臨海学校編(1)
レビューをいただきました。感謝申し上げます。
金曜日の最後の授業はLHRなので友達と話しながら担任を待っているとドアが開いて担任の
「では、ロングホームルームを始めます。今日は課外授業についてお話します。」
歓声と拍手が起きる。
「皆さん、他のクラスは授業中ですから騒がないようにお願いしますね。まずは課外授業について説明しますね。」
そう言って先生は説明を始めた。内容は二泊三日の課外授業であること。海に行くか山に行くかは多数決で取ること。1班4,5人で泊まる部屋は2人一部屋であることだ。多数決の結果、私のクラスは海になったので、臨海学校に行くことになった。臨海学校ではカヌー体験をしたりや海で泳いだりできるらしい。
「では皆さん班決めをしてください。」
班決めをすることになった。私はよく話す
あと一人必要だなと周りを見ると九条さんは座って本を読んでいた。
「きなこちゃん、美玖ちゃん、九条さん呼んでもいい?」
「く、九条さん⁉」
「来てくれるの?」
「わかんない。声かけてくるね。」
私はそう言って九条さんの席まで歩いて行った。
「九条さん。もう班決まった?」
「見ればわかるでしょう。まだよ。」
「じゃあ、私の班に来ない?」
「私はいいわ。その二人のこと知らないし。」
「大丈夫。二人には許可取ったから。」
「強情ね。わかったわよ。」
九条さんの手を引っ張って二人のところへ連れていく。
「九条さん入ってくれるって。」
「本当⁉く、九条さんよろしくお願いします。三浦きなこです」
「私は加藤美玖です。よろしくね九条さん。」
「......よろしく。」
そのあとは先生に班のメンバーを書いた紙を提出して、臨海学校の楽しみなことをお話した。きなこちゃんは九条さんのファンなのでずっと緊張していたし、九条さんも絶対零度のお姫様のあだ名の通り一言も話さずに本を読んでいたけど。
それからいろいろあって日曜日になった。親と九条さんが来る日だ。朝から部屋の掃除をして、電気ポッドでお湯を沸かしたり、クッキーを焼いたりしていたら、インターフォンが鳴った。
「はーい」
カメラを見ると九条さんだった。
「私だけど。」
「ドア開けるねー」
エントランスのドアを開けて、家のドアの鍵も外しておく。少し待ったらドアが開いた。玄関まで小走りで行く。
「いらっしゃーい、九条さ...え?」
九条さんの後ろには、私の親がいた。
「お母さん、お父さんどうしてここに?」
「それはリビングで話しましょ、唯ちゃん。喉が渇いたわ。」
「え、うん。」
リビングに通して、親と九条さんにお茶とクッキーを出す。私と九条さんは並んで座った。
お母さんはクッキーを一つ食べてから話し出した。
「おいしいわね。初めての一人暮らしだから心配してたけど大丈夫そうね。片付けもできているし。ご飯もちゃんと食べれてる?」
「うん、しっかり三食食べてるよ。で、なんで九条さんが一緒にいるわけ?」
「ちょうど九条さんが喋っているところに私たちが来てね。唯の声がしたから声をかけてみたら唯ちゃんに用事があるって言うから一緒に来たの。」
「そうなんだ。」
「ところで九条さんは唯ちゃんのお友達?遊びに来たならお邪魔しちゃってごめんなさい。」
九条さんが姿勢を正して言う。
「お邪魔なんて、そんなことはないです。改めまして、瀬名さんの友達の九条紗雪と申します。先日雨で電車が止まってしまった時に一晩止めていただいたのでそのお礼に来ました。こちら私の家の近くのお菓子屋さんの焼き菓子です。どうぞ。」
友達かぁ..とニヤニヤしてると横にいる九条さんに足をつねられた。痛い。
「あらーご丁寧にどうもありがとう。私は唯の母の
「初めまして、唯の父の
「ちょっとお父さん⁉そんなこと聞かないでよ。」
「そうですね....瀬名さんは..」
「待って紗雪ちゃん。瀬名さんはここに3人いるわよ。」
「お母さん九条さんを困らせないでよ.......」
九条さんは一瞬苦虫を嚙み潰したような顔をした後話始めた。
「唯さんは明るくて友達がいっぱいいますよ。来月の臨海学校の班にも私を誘ってくださいました。」
九条さんを班に無理やり誘っちゃったけど嫌ではなさそうで良かった。
「唯が元気そうで良かった。ねえ政明さん。」
「そうだね。じゃあ僕らはそろそろお暇するよ。」
「もう帰っちゃうの?」
「もともと今日は沙織さんと出かけるついでに寄ったからね、また来るときはゆっくりしていこうかな。」
「わかった。また連絡してね。」
「じゃあね唯、体調に気を付けて。」
そう言って帰って行ってしまった。すると九条さんも
「じゃあ私も帰るわね、瀬名さん。お邪魔しました。」
「九条さんももう帰っちゃうの?苗字呼びに戻ってるし。」
「今日の目的は貴方のご両親にお礼を言うことだったから。苗字呼びは沙織さんに言われたからでしょう。それにそれを言えば貴方だって苗字呼びじゃない。」
「別に私は名前呼びにしていいならいいよ?紗雪さん。なんか紗雪さんって違和感あるな、紗雪ちゃん、紗雪...しっくりこない!」
「ほら、いつも通りでいいの。じゃあ、お邪魔しました。」
「待ってよ、紗雪ちゃん。ご飯食べ行こうよー。」
「.......駅前のカフェに行く予定だからついてきたければついてきなさい。5分だけ待つわ。」
九条さん...もとい紗雪ちゃんが来る予定だったので、髪はセットしてあるので、服だけ着替えて、帽子を被って出発した。
「紗雪ちゃん。ここって.....」
「ええ、猫カフェよ。」
入ると、たくさんの猫たちが迎えてくれた。黒い猫や真っ白な猫、模様が入った猫などが居て、見てるだけで癒された。でも私たちは先にお昼を食べちゃうことにした。私はサンドウィッチとカフェオレ、紗雪ちゃんはホットサンドとコーヒーを頼んだ。
「そのホットサンドおいしそう!一口頂戴!」
紗雪ちゃんの返事を待たずに一口奪う。
「貴方、行儀が悪いわよ。」
「ごめん、ごめん。私のも一口あげるからさ。」
そう言って紗雪ちゃんにサンドウィッチを突き出すが、紗雪さんは食べてくれなかった。
食べ終わった後は猫たちと戯れていた。人懐っこい猫が多くて、どんどん集まってくる。座ってると膝の上に乗ってきた猫がいたのでその子と写真を撮って猫を撫でていた。紗雪ちゃんはお店に入るときに見た白い猫を撫でていた。白い猫はとっても美人さんで紗雪ちゃんと並ぶと絵になる。そう思っていると店員さんがやってきた。
「あら、その子が懐くなんて珍しい。その子いつも人がいるときはキャットタワーの一番上で寝ているんですよ。」
「そうなんですね!あ、写真撮ってもらってもいいですか?」
「もちろんです。」
私はさっき膝に乗ってきた黒い猫ちゃんを呼んで紗雪ちゃんの横に座った。
「紗雪ちゃん。こっち向いて。」
紗雪ちゃんにカメラの方を向かせる。
「取りますねー。ハイチーズ!」
写真を確認すると、紗雪ちゃんは膝に白い猫を乗せて微笑んでいた。かわいいと美しいの共存だった。
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます。」
紗雪ちゃんもお礼を言う。
そのあと30分くらい楽しんでから、店を後にした。
「楽しかったねー。」
「そうね。シルクちゃんにまた会いたいわ。」
「シルクちゃんって言うんだあの猫ちゃん。」
そのまま駅に歩いていく。まだまだ紗雪ちゃんと遊びたかったがこれ以上は迷惑になりそうなので仕方なしに駅に向かう。
「じゃあまた学校で。」
「あ、待って紗雪ちゃん。連絡先教えて。」
「いいけれど。」
紗雪ちゃんに今日取った写真を送っておく。いくつかは猫と戯れている紗雪ちゃんを盗撮したものだが。
「ありがとう。あと学校では名前呼びはしないこといいわね。」
「なんでよー。」
「なんでもよ。じゃあ。」
「ばいばいー。」
紗雪ちゃんは駅に消えていったので私も自分の家に帰って、猫の毛がついた服を洗濯機に投げ入れた。寝る前に何度も今日取ったツーショットを眺めて、ついにはスマホのホーム画面に設定し、にやにやしながら眠りに落ちた。
次回 臨海学校一日目!
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