臨海学校編(7)

朝、カーテンから漏れ出る光に起こされると、眼前には紗雪ちゃんがいた。

ついこないだまでは喋りもしなかったのに今では一緒のベッドでも寝るほど仲良くなった。紗雪ちゃんはどう思ってるのか知らないけど。

相変わらず眠っている顔はいつもの冷たい顔じゃなくてかわいい顔をしてるけど。

そんなことを思って紗雪ちゃんの顔を見ていると紗雪ちゃんが伸びをしながら起きた。

「おはよ。」

「おはよう。唯。」

そう言って紗雪ちゃんは二度寝に突入した。ん?唯?

「まって、今名前で呼んだよね。ねぇ!」

そう呼びかけるが紗雪ちゃんは寝息をたたている。今のは後で聞き返すとして私は完全に起きてしまったのでベランダに出てみる。

ちょうど日が海からのぼってくるところで海に太陽の光が反射して綺麗だ。今日でこの景色ともお別れだと思うと少し名残惜しい。もう夏も近いとはいえ朝は冷えるのですぐに部屋に戻った。

紗雪ちゃんもまだ起きる気配がないので適当にスマホをみて時間をつぶした。


それから30分くらいした後紗雪ちゃんが目をこすりながら起きてきた。

「おはよ。」

「おはよう。朝早いわね。」

「一度紗雪ちゃんも起きたんだけどね。すぐ二度寝しちゃったけど。」

「記憶にないわ。」

「えーー!紗雪ちゃんが唯って名前呼びしたのに。それに呼び捨てだし。」

「記憶にないわ。貴方の夢じゃない?」

「そんなことないと思うけどなあ。」

「それに私が名前呼びしたら変?」

「!名前呼びしたいの?いいよ!」

「朝からうるさすぎよ。そんなこと一言も言ってないじゃない。」

「はーい。あと20分くらいで食堂行かなきゃだからね。支度しといて。」

「わかったわ。」

そう言って紗雪ちゃんは洗面台に行った。

紗雪ちゃんは夢だって言ったっけどそんなことないと思うけどなあ。私の気のせいか?

椅子に座りながら考えていると紗雪ちゃんに声をかけられた。

「貴方いつまでそうしているの?そろそろ時間じゃない。」

「ほんとだ!行こ!」

考えすぎていたみたいだ。まあ夢ってことでごまかされてあげるか。

食堂前できなこちゃんと美玖ちゃんと合流する。今日は先に席に着けと先生から指示が出てるのでテーブル席に座る。するとスーツを着た人が出てきた。

「この度は当ホテルにご宿泊いただき誠にありがとうございます。私たちからのささやかなお礼として今日は少し朝食を豪華にさせていただきました。心行くまでお楽しみください。」

そう言って裏へ戻っていった。

それから私たちは各々朝食を取りに行った。いろんな種類の料理があって目の前でお肉を焼いてくれるサービスもあった。私はというとまずケーキを取りに行きそのあとに焼き立てのパンを2個取った。今日はしっかりいっぱい野菜を取った。席に戻るとすでに紗雪ちゃんは座って待っていた。

紗雪ちゃんのを見ると甘いものがこれでもかと乗せられている。

「紗雪ちゃん、ちゃんと栄養バランス考えな?」

「私にはこれがあるから。」

そう言って野菜ジュースが入ったコップを持つ。

「そういうことじゃないんだけどなあ。」

するときなこちゃんと美玖ちゃんが戻ってきた。

「九条さんのすごいね。」

「ケーキにプリン、フレンチトーストまで....」

きなこちゃんと美玖ちゃんに言われるとさすがの紗雪ちゃんでもすこし恥ずかしそうにしている。

「いただきます。」

そう言って食べ始める。パンは表面がカリっとしていて中はもちもちでおいしい。いままで食べたパンの中で一番おいしい。一緒に持ってきたジャムをつけて食べるともはや言語化できないほどのおいしさになった。今まで米派だったけどそれが変わりそうなくらいだ。さっき汲んできたグレープジュースを飲む。少しの苦みがジャムの甘さを消して最高の組み合わせになっている。

パンを食べ終わってケーキを食べながら話す。

「この後どうする?午前中は自由時間だけど。」

「すこし出たところにお土産屋さんが有るらしいからそこに行こ。」

「私もお土産買いたい!」

ときなこちゃんが賛成した。

「紗雪ちゃんもそれでいい?」

「ええ。」

午前中の予定が決まったので、みんなが食べ終わるのを待つ。ちなみに紗雪ちゃんはすでにケーキをすべて平らげ今は最後のプリンを楽しんでいる。見ていると

「何。」

と冷たい視線とともに飛んできたのでさっと目を背ける。

食べ終わった私たちは財布を持ってホテルを出た。すこし歩いたところにお土産屋さんが大量に並んでいる通りがあった。

「これおいしそうだね。」

「うん。」

話ながらお土産を決めていく。私は適当にラングドシャを買った。

お土産を一通り選んだ後も全部のお土産屋を見て回った。

「そろそろ時間だねー。」

「ホテルに戻ろうか。」

午後はどこにも行かずに帰る予定なので少し名残惜しかったので

「また遊びに行こ。夏休みとか。」

と提案してみた。

「うん!」

「どこにいこっか。」

ホテルへの帰り道はそんな話をしながら戻った。

ホテルへ戻るとお弁当を渡されてそれを食べたら出発するとのことだった。

お弁当を食べてからバスに乗る。帰りも同じで横には紗雪ちゃんが座る。

「帰りは何か見る。」

そうタブレットを出しながら聞くと

「帰りは寝るわ。」

と紗雪ちゃんが言ってカバンからアイマスクを取り出した。

しばらくするとバスが出発した。行きと違いみんな疲れているのかバスの中での話し声はしなかった。窓を見るとホテルはもう見えなくなっていた。

それから1時間後にサービスエリアに到着したのでお手洗いを済ませてペットボトルのお茶を買う。それからまたバスに乗り込んだ。

そのあとは私も眠くなってしまったので、寝ることにした。バスの揺れが心地いい。そう思いながら夢へと旅立った。


ふと目が覚めて窓の外を見ると見慣れた景色だった。バスで寝たからか体が重い。左側に重さを感じる。そう思って左を見ると紗雪ちゃんが私にもたれかかっていた。

気持ちよさそうに寝ているがそろそろ学校に着くので起こしてあげる。今回はすっと起きた。

そのあと少し紗雪ちゃんと話していると学校についた。

バスから降りて先生の前に集合する。

「お疲れさまでした。明日は休みなのでゆっくりしてください。では解散です。」

みんなぞろぞろと帰っていく。迎えが来ている人もいれば駅に向かう人もいる。私はきなこちゃんと美玖ちゃんに別れを言うと紗雪ちゃんと並んで帰った。さすがに駅まで送る体力はなかったので私の家の前でお別れした。

今日は何もする気が起きなかったので、洗濯機に服を入れて、買ってあった冷凍のチャーハンをチンして食べた。そのあとシャワーを浴びてだらだらしているときなこちゃんから旅行の写真が大量に来た。

『ありがとうー』

と返信するとスタンプが返ってきた。それとあともう一枚写真が送られてきた。

それは私と紗雪ちゃんが寄り添って寝ている写真だった。

『なにこれー。』

『後ろ向いたら二人が仲よさそうに寝てたからつい。私のフォルダからは消したよー』

『ありがと。紗雪ちゃんには私から渡しとく』

『了解!じゃあおやすみー。』

『おやすみ』

きなこちゃんからの写真を保存して、紗雪ちゃんにそのまま送っていたら私も眠くなってしまったので、ホテルのより固いベッドにダイブしてそのまま寝た。


1000pv感謝

次回 定期テスト編



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