臨海学校編(3)

罰ゲームをかけた大富豪対決が始まった。大富豪のルールについては言うまでもないだろう。配られた手札を使い切れば勝ちだ。ルールの確認がてらやった一戦目は美玖ちゃんが一位で私が負けた。

「唯ちゃんね、何を命令しよっかな。」

「優しいのにしてよー」

「ここはベタに、唯ちゃんは好きな人っている?」

「いきなり飛ばしすぎじゃない⁉でも今はいないかな。」

「まあ旅行と言ったら恋バナでしょ。」

「確かに。でもまだ気になる人さえ...気になる人はいるかな。」

「お、誰?」

「それは秘密ー。」

「え!教えてよ!クラスの人?」

「美玖ちゃんが次勝って私が負けたら教えてあげるよー。」

「じゃあ次の試合始めるよ!」

そうきなこちゃんがゲームの開始ボタンを押した。

よし今回の手札は悪くない。何なら勝てそうな手札だ。しかし強いカードを残しすぎてしまったのでその間にみんな上がって最終的にコンピュータとの一騎打ちになった。何とか勝って一位は紗雪ちゃんで最下位はコンピューターだった。

「この場合はどうする?」

「どうしよっか。まあ最下位はコンピューターだし罰ゲームはなしで!」

紗雪ちゃんがコクリと頷く。

「じゃあ次だね。でもそろそろお風呂行きたいから次がラストかな。」

私も一回くらいは勝ちたいので真剣に考えてカードを出していく。完全に私の読み通りに場が進み私が一位抜けした。

「唯ちゃん強いね。」

「これが私の実力だよ。」と私はドヤる。

そのままゲームは進んでいき、きなこちゃんが抜け、コンピューター君も抜けて紗雪ちゃん対美玖ちゃんの対決になった。

「ふふふ、私の勝ちね。」

そう不敵に笑う美玖ちゃん。でも美玖ちゃんはまだ4枚手札を持っている。紗雪美玖ちゃんはまずジョーカーを出して場を切ると、2を二枚出した。

「まだ2を持ってたの?」

そう驚くきなこちゃん。大富豪において2はジョーカーに次ぐ最強のカードなのでこの終盤戦まで持ち続けるのはタイミングを誤ればさっきの私のように負けてしまうためリスクもある行為だ。実際2を二枚とジョーカーを持っていた美玖ちゃんが紗雪さんも2の2枚出しには対抗できず、勝者は私、最下位は紗雪さんで最終戦を終えた。

「じゃあ。唯ちゃん罰ゲームをどうぞ!」

「うーん決まらないなあ。また後ででもいい?」

「じゃあ、お風呂行こっか!」

「私は後で行くわ。あまり肌を人に見せたくないから」

そう紗雪さんは言うので、三人でお風呂に行った。脱衣所で服を脱ぎ、タオルとその他必要なものを持って浴場に行くと、大きなお風呂と立って入るタイプの壺みたいな形のお風呂があった。体と頭を洗ってから大きいほうのお風呂に入る。美玖ちゃんは壺型のお風呂に入りに行った。

「あったかーい。」

「そうだねー、極楽だよー。」

「なんかおばあちゃんみたいなこと言うね唯ちゃんはー。」

「そういうきなこちゃんもだよー。」

大きなお風呂なので足を延ばして入れるのがとてもいい。今日泳いでできた疲労が取れていく感じがした。そのあとは壺型のお風呂にも入ったり、サウナに行ったりしたらのぼせそうになってしまったので、もう出ることにする。

浴場の前にあるゆったりできるスペースで座って熱を冷ましていると、紗雪さんがやってきた。

「まだ中に人はいる?」

「いや、私たちだけだったよ。多分みんな入り終えてる。」

「そう。」

紗雪ちゃんはお風呂に入りに行ったので、そのあと少し話しているときなこちゃんが眠たそうにしていた。そう言えばきなこちゃん3時間くらいしか寝てないって朝言ってたな。

「きなこちゃん眠かったら戻ってていいよ。美玖ちゃんも。」

「私も実は眠気が限界だったから部屋に戻るね。おやすみ。ほらきなこ、戻るよ。」

充電が切れかけてるきなこちゃんを連れながら美玖ちゃんは自分の部屋に戻っていった。

私はのんびりテレビを見ながら紗雪ちゃんの罰ゲームを考えて、近くの売店で買ったジュース飲んでいた。知らない土地のテレビって新鮮で面白いよね。

あと10分くらいで消灯時間だな、と思っていると紗雪ちゃんが出てきた。顔がかすかに赤くてかわいらしい。

「おかえり!」

「なんで待ってるのよ。先に戻っててくれて構わなかったのに。」

「んー?テレビ見てただけだよー。」

紗雪ちゃんに一方的に話しかけながら部屋に向かう。

「どうするもう寝る?」

一応消灯時間は決まっているが、寝る時間ではなく外に出てはいけない時間という意味だと先生が言っていたので寝なくても問題ない。

「私はどちらでもいいわ。」

「じゃあ寝る!疲れた!」

そう言って着替えてベッドに行く。ベッドに入ると高級なベッドって感じがした。体が沈みこんでいく感じがする。泳いで疲れたので気を抜いたら一瞬で寝落ちれそうだ。気を失う前に紗雪ちゃんに大富豪の命令を言って意識を手放した。なにか紗雪ちゃんが言ってた気がするが意識がほぼないので覚えていない。


次の日の朝、私たちは部屋で裸になっていた。

「嫌ならやめてもいいよ?」

「罰ゲームなのだから従うわ。」

紗雪ちゃんは苦い顔をしてそう言う。

私が昨日の夜言った罰ゲームは部屋のお風呂に一緒に入ることだ。

きなこちゃんたちが泊まる部屋にはシャワーしかないが私たちの泊まる部屋には露天風呂がある。一人で入るのは味気ないので紗雪ちゃんと入りたかったのだ。

「一人で入るのが嫌なら三浦さんとかを誘えばよかったでしょ。」

「私は紗雪ちゃんと入りたいの。」

紗雪ちゃんはため息を吐きながらベランダに行く。お風呂からは蒸気が立ち上っていたので一瞬前が見えなくなった。かけ湯をしてからお湯に入る。すると朝日が海の端からのぼってくるのがかすかに見えた。

「きもちーねー。」

「そうね。」

横を見ると紗雪ちゃんもご満悦のようだ。すると

「あまりじろじろ見ないでくれる?」

「ごめんなさい。」

ギロリと睨まれて怒られてしまった。シュンとなってお湯につかっていると紗雪ちゃんが

「ごめんなさい、そこまで怒ってるわけじゃないの。言い方が悪かったわね。」

「わかってるよ.....紗雪ちゃんがツンデレだってことはね!」

紗雪ちゃんに抱きついた。紗雪ちゃんの体の柔らかさを堪能していると引き離されてしまった。

「本当に怒るわよ。」

おお.....紗雪ちゃんの目がゴミを見る目になっている。

「はーい。」

そのあとは特に喋らずにお湯を楽しんだ。


お風呂を上がって火照った体を冷ましているときなこちゃんと美玖ちゃんがやってきた。

「おはよ、なんか顔赤くない?」

「おはよ、いまお風呂入ったところだから。」

「お風呂あるの?見てもいい?」

きなこちゃんを連れて行くと

「すごーい!入り来てもいい?」

「夜ならいいよ。九条さんもいい?」

紗雪ちゃんが頷いてくれたので、今日の夜きなこちゃんと美玖ちゃんが来ることになった。

そのあとは食堂に行き、着替えたりして今日の課外学習が始まった。


次回 臨海学校2日目

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