第281話 番外編 ナヒョウエ④

 俺とマルク、キヨカ、はるちゃんは、ブックマークしてあったキックの実家を訪れた。

 キックの実家は、茨城でも千葉県にくっついては行かずに残った地域だった。


 小高い地に残った村、と言う感じであったが、それなりに皆で力を合わせて頑張っているようだった。

 実はたまにこっそりと(別にこっそりでなくても良いのだが)色々と渡していた。


 いつのもように物資を渡す振りをしつつキックから借りたスマホに両親の写真を撮りまくった。親戚?や近所の人達と逞しく頑張る姿を動画にも撮った。(キヨカが)


 そしてゲーム内のナヒョウエの保管倉庫を通してスマホをキックへと送った。元はキックのスマホだからな。




 直ぐにキックから返事が来た。

 両親の元気な姿に喜んでいた。そしてキックからまたスマホが送られて来た。


 そこにはお腹の大きなレモンさんも一緒に写っていた。

 あれ?レモンさんって妊娠してたのか?知らんかったがそれはめでたい。


 時間のある時にまた両親へ見せて欲しいとの事だった。うん、すぐ持っていったよ。


 今度は物資の援助とかではなく、普通に訪ねた。スマホを見せたら凄く喜んでくれた。キヨカがデータを実家のパソコンへと落としてくれた。なるほど、それならいつでも観れるな。


 パソコンの画像を観て喜んでいるふたりをまた動画で映した。あとでキックに送ろう。

 キックのご両親は、キックの居場所とかは聞いてこない。それが有り難い。


 帰る前に村の火山灰を吹き飛ばしておいた。村の子供でLAFをやっている子が数人居た。マルクと遊んでいる。生活魔法を教えているようだ。






 あっちゃんのタブレットも返そうと言う話を出したのだが、マルクが頑として嫌がった。

 恥ずかしながらそのタブレットにはマルクへ宛てた『お誕生日おめでとう』動画が入っているのだ。


 あー、恥ずかしい。何でやったかなぁ、あの時の俺よ。


 はるちゃんに相談をしたところ、別のタブレットにその動画を移動させれば良いと言われた。むぅ、動画は消せないのか。


 どこかから新品のタブレットを持ってきたはるちゃんにマルクは説得されて、無事(?)動画を移動したようだ。




 あっちゃんへ返却予定のタブレットで、仲間の日常や拠点内を撮りまくった。(春ちゃんが。俺が撮るとブレブレになった)


 あっちゃんへタブレットを送ると、向こうでの観賞会は大盛況だったらしい。

 あっちゃんからのお礼の手紙にはおねだりが書かれていた。


『あのタブレットさぁ、会社から社員全員に配布されたやつだから機能もイマイチ、画像もイマイチなのよ。もっと性能の良いタブレットあったら、次回はそれでお願い。あと充電器とかあったら嬉しい』


 向こうからの依頼は嬉しい。お返しなんていいじゃないか、と言ったこの口で言うのもなんだが、やはり何かで返せたらとも思っていた。


 ミレさんに相談したらアイテムボックスから即取り出した。凄いな、流石スキルSEの人。(意味不明)

 ついでにモバイルバッテリーとか色々とマックス充電済みのを貰った。


 それでまた皆を録りまくる。(はる先生が)


 俺のトマコ拠点……あ、今はサンバの血盟のアジトだったっけ。そのトマコの湾内に停泊している豪華客船。

 実は社員旅行…じゃなかった血盟旅行で豪華客席に泊まりに来ている。


 湾から外海に浮かべて、少しだけ走らせる。普段から従業員を雇っていたので船内は綺麗だ。客室も屋上のプールも!

 プールの周りを子供らが走りまわる。



「おい!滑って転ぶぞ? プールの周りでは走るな!」


「水に入る前はちゃんと準備体操をしてください!」



 念のため、俺のイッヌらも連れて来ている。勿論大精霊さまもだ。それと今回はサモンに『スライム』を召喚してプールに浮かべている。

 万が一でも子供が溺れないように、水にぷかぷか浮いていてもらっている。


 俺はビーチチェアに寝転がっているのだが、根が貧乏人なので、あの威風堂々とした寝そべりが出来ない。

 横向きでひざを抱えた寝方だ……。チェアーに敷いてあったタオルは腹にかけている。


 それと、ブルーハワイとか言う変な飲み物も無理だった。グラスの縁に刺してあったパイナップル(皮付き)が鼻に刺さった。……鼻血が出た。

 普通のコーラが美味しい。


 あ、春ちゃん、ちょっと、今のとこ撮ったん?鼻血出たとこ。やーめーてー。




 『ハケンの砂漠社員旅行』の動画が入ったタブレットを彼方あちらへ送った。

 俺の鼻血で皆が吹き出したとクレーム(?)が来た。

 向こうが俺の動画を観ている場面を動画に撮って送ってきた。


 これは……動画を観ている動画、を観ている動画を撮るべきだろうか?ちょっとわけのわからない動画になりそうなので却下された。





 ゲームのナヒョウエの保管倉庫を通して、パラさん達が着々と魔法書を送ってくれる。

 ライトやシールド、ヒールのようなゲームで言うところの低レベルの魔法書は死霊の森ダンジョンの地下でよくドロップするそうだ。


 ゲームで低レベルでもリアルではとても有り難い魔法書である。




 そんな中、ナオリンから依頼の手紙が来た。


 『欲しい物がある』との事だ。

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