Sid.22 鳥人間とはノーカンで

 久しぶりのリスベツ。平坦な胸ではあるが、なんか妙に抱き心地がいい。可愛らしい娘が悶える様を見ていると、こっちも萌えてくるからな。

 エステルとマルティナもまた、豊かなバストを揺すり抱き心地がいい。

 思わず愉しんでしまった、のだが。


「クリッカ、ちょっと待て」

「ねえ、なんでモンスターが発情してるの?」

「ハルピヤって交尾する習性なんてないのに」

「あの、止められないのですか」


 止まらないクリッカの猛攻。繋がろうとして俺に跨り、腰を振ってくるんだよ。ヤバい。収まったらアウトだろ。相手は化け物であって人じゃないから。

 受付嬢たちは手出しできず、かなり引き気味なのは言うまでもない。

 クリッカはぴゅいぃぴゅいぃと鳴き声を上げ、何としても交尾をしたいようだが。ここでやったら獣姦と言えばいいのか。変態の極み。とは言え、元の世界でも一部に獣姦愛好家は居たのだろう。倒錯した世界で愉しむって奴だ。

 異世界でならば、これも一興なんて。

 あり得ない。


「クリッカ、待てって」

「ぴゅぃ」

「トール。諦めたら?」


 諦めたらって、それは容認するってことか?

 そんなアホなことを言うのはエステルか。そうなるとマルティナも諦めたのか「まあ見た目だけは可愛いから、こうなるのも必然だったのかもね」と言い出す。

 そんな中で止めようと足掻くのはリスベツだけだ。


「トール様、やはりモンスターです。知性が無いんですよ」

「あるにはある。人の言葉も理解するし」

「ですが言うことを聞かないです」

「それは、君らに当てられて発情したとしか」


 ええい。どうしたらいいんだよ。

 キスしてこようとするし、腰は振ってくるし、紅潮した顔は妙にエロさを見せるし。


「あ」

「まあ、起立してればねえ」

「諦めて運動すればいいと思う」

「ああ、トールさまぁ」


 実に具合がいい。纏わり付く感覚は人の女性以上かもしれない。

 いいもの持ってるんだな、クリッカ。

 それとアニタ。俺は獣姦してしまったよ。きっと蔑まれるのだろう、婚姻は無しとか言われるかもしれん。化け物とする狂人とは結婚できません、なんて。

 俺の腰の上で体を震わせ、痙攣したかと思った倒れ込んで来た。

 まだ腰を動かしてないぞ。動かす気はなかったが。


「どうしたの?」

「分からん」

「動かないですね」

「繋がっただけで昇天?」


 死んではいないようだ。浅く呼吸する感じは伝わってくる。化け物も呼吸するんだな。

 顔を持ち上げてみると、まああれだ、恍惚とした表情で昇天してる。


「初だからか」

「そうなんですか?」

「未経験だったからトールので衝撃受けた」

「大きいもんね」


 裂けてないかとか出血多量じゃないのかとか、初物だからきっと股間が驚いたんだ、なんて適当なことを言う受付嬢たちだ。

 繋がりはしたものの行為に及んだ、とまでは言えないとして。


「今回はノーカン」

「トール。現実を見ようよ」

「繋がったし」

「トール様、事実は事実として受け止めましょう」


 くそ。

 カウントされるのか、これも。

 開き直れば可愛いクリッカだ。俺もすっかりクリッカが居るのが当たり前になってる。行動する際にクリッカを含めて考えてるし。貴重な戦力だ。

 何より俺を掴んで空を飛べるってのがな。今後も頼ると思えば発情したら、相手をしてやるのが筋だと思ったり思わなかったり。

 い、いやいや、相手は化け物だっての。本来ならあり得ないんだよ。


「落ち込んでる」

「仕方ないよ。モンスターですら虜にするんだって」

「魅力に溢れてますから」


 化け物にモテてもな。元の世界だったらクリッカでも喜んだと思う。人が相手してくれないなら化け物でもいい、なんて開き直れただろう。

 フィクションだと嬉々として獣人相手にしてるし。ケモミミなんて言って萌える奴も多数。同志なんて言って受け入れられたかもな。羨ましがられたりして。

 じゃない。この世界じゃ俺は女性にモテてる。化け物を相手にする程に困ってない。

 だが、クリッカはなあ。情に絆されてる面はあるな。慕ってくるし。

 やれやれだ。


 気持ちが落ち着くと自然と収まるもので。

 三人とも気色悪がって俺から逃げるかと思ったが、全くそんなことはなく、フルトグレンに滞在してる間は相手して欲しい、だそうだ。

 いいのか、それで。


 翌朝、三人はギルドに向かい、俺はダンジョンに向かうことに。

 クリッカは今日は極めてご機嫌なようで、まるで恋人が接するような態度だ。べったり寄り添って顔を擦り付けてくるし。

 それを見る三人だが「懐き方が半端じゃない」と呆れ気味だ。

 宿を出ると三人からやはりな。


「終わったらまたいいですか?」

「クリッカ込みだけど」

「もうそれはいいです。諦めました」

「一緒に愉しもうね」


 化け物ではあるが可愛らしく害がない、となれば問題無いと思うそうだ。

 この世界の女性は慣れれば受け入れるのだな。最初は恐れてたのに。


 宿の前で別れると俺とクリッカはラビリント・アロガンスへ向かう。

 町の中を北に進み目的のダンジョンに着くと、守衛が居て笑顔を見せ「久しぶりじゃないか。また潜るのか?」なんて言ってる。


「学院の連中の依頼があるからな」

「まあ、奴らはなあ。人使いが荒そうだし」


 いつものメンバーはどうした、と聞かれ別行動中だと言うと「二人で大丈夫なのか?」と聞かれた。


「スカラリウスも魔法使いの子も居ないだろ」

「問題無い、と思う。マップは持ってるし、以前行った場所に向かうだけだし」

「精細な奴か?」

「うちのメンバー二人で作った奴だからな」


 じゃあ大丈夫なのだろう、と言って通してくれる。

 中に入るとファックラを使い洞窟内を照らしておく。クリッカは鳥目なのだろうか。暗いと見えないとか。いや、洞窟に生息してるタイプだ。少々暗くても問題無いのだろう。

 暫く奥へ進むと吸血コウモリが居る場所だ。気配察知にしっかり引っ掛かってる。

 クリッカが急に口を開けたかと思ったら、何やら無音状態で叫んでいる感じだが。


 洞窟内を激しく飛び回り壁にぶつかったり、互いにぶつかり合って次々落下するコウモリが居る。

 もしかして超音波でも出してるのか?

 人の可聴帯域外でもコウモリなら聞こえるし。それで混乱させたわけか。

 クリッカって、どの程度のことができるのだろう。


 足元に転がるコウモリを潰すと、まじか、食ってるし。


「美味いのか?」

「ぴぃ」


 そうか、美味いんだ。見た目の悪さと化け物ってことで、人が食うものではないが、小さくとも魔石は入ってるし。小さ過ぎて食っても意味は無さそうだが。

 魔石を砕くと、きっとコウモリの体は腹の中で霧散するのだろう。結果、腹が膨れることはない。たぶんな。


 さらに先へ進むとリュースモッサが生えていて、洞窟内は仄かに明るくなっている。まあヒカリゴケって奴だが、この世界の苔は自発光するタイプらしい。

 ファックラは不要になり消して進むと、クロールウェイと呼ばれる天井の低い場所だ。ここは俺が苦労するんだよな。クリッカも同様だ。クリスタやミリヤムは、いろいろ小さいから、楽に移動できるのだが。


 背嚢を外し手に持ち腹這いになって進む。クリッカはやはりぴぃぴぃ鳴いて、悪戦苦闘してるようだ。

 苦労しながら抜けると広い場所に出る。


「ミノタウルスだっけか。出て来るぞ」


 クリッカの風魔法はミノタウルスですら、まともに立っていられない状態になる。暴風だからな。とは言えダメージを与えるものじゃない。熱風や寒風であれば違うのだが。

 まあ攻撃力は無くても空を飛べるってだけで充分だ。

 壁のクラックを見ると出て来た。こっちに来られても面倒だし、手をかざしブリクストを唱えると瞬時に発動し命中する。都合二発で倒れた。

 隣で何やら鳴いてるクリッカが居るな。耳が壊れたか? 超音波を聴き取り発するのであれば、ブリクストの轟音を狭い坑内で聞けば、耳も壊れるかもしれん。

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