Sid.19 高速飛行で移動が楽
話が纏まったところで今夜はグルヴスタッドで一泊するが、明日にもフルトグレンに向け出発することにした。
当然だが、数日程度放置されたということで、全員を抱く羽目に陥ったのは言うまでもない。ひとりなら存分に愉しませられるが、五人ともなると経験を積んだ俺と言えど、やはり精根尽きてしまうわけで。
「トールぅ。もっとぉ」
「無茶言うな」
「一回しかできてないよ」
「私ももう一回くらい」
やはりテレーサとクリスタが性豪過ぎて、ひたすら貪り尽くされそうになる。
ソーニャは一回でも満足してくれるのだがな。ミリヤムも口にはしないが、もう少しなんて表情を見せるし。
ガビィはと言えばベルマンに帰ったら、念入りに愛してくれればいいそうだ。
正妻の余裕って奴かもしれん。
「パパぁ」
「トール様! それとやる気なのですか」
「トールさん、やるのですね」
「ハルピヤに使うなら、あたしに頂戴よぉ」
俺に跨り繋がろうとするクリッカが居て、駄目だと言うも悲しげな表情を見せるし。
一度は触れて愉しませてしまったからか、どうやら快楽に目覚めたのかもしれん。
その辺の感覚まで人と一緒なのか。
結局、指で対処した。
「トールって、穴があればなんでもいいんだ」
「そんなわけ無いだろ」
「ですが満更じゃなさそうでした」
「モンスターも虜にするんだ」
感触はともかく繋がる気は無いぞ。
幾ら俺でも化け物を相手にする気は……ちょっと揺らいでる。
クリッカが人間らしくなってきたら、抗うのは無理かもしれん。
翌朝、朝食を済ませるとフルトグレンに向け、出発の準備を済ませる。
「トール」
「なんだ?」
「嫁が追加されないよね?」
無い。と思いたい。
ただ、リスベツはストーカー気質だからなあ。
「ひとり危ないのが居ますよね」
「リスベツだよな」
「押し掛けてきそう」
「他の町までは来れないだろ」
この世界で唯一と言えばいいのか、移動の制限があるお陰で町を出てしまえば、一般女性は追うこともままならないからな。
ガビィは貴族特権を生かして、俺と婚姻関係になってしまったが。
まあいい。迫られたら考えよう。
「じゃあ行ってくる」
門の前でクリッカを除く面々に見送られるが、門衛がな「全員嫁なのか?」なんて言ってるし。
「まだ嫁じゃないんだが」
「はあ? 娶らず侍らしてるのか?」
「いや、パーティーメンバーだし」
「やることはやってるんだろ」
暇さえあれば。
「近く娶る」
「そうか。スーペラティブってのも嘘じゃないんだな」
判断基準はそれかよ。
メランニーヴォレベル程度で五人も妻を持つのは不可能だとか。今はひとりだけどな。近く九人にまで膨れ上がる予定だが。
内三人は別の町の女性だし。
戻ってくるのか、と聞かれ機会があればとしておいた。
門衛も含めメンバー全員に見送られ町をあとにする。
「ベルマンで待ってるからね」
「生きて帰ってきてください」
ああ、そうだよな。試練と遭遇したら死ぬかもしれないし。
「トール様。ベッドを温めておきますので、必ず戻ってきてください」
「下着も温めておくよ」
「服も温めておくから」
「靴も温めて待ってますよ」
あのなあ。最後の奴、秀吉かっての。
まあでも、可愛らしいと言えば可愛らしいか。
背中に視線を感じつつ徒歩で町を離れ、見えなくなるとクリッカが俺を掴み飛び上がる。
一気に上昇し上空三百メートル付近で水平飛行へ。大気の流れを作り出し加速すると風圧が凄いな。呼吸困難になりそうだから自分の顔の周りだけ、大気の流れを整え呼吸しやすくしておく。
そう言えば、クリッカって呼吸しないのだろうか。するとしたら、鳥と同じように肺の前後に気嚢が複数あって効率よく、ってことかもしれんな。
眼下に流れる景色を眺め時折、進路を指示しておくようにする。
一時間程度でクリッカが疲労困憊状態になり、降下し着地すると暫し休憩を取ることに。
着地した場所は、エストラとランデスコーグを結ぶ主要街道だ。道中には宿場町が複数。他にう回路もあるようで、少し遠回りになるが宿場町が二つ多いらしい。主要街道には貴族領があり、商人曰く二万人程度の都市もあるそうで。だが寄って行く気はない。
街道から離れ森林の近くで休むのだが。
「出たな」
獅子のような頭を持ち、首から下は昆虫のようなキメラタイプだ。
クリスタが居れば名称を知れたかもしれんな。俺には分からん。ただ、攻撃してくるのであれば容赦はしない。
体高二メートル程、体長は三メートルくらい。鋭い牙と前肢に鉤爪。
向かって来るようだからギガントソードで薙ぐか。
クリッカには大人しくしているよう指示し、ギガントソードを背中から引き剥がし、横薙ぎの構えを取っておく。
唸り声をあげ向かってきたが、まあ、この程度の化け物じゃなあ。
接触する寸前に屈んで下から斬り上げると、ものの見事に真っ二つになってしまった。
倒すとクリッカが化け物の傍に行き俺を見てるし。
魔石を寄越せってことだろう。
已む無く、たぶん腹の方にあると踏み、ダガーで胴体を裂くと赤く光る、大きめの魔石があり取り出す。
血塗れだし内臓がにゅるにゅるして気色悪いし。テレーサやクリスタが居れば、率先してやってくれるからなあ。俺は触れずに済んでいたが。
「食っていいぞ」
差し出すとご機嫌な表情で魔石を食うクリッカだ。
これで少しは消費した魔素の補充もできただろう。どうせならスライムがいい。燃やせば魔石だけが残るし。魔素の量が絶大なのかクリッカの性能も上がる。
魔石を取り出された化け物は、しっかり霧散して姿が無くなるな。森の養分にすらならんとは、実に意味の無い存在だ。
何のために存在しているのか、存在理由が不明瞭な物体だよなあ。
魔素の補充ができて休憩も充分、となったら再び移動を開始するが、ここはとりあえず俺がクリッカを抱えて走ることに。
時速六十キロ程度で走り続けると、凡そ一時間で疲れが溜まり休憩する。
地上を走る時は街道を、空を飛ぶ時は直線で結ぶルート。
空を飛んだ方が時短に繋がる。どうせ残りは四十キロ程度だし、クリッカの飛行速度なら六分で着く。馬車だったらフルトグレンまで、十二日は掛かるからなあ。休憩時間も含めて三時間程度。
つくづくクリッカで良かった。移動時間の無駄を排除できたからな。
欠点は多人数で移動できないってことだが。
街道を少し歩くと宿場町があるようだ。
上空から見た感じだと、この先は二股になっていて、ひとつはランデスコーグで、もうひとつはローセンダールに向かうようだ。
ローセンダールに行くことはないな。ローセンダールに行くと面倒な事態に陥りそうだし。化け物相手とは言え暴れ過ぎた。領主にも話しが行っているだろうから、二度と行くことはない。ギルドの受付嬢を城壁内に押し込む際「生きて」と言われたけど。初見では塩対応だったが、助けたことで印象が良くなってそうだがな。会って無事を伝えたい気持ちはある。
でも行かない。
さて、近くの宿場町で腹ごしらえしたいところだ。
クリッカは魔石さえ食っていれば問題無い。もしくは俺から魔素の補充で済む。だが俺は一応人だからな。腹が減るわけで。
「この先の宿場町で俺は飯を食う」
クリッカに告げ歩き出すと付いて来る。
辺りを見回しながらひょこひょこ付いて来る様は愛らしいな。
宿場町の門まで辿り着くと、門衛にタグを見せるが「偽造か?」と言われてしまう。
「一応本物なんだが」
「存在しないだろ」
「ここに存在してるんだが」
「強制労働だからな」
信じやしない。
実に面倒だが背中のギガントソードを下ろし、持ってみろと言うと、まあ当然だが持ち上がるわけもない。百六十キロ超えの剣だからな。バーベルの要領で持ち上げれば、持ち上げられるだろうが、片手で扱える人間は存在しないわけで。
「これを片手だと?」
呆れ気味に俺を見てるし。
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