやりやすかったよ!」
最後にありがと!と言って芽衣ちゃんは自分の席に戻っていった。
人に教えたことはなかったから不安だったけどうまくいってよかった。
今日はこれで終わりなので家に帰って二日目の勉強をした。
--二日目--
今日は副教科のテストだった。副教科のテストは全問選択式なので多分全部あってると思う。
--三日目--
数学と世界史と理科基礎だった。数学が少し難しかったくらいで他は特に言うことはなかった。
テストの結果は金曜日に発表なので木曜日の明日はお休みだ。久々の勉強しなくていい休日を楽しむぞ。
テストから解放された私は駅前に来ていた。きなこちゃんから昨日遊びに行こうと誘われたので待っているところだ。今日来るのは紗雪ちゃんと美玖ちゃんの臨海学校メンバーだ。
きなこちゃんと美玖ちゃんが一緒に来た。自転車を駅の駐輪場に止めてから駆け足で寄ってきた。
「おまたせー、九条さんは?」
「もうそろそろ来ると思う。」
紗雪ちゃんは電車で来るので時刻表を見る感じ多分今来た電車に乗ってるはずだ。
「あ、ほんとに来た!」
「待たせたわね。」
「今集まったとこだよー。」
「あと5分後の電車に乗るよー」
ときなこちゃんが言いながら駅の中に入っていく。
電車が来たので乗る。平日なので電車はすいていた。なので席に座ることができた。
「そろそろ目的地教えてよー」
と聞くときなこちゃんが
「よくぞ聞いてくれました!今日向かうところはここです!」
とパンフレットを出した。それは温泉施設でその中に遊べる施設が併設されているらしい。
「ここのチケットをパパがもらってきてくれたので皆を招待します!」
「いいの?ありがと!!」
電車の中でパンフレットを読む。今日だけじゃ遊び切れないほどたくさんの施設がある。
電車を降りてバスで移動した後目的地に着いた。建物を見た感想はとんでもなくでかい旅館。だ。とにかくでかいのに見た目が旅館風なのがなんだかおもしろい。きなこちゃんはどんどん進んでいくのできなこちゃんに着いて行った。
建物に入ると着物を着た人にお出迎えされた。
「いらっしゃいませきなこさまとご友人の皆様。本日はお越しいただきありがとうございます。」
私たちが固まっているとスーツ姿の男性がやってきた。
「あっパパ!」
え、ぱぱ?
「こんにちは。私はきなこの父だ。今日は開店前のテストもかねているが楽しんでくれたまえ。では失礼するよ。」
そう去って行った。
「じゃあねパパ。じゃあ遊びましょう!」
私たちの方を見てきなこちゃんは言う。
聞きたいことが山ほどあるんだけど....まあ今日は楽しまなきゃ損だよね!
私たちはこの建物の地図をもらってどこから行こうか話し合った。
次回 幕間。
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