Sid.136 大森林での鍛錬は終了

 行為の最中に気付いたようで、黙って寝た振りをして様子を窺っていたようだ。

 例え化け物でも情けを掛けるのが俺だと、元々のメンバーは知ってるわけで。だから中身が人であれば、そこは躊躇しないのも当然だろうとか言ってるし。

 なんか恥ずかしいぞ。

 メイもまた恥ずかしがって頬を赤らめて、もじもじしてるし。


「こんな連中と一緒だが」

「いいよ。これが普通なんだよね」

「まあそうだな」


 全員起きたところで朝食を軽く済ませ、気合を入れ直し鍛錬をすることに。

 昨日同様、俺は見てるだけ。危険が及べば手助けするが、ソーニャやクリスタが優秀だからか、危険度は低くなっている。あれ以外なら大概の化け物は何とかなるだろう。

 現時点でミノタウルスまでなら、俺の手助け無しで倒せるし。

 ドラゴンは無理だな。巨人も無理があると思う。それらを倒せるようになれば、もはや向かうところ敵無しになるだろうけど。


 午前中ひたすら化け物狩りをして、昼に休憩を取り午後もへばるまで、化け物狩りに勤しむ。

 日が暮れる前に寝床の確保だ。

 その前にクリスタが魔石を手に近寄って来た。


「トールさん。回収した魔石ですが」


 恐怖を叩き込んだ化け物の魔石が二十個。化け物避けに使えるかどうか判断して欲しいようだ。

 見ると濁った赤色の魔石になっている。わざと甚振いたぶって鬼の形相で叩くと、こんな色味の魔石になる。魔石に刻まれた恐怖は化け物も感じ取るのだろう。


「試してみるか」

「魔石を持って接触するのですか?」

「そう」


 早速、俺とクリスタで化け物を探し、魔石を手に近付くと逃げて行くようだ。


「効果ありますね」

「みたいだな」

「設置してみます」


 メイが起きていれば化け物は近寄らないが、寝ている時は魔石の効果で安眠できるかもしれん。

 まあ、これもドラゴン相手に通じるか、と言えばな。たぶん意味が無いだろう。

 格下の化け物程度の恐怖心なんぞ、ドラゴンには意味を成さないと思う。

 それでも雑魚は近寄らないことで、寝床周辺にばら撒いておく。


「少しは落ち着いて眠れますね」


 一応見張りは置く。多少気を抜いても問題は無いだろうが、何があるか分からないってことで。

 こんな場所であれに遭遇したくらいだからな。俺の居場所近隣に勝手に来るし。実に傍迷惑な存在ではあるが、まだ来る可能性があるってことだよな。

 またぞろ化け物の大群を引き連れて来るのか、それとも単騎で来るのかすら分からんが。


 交代でひとりを残し全員が体を休めるが、やはり俺は眠れないようだ。


「トール、寝ないの?」

「眠くないからなあ」

「休んだ方がいいと思うけど」


 ソーニャが気遣ってくるが、眠く無いのは事実だし。暫し会話をしていると「抱く?」なんて言うから、それは帰ってからとしておいた。

 次いでルドミラの見張り番だが、緊張感が無いのか船漕いでるし。俺が起きてるから問題は無いが、見張りとしては役に立たないな。


「ルドミラ。見張りはどうした?」

「へ、あ、ご、ごめんなさい」

「さっきからモンスターが行ったり来たりしてるんだが」

「あ、じゃあ、排除」


 しなくていい、と言っておく。魔石の効果があるからか、近寄っても逃げ出してるからな。

 少しすると俺の肩に頭を乗せ、やはり寝息を立てるが、股間に手を宛がおうとするし。こいつも性欲が旺盛だからなあ。無意識に手が伸びるようだ。

 時間になるとルドミラには、しっかり休めと言って、代わりにクリスタが見張りに立つ。


「トールさん」

「なんだ?」

「メイさん具合良かったですか?」


 そっちの好奇心も旺盛だな。


「まあ、それなりだ」

「嵌まりそうですか?」

「だから」

「そうですか。良かったのですね」


 そのあと交代まで根掘り葉掘り聞かれた。体の構造も気になるようで「解剖してみたいです」なんて言ってるし。危険かもしれん。メイが解剖されかねない。


「冗談ですよ」

「そうは思えん」

「行為の際に観察したいですけど」


 その程度ならいずれ可能かもな。一緒に居れば。

 続いてテレーサが見張りをするが「トールぅ。メイとしたのに、あたしは放置?」なんて言ってる。


「あのなあ」

「疼いてるんだけど」

「帰るまで待て」

「漏れてるんだよ」


 知らん。相手してたらきりが無い。つくづく緊張感が無いな。

 クリッカが起きてきて「ぴぃぴぃ」鳴きながら、俺に擦り寄ってくるし。テレーサが発情するから当てられただろ。

 ミリヤムと交代になり「トールのケチ」なんて言って、体を休めるようだ。ケチじゃねえっての。


「みんな旺盛だから」

「ミリヤムは?」

「実はあたしも、だけど見張りだから」


 仕事は仕事。割り切ってるそうだ。代わりに家に帰ったら、とことん相手して欲しいと。


「寝られないくらい」

「まあ考えておく」

「寝かせないって言って」


 やれやれだ。


「寝かせないぞ」

「期待してる」


 次はセラフィマが見張り番だ。自ら志願したが寝てていい、と言っても「冒険者を熟すのでしたら必要だと思います」と押し切ったからな。

 じっと俺を見つめていたら見張りは務まらんのだが。


「どうした?」

「こんなに溢れるなんて、今までありませんでした」


 セラフィマもか。これがあれか、後遺症みたいな奴ってことか。エロい夢で性欲を徹底的に刺激されたのだろう。しかも幻影から解放されて尚も性欲は残る。


「遠慮は要らないですから」

「帰ったらな」

「元の世界では、こんなことは無かったのですが」

「あれのせいだな」


 それだけではないと言う。


「気持ちが強くなったので」

「何の?」

「あなたに対する気持ちです」


 そうか。深く愛されてしまったと。出会った当初はただの冒険者。徐々に変化を生じ守ると言われ火が付いた。今は俺なしでは居られないとか言ってるよ。

 そこまで強い気持ちに至るものなのか。とは言えリーリャユングフルのメンバーも、俺なしはあり得ないと言ってたし。重い。


 夜が明けると、この日も化け物狩りに勤しむ。

 午前中は化け物を狩り捲り、午後は魔素の扱い方や魔法の講義をする。その最中にも化け物が近寄ってくるが、ツーマンセルで対処するようにしておいた。

 こんなことを五日間繰り返すと、全員に成長がみられる。


「威力が上がりました」

「新しい魔法覚えたよ」

「トール様。ブリクストが凄いです」

「体が軽い」


 五日間で相手した化け物の総数は五千を超える。町で依頼を受けていても、それだけの数は熟せない。経験で言えばベテランを超越したぞ。

 全員返り血を浴びてぼろぼろの衣装に身を包み、すっかり薄汚れた状態ではあるが、確実にレベルアップをしたことだろう。初日と比較して軽々化け物を狩れる。


「そろそろ帰るか」


 ミリヤムが荷物の中から着替えを出し、各々に手渡してるな。

 その背中に背負ったバッグの中に、どれだけの荷物を詰め込んでいるのやら。しかも魔石も大量に入れてるわけで。相当な重量になってるだろうに。まあ、武器防具の類は使い捨てたから、その分軽くなっていると思うが。


「結局、ドラゴンは現れませんでしたね」

「期待してたんだけどな」

「でもまだトールから見ると」

「弱いんですよね」


 俺と比較したら駄目だろ。

 それと、ドラゴンを相手にするのは、まだ少し無理があると思う。もう少し鍛えないと瞬殺されるまでは行かずとも、下手すれば命を落としかねない。

 もう少し鍛錬が必要だろうな。

 だが全員強くなった。元々のメンバーは、アヴァンシエラのトレイエクラスに相当する。帰ったら昇格だ。


 こうして五日間、不測の事態はあったが、無事実力の底上げを図れた。

 一旦、馬車を預けていた宿に向かい、一泊したのちベルマンに帰る。来た時と同様何日も掛けての移動だけどな。空を飛べればもっと時間短縮できるのだが。人数が多過ぎる。


 帰りにブローエンに立ち寄ると、受付嬢のエリーとヘリアンも待っていたようで、顔を見るなり「抱いて」だそうだ。

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