臨海学校編(6)

学年主任の先生が積み上げられた木に火をつけた。一気に燃え広がり夜にも関わらずあたりが明るくなる。少しすると先生が花火を持ってきたので火のついた棒を持ってきて花火をする。

「花火なんて何年ぶりだろ。小さい頃はやった覚えがあるけど。」

「住宅街とかマンションだとできないよねー。」

「そうだね。紗雪ちゃんは最後に花火をやったのいつ?」

「これが初めてよ。」

「初めて⁉なら勝負しようよ。この線香花火で。」

「線香花火?」

「やってみたらわかるよ。」

紗雪ちゃんに一個線香花火を手渡して、火をつけてあげる。

「できるだけ動かさないでね。」

そう言うと紗雪ちゃんは頷いて線香花火をじっと見つめている。ぱちぱちと音を立ててどんどん線香花火は激しくなっていきそして最後に火の玉が落ちてしまった。

「これが線香花火だよ。」

「意外と面白かったわ。」

「でしょ!どっちが長く続くか勝負だよ。」

せーので火をつけて腕を動かさないように気を付ける。

風で線香花火が動いて落ちてしまった。

「あー。もう一度!」

次は風もなく線香花火は長くはじけていた。先に紗雪ちゃんのが落ちたので私の勝ちだ。

そんなことを線香花火がなくなる勢いで続けていたらきなこちゃんと美玖ちゃんがやってきた。

「いまから吹き上げ花火やるらしいよ。」

「だから近くにいきましょ。」

吹き上げ花火の方に行くと人がどんどん集まってきた。何とか最前列に陣取ったので楽しみだ。

先生が火をつけていく。最初は穏やかに火の粉を噴き出していたが次第に金や銀の光を出して色とりどりの光を出し始めた。

「綺麗だね。」

「ええ。」

昔吹き上げ花火を見たのは覚えているがその時は1つだけだったのでいくつもの吹き上げ花火を同時に見るのは初めてだった。まさに圧巻だった。


しばらくすると吹き上げ花火は次第にその威力を弱めぴたりとやんでしまった。

すると先生が

「今日のプログラムは終了です。各自部屋に戻りましょう。明日は朝早いので早めに寝てくださいねー!」

と言いそれを聞いた生徒たちはぞろぞろと帰っていく。

「じゃあ先に戻ってるね。」

「うん。部屋のお風呂使っていいよ。」

「ありがとう。」

「じゃあ紗雪ちゃんもまたあとで。」

「ええ。」

皆がホテルに戻っていくのを見届けていたら三宅君を見つけたので声をかけに行く。

「三宅君。」

「瀬名さん。」

「用事は何か聞いてもいい?」

三宅君は一度目を瞑り言った。

「瀬名さんのことが好きです。俺と付き合ってください。」



あああああああ そういうことか!きなこちゃんと美玖ちゃんが謎に気を使っていたのは。

でも三宅君と私って接点あったっけ?

「嬉しいけど...私と三宅君ってそんなに話したことないよね。」

「うん。だからこれは一目ぼれだよ。瀬名さんの笑顔に惚れたんだ。」

「ありがとう。嬉しいけど....」

言葉が出ない。付き合うことはできないけど、真剣に告白してくれたんだから適当な返事はしたくない。

「今迷ってるなら返事は後ででも。」

そう三宅君は言ってくれたけど後に延ばすほどお互いに辛くなっていく。

私は言いたいことを頭でまとめて言った。

「ごめんなさい三宅君。付き合うことはできない。私は貴方のことを知らなさすぎるから。

告白してくれたのは嬉しいけど........ええと何を言えば。」

いきなり三宅君が座り込んだ。

「三宅君?」

「振られちゃったぁ。まあ確かにいきなり告白されたら困惑しちゃうよね。ごめんなさい。」

「いや、謝らなくても。」

そのまま少し座り込んだままの三宅君は立ち上がって、

「僕と友達になってほしい。僕の恋愛はここで終わったから次は友達としてやっていきたい。」

そう握手を求めるかのように手を差し出してきた。

「え?うん。よろしく...?」

その手を握る。

「これからよろしく瀬名さん。」

「うん。」

「じゃあ戻ろうか。」

そう言ってホテルの入り口まで一緒に戻る。

「じゃあおやすみ、瀬名さん。」 

「うん。おやすみ。」


私はいきなりの告白に驚いて、この時キャンプファイヤーの会場にもう一人残っていたことに気が付かなかった。


部屋に戻るとちょうどきなこちゃんたちはがお風呂から出たところだった。

「どうだった?」

と聞いてくるきなこちゃんと美玖ちゃん。

「三宅君と友達になったよ」

とだけ返しておく。

「どうしたのきなこちゃんと美玖ちゃん。変な顔して。紗雪ちゃんお風呂入った?」

「いえ、まだだけれど...」

「じゃあ一緒に入ろ!」

「ええ。」

そうして体を洗ってからお風呂に入る。

「はあー今日も疲れたー。」

「.....貴方なにかあったでしょう。」

「聞いちゃう?気になっちゃうよね!」

紗雪ちゃんに頭をはたかれた。

「いたい!」

「ごめんなさい。つい。......貴方が言いたくなければ言わなくていいわ。でも相談したいことがあるなら話くらいは聞いてあげる。」

「そっか.......三宅君に告白されただけ。それで私がふった。それだけ。」

「それは最悪ね。」

「そんなことない!」

いくら紗雪ちゃんでもばかにするのは許せないよ。

「違うわ。人を振るのは最悪な気分になるでしょう。私には分かるわ。」

そう言う紗雪ちゃんの顔はひどくつらそうな顔をしていた。

「うん。いやな気分だよ。さっきまであんなに楽しかったのに。」

「.........」

「紗雪ちゃん?」

「励まそうとしたのだけどうまくいかないものね。」

「何それ、おかしい。」

「笑わないでよ。私だって励まそうと頑張ったのに。」

そう頬を膨らませる紗雪ちゃん。でも紗雪ちゃんが私にいろんな表情を見せてくれるだけで私は救われている。

「ありがと。紗雪ちゃん。元気でたよ。」

「それならよかったわ。」

いつも通りの無表情な紗雪ちゃんに戻ったが頬が赤かったのはお風呂のせいだけではないだろう。


お風呂から上がってジュースを飲んでテレビを見ていた。

「ねえ紗雪ちゃん。」

「何。」

「最終日なのにこんなことしてていいの???」

「こんなことも何もすることなんてないわよ。」

「ヤダ!探検に行くよ!」

「あと消灯時間まで20分しかないわよ。」

「それでも行くよ。」

紗雪ちゃんの手を引っ張って連れていく。

部屋を出るとあたりは静まり返っていた。それでも進んでいくと先生がいた。

「どうしました?二人とも。あと少しで消灯時間ですよ。」

「探検です!」

「瀬名さん...消灯時間には戻ってくださいね。」

そうジト目で注意された。

「はーい。」

先生は腕時計を見ると言った。

「明日には帰るのでもう少し遊んでいきますか。」

そう言って私たちはホテルの外に連れていかれた。

「いいですか。これは私たちの秘密です。誰にも他言しないように。」

「はーい!」


そう言って先生の車で焼き鳥屋に来た。

「焼き鳥三本までならおごってあげます。それ以上は自腹でお願いしますね。」

「わーい」

「私は大丈夫です。」

「じゃあ塩とタレをお願いします!」

「はい。店長、塩とタレを二本づつ。」

「あいよ!」

しばらくすると塩とタレが二本づつやってきた。

遠慮せずに塩にかぶりつく

「おいしいーー!罪の味がする!」

「おいしいですね。」

「紗雪ちゃん、あーん」

焼き鳥を紗雪ちゃんの口元へもっていく。が口を開けてくれない。

「あーん!」

「わかったわよ。」

しぶしぶ食べてくれた。

その調子で、タレも半分食べさせた。

「ごちそうさまでした!」

そう言ってお店を後にして先生の車に乗る。

「ご馳走様です。先生。」

「いえいえ、これは口止め料ですよ。」

「なんか先生が悪い人みたいになってるー。」

「ふふふ、旅行には人の本性が出ますからね。またそれも旅行の醍醐味なのですが。」

消灯時間を大幅にオーバーした私たちはホテルに着いて歯磨きをした後すぐに寝た。


次回 臨海学校編最終回



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