定期テスト編(1)

旅行気分が抜けずにまだ旅行気分で月曜日の朝を迎えた私たちは朝の会中の先生の言葉で絶望へと堕とされることになる。

「皆さん臨海学校気分ではだめですよ。ちょうど2週間後には定期テストですからね。」

クラスからは「えー」という声やため息が聞こえてくる。

「赤点にはならないようにしてくださいよ。私たち教員も夏休み中に学校に来たくはありませんから。」

この学校では夏休み前と冬休み前とあと進級前にテストがある。学年の上位10人には表彰があって上位25位が掲示されるらしいい。全体で200人くらいいるので大体上位10%くらいに入る必要がある。私はtop10は無理でも25位以内には入れたらなと思っている。勉強はまあまあできる方だと思う。2週間しかないが100点は無理でも8割くらいには持っていけるはずだ。そんなことを考えていると先生が続けて、

「気分転換として席替えをしましょう?今日のLHRの時間にすることがないので。」

拍手と歓声が上がる。

「皆さんお静かに。他クラスに迷惑をかけないようにしてください。」

そう言って先生は朝の会を終わらせた。すると直ぐにきなこちゃんが私の席にやってきた。

「唯ちゃんーテスト嫌だよー。」

きなこちゃんはこの世の終わりのような顔をしていた。

「定期テストは普段から復習しとけば大丈夫でしょ。」

「うわー唯ちゃんが優等生みたいなこと言ってる。助けて美玖ちゃんー。」

そうきなこちゃんは美玖ちゃんの席へ走っていった。きなこちゃんは勉強が苦手なんだろうな。私はそう思いながら席を立って紗雪ちゃんの席へ行く。

「沙雪ちゃん私とテストの点で勝負しようよ。」

「テストの点で勝負なんてするものではないわ。」

断られちゃった。しかし沙雪ちゃんが乗ってこないのは想定内だ。

「あれ、負けるのが怖いの?もし負けたらなんでも言うこと聞いてあげるけど?」

「はぁ....仕方ないわね乗ってあげるわよ。」

そう言って笑って返事をする紗雪ちゃん。あの...目が笑ってませんよ。

何とか約束を取り付けて席に着くと友達から超えをかけられた。

「唯ちゃんって九条さんと仲良かったっけ?」

「そういえば臨海学校の班も一緒だったよね。何か弱みでも握られてるなら私たちが助けるよ。」

「だいじょうぶだよ!なんなら私がさ、九条さんに言い寄ってるから。」

弱み握られてるとか紗雪ちゃんにどんなイメージ持ってるんだ。

「ほんとに?ならいいけど。」

「あ、それとは別の話があるんだけどね、唯ちゃんって勉強得意でしょ?ちょっと教えて欲しいんだけど....」

「もちろん良いよ!何時がいい?」

「じゃあ今週の金曜日にファミレスで勉強会しよ!ドリンクバー代は私たちが出すから。」

「うむ、くるしゅうない。」

「ふふ、じゃあよろしく!じゃあね。」

と友達たちは去っていった。それにしても勉強会か、楽しそうだな。


授業が終わって帰る時間になった。沙雪ちゃんはしれっと1人で帰ろうとしてたから呼び止める。

「待ってよ沙雪ちゃん。一緒に帰ろ。」

沙雪ちゃんは一瞬怪訝な表情をした後、教室のドアのところで待っていてくれた。

「おまたせ。」

そう言って昇降口へと歩く。学校の正門を出た少し後に沙雪ちゃんは口を開いた。

「あなた学校でも名前呼びする気?」

「あ。」

気をつけていたつもりだがつい呼んでしまった。

「どうせだしもう学校でも名前呼びでよくない?沙雪ちゃんは嫌なの?」

「....もう好きにしなさい。」

なんやかんや押しには弱い沙雪ちゃんだった。

紗雪ちゃんと別れて家に帰ってきた私は早速テスト勉強をすることにした。テスト範囲表には各先生からやっておくべきテキストのページが記載されているので、それを中心的にやっていく。普段からの復習が功を奏して特に詰まることなく解いていく。


ちらりと時計を見るともういつもならご飯を作り始める時間をとっくに超えていた。急いで卵と肉を炒めてそぼろ丼を作った。急いで作った割には満足のいく味で早くも一人暮らしの成果が出ている気がした。食べ終えて食洗器にお皿を入れてお風呂が沸くまでの間また勉強をする。15分くらいで機械音声がお風呂が沸いたことを教えてくれた。

お風呂に入って体を休める。勉強中はずっと下を向いてしまうので肩がこる。温かいお湯が肩の凝りを取ってくれている気がした。

つい長風呂になってしまったがのぼせる前に出ることができた。お風呂から出た後はアイスを食べながらまた勉強していく。間違えないように丁寧に解いていく。わからなかったら教科書やノートを見つつ解いていく。アイスを食べたからか頭が働いている気がする。


「くぅーーー」

そんな声を出しながら伸びをする。結構集中できたのではないだろうか。時計を見るともう10時になりそうだった。私はおもむろにスマホを充電ケーブルから抜いて電話を掛ける。

「もしもし?」

「どうかしたの?」

紗雪ちゃんがすこし心配そうな声で出る。

「なんにもないよ。ただ紗雪ちゃんが何してるかなーって。」

「勉強してただけよ。貴方は?」

「私も勉強。疲れて肩がバキバキだよー。」

「変に伸ばしたりしないで軽いストレッチだけしなさい。あとは温かいお湯に浸かって早く寝なさい。あとは蒸しタオルを目に当てるのも眼精疲労には効くらしいわ。」

「ありがと、やってみる。やり方教えて。」

紗雪ちゃんの言うとおりに蒸しタオルを作っていく。意外とすぐにできた。

「ありがと。気持ちいいー。」

目の周りがあったまっていって心地いい。気を抜いたら寝てしまいそうだ。

「そのまま寝ないで。逆に冷えちゃうから。」

「なんでわかったの?」

「貴方が単純すぎるだけ。」

そのあとも蒸しタオルが温かくなくなるまで紗雪ちゃんとお話をした。

「そろそろもうぬるいかも。」

「じゃあもうやめなさい。」

「じゃあ私はそろそろ寝るね。」

「そう。おやすみなさい。」

「おやすみ。また学校でね。」

そう言って電話を切った。通話時間を見ると30分と出ている。そんなに長く通話してたんだ。

スマホを充電器につないで、蒸しタオルに使ったタオルを洗濯機に入れて洗濯機のタイマーをセットする。食洗器からお皿を出して拭いたりしている間にも欠伸がとまらない。本当は昨日の洗濯物を畳みたかったが睡魔に負けてベッドに倒れこむように寝た。


次回 勉強会と不穏な気配。


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