プロローグ(2)
謎の窮屈感に堪えられなくて起きると横には九条さんが寝ていた。なんで九条さんがいるのか一瞬びっくりしたけど昨日九条さんを家に泊めたことを思い出す。九条さんはまだ寝ているようで、あだ名で呼ばれている絶対零度のお姫様とはかけ離れた穏やかでかわいらしい顔をしていた。やっぱ九条さんは顔がいいな。九条さんを起こさないようにそっとベッドから出て顔を洗って、寝間着から着替えてクリーニング屋さんに制服を取りに行く。
「おはようございます~制服取りに来ましたー。」
「おはよう。瀬名ちゃん。昨日はお楽しみでしたね。」
「なに言ってるんですかー」
「だって昨日の人は彼女でしょ?」
この人はクリーニング屋さんのアルバイトをしてる大学生の
「そんなこと言ったら冗談でも私消されちゃいますよー。」
「どこかのお姫様なの⁉」
なんて冗談を交わしたりしてお話しながら森崎さんは制服を持ってきて渡してくれた。
「また濡れたりしたらもってきてねー」
「はい!ありがとうございます!」
「ばいばいー」
部屋に戻ると九条さんはまだ寝ていた。肩をゆすっても起きる気配はない。もしかして朝は弱いのだろうか。
九条さんは昨日の夕食を作ってくれたから朝は私が作ろうと思ってキッチンへ行く。朝からそんな凝ったものは作れないので、鮭を焼いて、そのあとお味噌汁を作る。あとはお浸しでも作るかと思ったときに九条さんが起きてきた。
「おはよー九条さっ、おなか見えてる!」
服がめくれて九条さんのお腹が見えてしまった。そのまま少しぼーっとしていた九条さんだがハッとして急いで服を正していた。すこし耳を赤くして九条さんが言う。
「忘れなさい。」
「えっ」
「忘れなさい。いいわね。」
「はい....」
忘れてと言われても色白でうっすら筋肉が見えてくびれもあるあんな芸術作品みたいなお腹を忘れられるわけがなかった。
「あ、朝ご飯で来てるから食べよ!」
「ありがとう、いただきます。」
「どうぞー」
「おいしかったわ。貴方料理もできるのね。」
「まあ一応一人暮らししてますから。あ、あそこに制服かかってますから。」
「いろいろありがとう。でもまだ雨降っているのね。」
「勢いもすごいですね。警報出てるんじゃないですか?」
そう思ってスマホを見ると連絡が入っていた。
「あー今日学校休みらしいですね。警報いっぱい出てますし。」
「それは困ったわね....いつ止むのかしら。」
「今日の午後には止むらしいですよ。」
「それなら今日帰れそうね。」
「もう一日泊まっていってもいいんですよ~」
「さすがに悪いわよ。」
九条さんが帰っちゃうのは残念だけど学校休みだ!何をしようかな~。
「あ、九条さんってドラマとか見ます?」
「ドラマは見ないわね。」
「じゃあ、映画は?」
「見ないわね。」
「そっかーアニメは見ないだろうし。」
「アニメなら少し見るわよ。」
「え???あの九条さんがアニメ?ほんとに?」
「だから貴方は私にどんなイメージを持っているのよ。」
話していたら電話がかかってきた。相手の名前はお母さんの名前だった。
「ごめん九条さんちょっと電話出てくる、何見るか決めといて。」
そう言ってリモコンを渡す。
部屋に戻ると九条さんは今流行しているバンドのアニメを選んでいた。
「誰からの電話なの?」
「親からだよ。」
「今度感謝を伝えないと。」
「いーよそんなことしなくて。」
「貴方がよくても私は気にするの。今度ご両親がいらっしゃるのはいつなの?」
「今度の日曜日に来るけど。」
「じゃあその時に菓子折りでも持っていくわね。」
「わかったよ。ありがとう。」
そのあとは九条さんが選んだアニメを1クール全部見た。
「感動したー。まさか最終話でああなるとは...」
「流石今期の覇権と言ったところかしら。」
「じゃあ今から別の」
と言ったとき私のお腹が鳴った。
「さすがに何も食べずに1クールはつらいね。何か作るよ。」
「手伝うわ。」
昼はパパっとチャーハンを作って食べた。炒めるのは九条さんにやってもらったけど、私より炒めるのがうまくてパラパラなチャーハンが出来上がった。
「本当に料理がうまいね。」
「昔からやっているからね。」
そう九条さんはクールに言うが少し嬉しそうにしている。九条さんは癖で褒められたりすると足の指がぴょこぴょこ動く癖があるみたいで、今も少し動いていたのが靴下越しでも分かった。食べ終わって外を見ると雨はもうすでに上がっていた。
「雨が止んだようね。私は帰るわ。」
「えーもうちょっといてもいいのに。」
「これ以上は迷惑をかけすぎるわ。お邪魔しました。」
そう言って制服に着替えて、リュックを背負って帰ろうとする。
「待って、駅まで送るよ。」
「悪いわ。玄関まででいいわよ。」
「ついでにスーパーにも行きたいし。」
「そうだ。食費に関してなのだけど。」
「気にしないで。三食くらい。また今度作ってよ。」
「じゃあお言葉に甘えるわ。」
「そろそろ駅行かないと電車来るよ。」
また駅までの道で会話は続かなかったが昨日と比べて辛くはなかった。
駅に着いた。
「じゃあ、お世話になりました。」
「また来てね。じゃあまた学校で。」
九条さんはぺこりとお辞儀をして駅のホームへ歩いていった。
スーパーで今週の献立を考えながら買い物をして、家に帰った後はまたアニメを見た。夕食の準備がめんどくさくなったので九条さんが作り置きしてくれたハンバーグを温めなおして食べた。おいしかったが昨日の出来立てには敵わなかった。そのあとはお風呂に入って、することがなくなったので気まぐれで勉強をしてから、妙に広く感じるベッドで眠った。
朝起きると外は快晴でカーテンの隙間から日差しが差し込んでいた。気持ちよく目覚めた私は珍しくお弁当を作ることにした。九条さんのハンバーグと卵焼きやサラや小さくラップに包んだおにぎりなどを詰めていく。お昼ご飯が待ち遠しくなる。朝ご飯はトーストを焼いて食べるが
一人で食べる朝食になんだか味気無さを感じた。
学校に行くとまだ九条さんは来ていなかったので友達と話してると九条さんが登校してきた。
「あ、絶対零度のお姫様ね。今日も目つきが鋭いわ。」
「ねー」
友達が何やら話しているが九条さんの席に行く
「おはよ!九条さん!」
「おはよう。瀬名さん。どうしたの?」
「あいさつに来ただけー」
九条さんと話してるとさっきの友達たちが私の肩を引っ張ってきた。
「ちょっと唯!どうしたの」
「九条さんと何かあったの?」
「秘密だよー」
「そんなー私も九条様とお近づきになりたい。」
九条さんは冷淡な態度ではあるが嫌われてはいなくむしろ孤高な感じがして一部の人からは人気なのだ。でも九条さんが私の家に泊まったことはなぜか私と九条さんだけの秘密にしたかったのでごまかしてしまった。なぜそうしたのかは私にも不思議だった。」
わくわく?臨海学校編へ続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます