Sid.11 受付嬢と一緒の入浴

 少し心苦しい想いはあるな。化け物とは言え人語を解する知能を得てる。何より俺への懐き方が半端ではないし。甘え過ぎて困るきらいはあるものの、人と相違ない見た目で悲しまれるとな。

 それに下手な冒険者より遥かに役立つのも。

 寂しそうな表情を見せるクリッカを見て、アデラが「トール様。愛を差し上げては如何ですか?」なんて言ってる。


「愛って」

「抱き締めて差し上げればよろしいのです」

「でもクリッカは」

「人と相違ないのですよね」


 見た目はそうだけど中身は違うだろ。まあ、股間の造りも同じようではあったが。だが化け物がベースであることに変わりはない。

 しかし已む無しとして腕を広げると、喜んで抱き着いてくる。

 可愛らしいところはある。でも化け物。今後、こんなことで葛藤するのか、俺は。

 存分に抱き締めてやると「ぴぃ」と言って離れ、アデラに付いて行くようだ。


「トール様。愛されていますね」

「まあ、何か知らんが」

「感情があって知能も高いのです。大切にしてあげてください」


 マデレイネだが見ると、気付いたか? 座り込んで指さして「ももも、モンスター、じゃないですか!」と。


「心配要りません。トール様が生みの親ですから」

「う、生みの親?」

「実によく飼い慣らされています」


 暫し相対し落ち着くと「どうして言ってくれないんですか」と、涙目になって訴えるマデレイネだった。

 軽く会釈し「では、お預かりします」と言ってアデラが移動すると、クリッカも付いて行きロビーから出て行ったようだ。

 人を襲わない化け物。俺が育てたからか?


「あの、トールさんが生み出したって」

「卵から孵したからな」

「え、どうやって」

「魔素を込めてイメージして、だな」


 国が現在、化け物部隊を作ろうとしてると知らないのか。

 ギルド長なら知っていそうだが、ああ、マデレイネはお飾りだし、カーリンは受付嬢だったから。そんなことまで知らされてないのだな。

 知らないのであれば、言う必要もない。


「なんだか、トールさんって」

「神って言っても差し支えないですね」

「いやいや。神なんて居ないだろ」


 妙な存在を出して祀り上げないで欲しいぞ。

 とりあえずマデレイネと部屋に向かうことに。


「じゃあ、またあとで」

「あ、はい。お愉しみくださいって、なんか変ですね」


 愉しむのは愉しむが、そう言われると少し照れる。


「ごゆっくりどうぞ。夕食時には呼びに行きます」


 まあ、接客は今後学んでもらった方が良さそうだ。宿の格に見合う接客は必要だろう。

 アデラから仕込まれるだろうけどな。


 宛がわれた部屋に入ると、やはり豪華な内装だ。以前も思ったがルネサンス様式とでも言えばいいのか。隣に居るマデレイネを見ると、ぽかんと口を開けた状態になってる。


「驚いたか?」

「外観は知ってましたけど、こんな貴族の屋敷みたいだなんて」


 泊まるのは初めてだそうだ。そりゃそうだよな。同じ町に居てホテルなんぞに泊まるわけもない。

 まあ、豪華さで言えばガビィが譲り受けた、元迎賓館は更に上を行くけどな。

 あっちは貴族の館だから贅を尽くしてるだろうし。


「このホテルの風呂は入ったことあるか?」

「無いです」

「今入ってみるか?」

「あ、はい。ご一緒したいです」


 と言うことで部屋にあるバスローブを手に、一旦部屋を出て風呂場に向かうが、先にカーリンに断りに行く。

 ロビーにある受付カウンターに行くと「どうしたんです?」と聞かれ、風呂に入りたいが準備はできてるかと聞くと。


「いつでも入れます」


 私も一緒に入りたいです、なんて言うが、仕事があるだろと言うと「なんか、ギルドの時より融通利きません」なんて、残念がってるよ。

 縮小予定だったギルドと一緒にしたら駄目だろ。これが普通だと思わないと。


「じゃあ風呂借りるからな」

「ごゆっくり。いいなあ」

「今夜はトールさんと朝まで愉しむのぉ」


 地団太踏む感じのカーリンだ。前回はマデレイネが地団太踏んでいたようだし。

 風呂場に行くと早々に服を脱ぐマデレイネだ。やはり白い肌に見事な凹凸を描く姿態。思わず見ていると「トールさん、脱がないのですか?」と。

 それと今更と言う気もしないでもないが。


「あの、その左腕ですが」

「もげてる」


 どうした?

 無言のまま固まってるような。


「マデレイネ? 大丈夫か?」


 豊かな胸を揺すって俺の腕を取り「も、もげたって」と、だから今更驚かなくても。

 義手を外した腕を見て「冒険者ですから、こういうこともあるとは思いますけど」と言って「でも、先端が幾つか突起状になってます」と言う。

 突起状と言われ見てみると、確かにボツボツが四つある。その四つの突起は更に少し盛り上がる感じになってるし。

 これはあれだ、腕が再生してきているのだろう。やっとか。


「生えるぞ」

「え」

「この失った腕はまた生える」


 固まったか?


「あ、あの。生えないと思います」

「生える」

「気持ちは分かりますが」


 言うだけ無駄ってのもあるな。いずれ披露できるだろう。

 さっさと風呂に入ってしまおう、と言って風呂に入るのだが。


「あの、変わってます」

「浴槽に入る前に体を流してから入るのが流儀だ」


 いきなり浴槽にダイブしたら駄目、と言って体を洗い流す。

 その際に「ではお互いに」なんて言って、俺の体と股間を入念に洗う、ではなく弄り倒してるし。

 俺も負けじとマデレイネの体を撫で回すと、実に恍惚とした表情を浮かべ歓喜の声を上げるし。美形が悶えると破壊力が凄いな。

 互いの体を洗い終えると湯船に浸かるが、やはり思わず声が漏れ出てしまう。


「あの、お年寄りみたいです」

「仕方ないんだよ」


 中身は四十過ぎのおっさんだ。この世界に来た時は四十路だったが、すでにひとつ歳食ってるし。


「心地良いだろ」

「初めてですね」


 浮いてる。二つ。

 見ていると「遠慮しなくていいのです。弄り倒してください」だって。

 まあ、そうなると我慢できない俺だ。元気すぎる股間を行使して、マデレイネを堪能してしまった。全身滑らかで柔らかくて堪らんかったぞ。

 すっかり上機嫌のマデレイネが居て「お部屋でもお願いしますね」だそうだ。


 風呂から上がろうとしたら、誰か入ってきたようだ。


「あら、トール様」


 アデラと。


「クリッカまで」

「クリッカさん、少々汚れていたので」


 風呂で洗ってあげようと思ったらしい。

 クリッカを見たマデレイネだが「凄く女性らしいです。なんでです?」と疑問を抱いてるようだな。元より、体だけを見ればハーピーは女性そのもの。だが、それ以上に見事な姿態を持ってるんだよ。クリッカは。

 俺を見たクリッカが飛びついてくるし。


「あ」

「まあ」


 クリッカの胸の感触が。

 体の感触も人と相違ないのだが、羽で俺を包み込んでくる。


「と、トールさん。まさか抱いたり」

「しないぞ」

「トール様、反応してますね」

「これは何かの間違いだ」


 まさかクリッカで反応してしまうとは。顔だ。それと体の感触。それがあって無駄に反応を示す。化け物でなければ魅力溢れる存在だし。

 そのまま繋がるのか、なんて言ってるアデラだが、俺が化け物と繋がったらさすがに軽蔑されそうだ。


「あらまあ」

「トールさん。モンスターですよ相手は」


 またキスされてるし。と言うか、吸い取られてる。たぶん魔素が薄すぎて俺から補充するのだろう。

 キスを終えると説明することに。


「モンスターは魔素でできているのは知ってるだろ」


 魔素が薄いと推測だが、体の維持が難しくなると言うと。


「確かにそれはありそうです」

「ここだとモンスターも殆ど出現しないですから」


 クリッカもまた体は魔素でできている。魔法を使えば魔素が減るだろうし、どこかで補充する必要があるのだろう。

 そう説明すると納得したようだ。


「トール様は凄まじい魔法を使います。消費量も多そうですが」


 それはどうやって、と聞かれ意識せずに集めると言っておく。

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