Sid.25 ダンジョン探索で仮説

 守衛が重そうな扉を開け「問題無いと高を括らず用心しろよ」と言って、ダンジョンに入るよう促された。

 まあ油断禁物ってのはあるからな。注意はするさ。


 久しぶりに入ったレッティアだが、やはり内部は少し肌寒さを感じるな。

 このダンジョンはクリッカの卵を回収した場所だった。里帰りってか。とは言えクリッカはハーピーであってハーピーに非ずだ。あの醜い顔をした化け物とは違う。

 意思疎通が図れるだけでも別物。

 クリッカを見ると周囲を見回し、俺を見て何やら楽しそうだ。


「どうした?」

「ぴぃ」

「楽しいのか」

「ぴぃ」


 言語が発達すればコミュニケーションも容易になるのだが。

 まだ無理なのか、今もパパとしか言わないからなあ。


 それにしてもリュースモッサの群生地だけはある。明るさは充分だ。だが、足元は薄い氷が張っていて滑りやすい。クリッカは鉤爪を引っ掛け、カツカツと音を立てながら歩いてるな。

 俺はと言えば踵を氷にめり込ませて歩く。普通に歩こうとするとコケるからだ。

 少し進むと階段があり、滑らないよう義手に仕込まれたダガーを使い、壁に突き刺し手すり代わりにする。

 クリッカはどうするのかと思ったら、暴風が吹き荒れる状態になり、風に乗りさっさと下まで向かってしまった。煽られた俺の方が滑り落ちそうになったぞ。


 二階分下りると広間のような場所に出る。蟹の化け物が出たんだっけか。

 暫し待っていると、ザクザクと音を立て蟹が出てきたが、攻撃させる気はない。即座にフランマで焼き蟹に。

 蟹の側に行き甲羅を引っぺがし、魔石を回収しておく。食べたそうな表情をするクリッカが居るし。


「あとで食わせてやるから今は我慢しろ」

「ぴぃぃ」


 クリッカはハーピーの魔石も食うのだろうか。元々は同族だと思うのだが。

 狭い隙間を抜け蟹の魔石も確保して背嚢に詰め込んだ。


「次行くぞ」

「ぴぃ」


 先へと進みロープが必要な場所に出る。


「クリッカ。俺を」


 言うが早いか飛ぶと俺を掴み持ち上げ、そのまま下りて着地すると頭を差し出してくる。撫でろってことだ。撫でてやると目を細め嬉しそうだな。

 さて、そろそろハーピーの巣だ。

 高い吹き抜けの如き天井。見上げると多数のハーピーが居て、キイキイと音を発しながら警戒してるようで。攻撃するでもないし近寄る気配もないな。来ないなら無理に攻撃する必要もないか。


「降りてこないな」

「ぴぃ」

「放置して卵を持ち帰るか」


 前回来た時の発生源である隙間に入ると、無数の卵や魔石が転がっている。

 ほぼ完成している卵を六個、布で包み背嚢に入れておく。何かの衝撃で割れないとも限らないし。とは言え、この卵はかなりの頑丈さがある。鶏の卵のように簡単に割れる代物ではないな。

 詰め込んだら、以前来た時に気になっていた深部の穴に向かう。

 縁まで来るとクリッカに視線を向けてみた。


「ぴぃ」

「飛べそうか?」

「ぴ」


 一緒に覗き込んでいるが、少々躊躇している感じはある。底が見えないせいだ。

 クリッカでも無理なら気球を作って、それで降下した方がいいかもしれん。幸い、穴の直径は八十メートルはある。三人から四人乗りで気球のサイズは十七メートル程度。球皮の容積が二千二百立方メートル。高さは二十メートルくらいか。

 この場所に球皮を広げるだけのスペースもある。高さも申し分ない。

 ただ、問題は底に何が居るのか、だ。不測の事態も想定した方がいいわけで。ここからでは何も見えないし。


「仕方ない。諦めよう」

「ぴぃぴぃ」

「なんだ?」


 クリッカが飛び上がり俺の肩を掴んだ。

 まさか降下してくれるのか?


「あ、そうだ」


 ファックラを十発、穴に向かって放り込む。

 徐々に落下していく際に、穴の構造が凡そ見えてくるが、ある程度落ちると、ファックラじゃ小さ過ぎて光の点になってしまった。

 ざっと目視できた範囲では壁は凹凸はあれど垂直。穴の底は窺い知れない。凡そ三十メートルくらいで小さな光点になったからな。相当な深さがあるってことだ。


「やめよう。下ろしてくれ」

「ぴぃ」


 何やら知らんが、魔素の塊であるファックラが、消耗するように消えたからな。俺の魔法ですら三十メートル程度で消えてしまう。

 魔素を吸収する可能性もある、となればクリッカの場合、消滅しかねない。危険と判断しこの場を離れることに。俺もまた魔法が使えないと、脱出する術を失う。


 推測でしかないが、もしかしたら魔素の循環穴、なのかもしれないな。

 この穴が魔素を吸い込み洞窟内を再び満たす。とすれば、この穴の中では化け物は生存できない。

 つまり底には何も無いってことだ。


 自分なりに納得した体で地上に戻ることにした。

 他の洞窟にも同じように穴があるのかもしれないな。いずれ調査してみる価値はある。ダンジョンってものが何なのか、それも分かるかもしれないし。


 地上に戻ると守衛が「無事帰還したな」と言ってる。

 すでに日が傾いていて、扉を閉じようと思っていたところだったと。


「で、どこまで潜ったんだ?」

「たぶん最奥」

「まじか」

「巨大な穴があったぞ」


 奈落とでも言えばいいのか。

 覗き込むと恐怖を感じる程度の。


「そうか。まあ無事に戻れたのなら、それで良しだ」


 また来るのか聞かれ依頼次第と言っておいた。

 守衛に挨拶しギルドに戻ると受付嬢たちが笑顔で迎えてくれる。


「あ、戻って来たのですね」

「お疲れさまぁ」

「成果はあったの?」

「リッカルドを呼んでくれ」


 リスベツが呼びに行くとマルティナが「結婚してくれるの?」と聞いてくる。


「三人居てひとりだけじゃないよね?」


 纏めてってのはデフォルトなのだな。ひとりってのはあれか、言い出しっぺのエステル。俺としてはリスベツがいいと思うのだが。まあ他の子も悪くはないけどな。

 ただ、ここで三人娶ってとなると、大所帯もいいところだ。

 面倒見切れないぞ。


 話をしているとリッカルドが出てきて「預かりたいが維持が困難だ」と言ってる。

 そう言えば学院お抱えの魔法使いも居ない。俺なら楽勝で維持できるが邪魔なんだよなあ。

 まあ仕方ない。ここで駄目にするとまた取りに行く必要があるし、魔石だの卵を取っていたら鉱石採取すら進まなくなるし。


「分かった。明日まで俺が預かっておく」

「頼む。その分の報酬も出そう」

「いや、その程度はサービスするぞ」

「そうか? じゃあ受付嬢三人くれてやる」


 あのなあ。リッカルドの娘じゃないだろうに、何を勝手な、と思っても無駄なんだよな。三人揃って目を輝かせて「トール様と」とか「結婚できる」とか「子どもに期待できるよ」とかな。

 もう諦めた。この世界は力のある男に価値があるってことで。


 当然だが夜はお愉しみの時間だとなってるわけで。

 旺盛な三人に今夜も貪られるのか。クリッカまで参加したら目も当てられないな。

 そうなりそうな予感はある。


 ギルドの業務終了と同時に、三人とまたも宿にしけこむことに。

 リッカルドに「たっぷり仕込んでやれ。最強の子種をな」なんて言われて見送られた。


「トール様。本当に結婚を?」

「仕方ない」

「仕方ないじゃないよ。嬉しいんだよ」

「そうだよぉ。最上級の旦那様だからね」


 独り占めはできないと理解はしているのだろう。

 いや、何人もとなると養いきれない。現時点で養えるかどうか、すでに不安になってるからな。確か、この国のルールでは養える範囲で、となってたはず。

 一体、何人娶ることになるのやら。

 これも試練と言えば試練だよなあ。食い扶持を稼ぐ必要があるのだから。


 宿に着くと剥き出しの性欲が俺を襲う。

 そしてクリッカまで。

 もう開き直ったぞ。


「全員腰が抜けるまで相手してやる」

「やったぁ」

「たくさん頂戴ね」

「嬉しいですけど、明日に影響は?」


 リスベツの平らな体を堪能し、エステルとマルティナの柔さを愉しむ。

 俺、獣姦の趣味は無かったんだがなあ、クリッカがエロい。

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