第270話 色んな国から①
自衛隊のヘリでアオフ…オアフ?に到着したのをキッカケに、ハワイ以外へも何ヶ所かのブックマークを頼まれた。
俺にはよくわからないが、国同士のしがらみがどうとかこうとか。
一応タウさんに報告をしたらタウさんと春ちゃんも一緒に行くと言われて急遽迎えに戻った。
……本当に海外からでもテレポートって出来るんだなぁ。距離の制限とか無いのか。いや、あったら海の上に落ちるとか危なくてしょうがない。
ブックマークさえすれば『テレポート』は無敵だな。などとくだらない事を考えながらタウさんと空自の人の話を待つ。
俺はハワイでマカチョコをゲット出来なかった。
俺の英語が通じなかったのではない、やはり海外も想像以上の荒れ様だったのだ。(コンビニ無かった。いや、壊れた建物の残骸はあった)
地震や津波の被害も酷かったのだろうが、建物の壁に空いてる小さな穴……。これ、銃弾じゃないのか?よく知らんが。
とにかく俺らは自衛隊に囲まれて、ブックマークをしたら直ぐに飛び立った。(と言うか給油の間のみ待たされた)
給油後またヘリに乗り何処かへ。
降りてブックマーク、給油後飛び立つを繰り返した。タウさんと春ちゃんが一緒なので何処の地へ降りたかなどはふたりがしっかり覚えてくれる。俺は言われた名前でブックマークをするのみ。
俺の初の海外旅行は常にヘリのそばに居るだけで終わった。
「危険が無いようなら今度はみんなで来ましょう?」
「おう!」
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俺が初海外旅行を終えて少し経った頃、ネットから海外の話が出回り始めた。
『日本の自衛隊に救われた』というものだ。
自衛隊の人、凄いな。今、国内でもヘリが飛び回り救助が進んでいるっぽいのに、海外まで助けに行ってるのか。
「要人救助に伴って民間人も救助をしたみたいですね」
「日本人は困ってる人を見捨てられないからなぁ」
「そうなんだ。まぁ災害時はお互い様だからな」
いつものように大雪山南棟の大食堂でいつの間にか集まった仲間との会話だ。
「うちの血盟の自衛隊も海外救助に行ったりしてるみたいだ」
「うちもですよ、ミレさん」
そうか、ミレさんの『埼玉の砂漠』とカンさんの『筑波の砂漠』は、自衛隊員が多いからな。
ゲーム血盟加入して拠点が一緒でもリアル職業はそれぞれだからな。
「噂がどんな風に拡がったのかわかりませんが、最近かなり増えてますね。LAFの日本サーバーにログインする海外勢が」
今日は珍しくキングジムとツルちゃんとまめうさが同じテーブルで食事をしていた。
「ただでさえ国内でも今はログイン率がかなり高くて重たいのに、海外からもとなるとサーバーは平気なのですか?」
タウさんが向かいの席のジムに聞いたが、答えたのはまめうさだ。因みにまめうさは可愛いのは名前だけで、ガッシリ体型の青年だ。顎に髭もある。『まめうさ』に謝れ!
「す…すみません、カオさん。キャラ名…俺も変えたいんっすけどね。それはともかく、サーバーの件ですが、かなり重くなってますね」
「だよな、海外からのログイン勢だけでなく地元勢も動きが怪しくなってきてるんすよ」
「それで、今ちょっと弄ってます。もう少し見えたらミレさんやタウさんに相談しようと思ってました」
「今、話せるところまでお聞きしても?」
「あー、はい。鯖の壁を無くそうと思ってます。マースもジュピターもマーキュリーも」
俺が理解し難い顔になっていたのに気がついたのか、まめうさがこちらを向いてゆっくりと話し始めた。
「現在、と言うか元からLAFは、まずは国サーバーがあり、その国の中にも複数のサーバーがありました。皆が鯖と呼んでいるマス鯖とかキュリ鯖の事です。LAFはゲームアカウントを作り、その後に国選択、そして鯖選択をしてキャラを作成します。出来上がったキャラはその鯖でしか動かせません」
うんうん、わかる。だから鯖移動は出来ないから、他の鯖で遊びたい時はキャラを一から作ってレベル上げしないとならないんだよな。
「鯖の壁を無くすって、さっきの。つまり、キャラの鯖移動が可能になるって事か?」
「そうです。マス鯖で作ったキャラのそのレベルのまま、キュリ鯖へ行けます」
なるほど…………?
「でもそれで鯖内のプレイヤーの分散が出来ますかね? 皆、マス鯖を動かないのでは?」
「海外勢は動かないでしょうね。動かないと言うか、カオさんやタウさんらの血盟が居るマス鯖に張り付くでしょう」
「やはり、何らかの情報を得に来ているのか……」
「おそらく……」
「ですが、日本国内の一般人、エルフや他のクラスのレベル上げをしたい人や、パルプ集めをしたい人は空いている鯖へ行くはずです」
「なるほど」
「それで、以前に大雪山サーバーを作っている話をしたと思いますが覚えてますか?」
「ええ、勿論です。完成したのですか?」
「はい、実は鯖自体は完成はしていたのですが、接続をどうするかで保留になっていました。が、今回、鯖の壁を無くすタイミングで、大雪山鯖も接続します」
「サーバーではなく、鯖で?」
サーバー……鯖…。やだもう俺の理解力が振り切れる。
「元からあったLAFジャパンサーバー、そこを乗っ取る形で茨城のLAF洞窟サーバーを作りました。LAFジャパンの方が破壊されても洞窟は問題なく動きます。そして今回ミニになりましたがLAF大雪山サーバーの中に大雪山鯖」
えー……大雪山の中に大雪山……。マトリョーシカみたいなもんか?
「大雪山サーバーは、洞窟サーバーと大雪山サーバーの切り替えが簡単に出来るようにしました。普段は洞窟に接続、有事の際に切り離します」
「そして凄いのは」
「ちょっ、ジム、それは俺が言う。良いとこ取りすんな」
ジムとうさがちょい揉めとる、と言っても喧嘩ではなくふたりとも何か自慢したいように鼻がヒクヒクしとる。
「皆さんの血盟は大雪山鯖へ移動していただきます。そして大雪山鯖の1番の特徴は、出るのは自由だけど勝手に入れない」
「どう言う事ですか?」
「鯖の壁を取り外すと、鯖を渡るのは自由になります。が、唯一、大雪山鯖のみ、承認制にします。ただ大雪山を出るのに許可は不要です」
「言い方は悪いですが、逆ゴキホイホイです」
んあ?
逆ゴキホイホイ?
普通のゴキホイホイは、入るのは自由だが出ようとしても出られない。
その逆……。出るのは自由だが入るのは難しいと。
「なるほど」
「なるほどなー」
「例えが嫌ね」
「嫌ですね」
「タウさん、大雪山鯖に移動させる血盟、まぁ個人でも、それを事前に教えていただけますか? 壁オープン直前にこちらで操作をしておきます。それが済み次第、壁オープンにしょうと考えています」
「鯖壁オープンはプレイヤーに事前にお知らせをしますか?」
「はい、その予定です。ゲーム内のアカウント宛メールですね」
「大雪山鯖も今までの鯖と変わりないワールドになりますか?」
「ええ、勿論です。それと、ダミーと言うか小さめの鯖を同時に2つオープンします」
「今まで沈黙していた鯖も起こします。LAFに元からあったマース、ビーナス、マーキュリー、ジュピター。今回から全てPK不可にしました。PKを仕かけられてもノーダメージです。それから大雪山鯖以外に新しく千歳と札幌。北海道の地名で3サーバーが増えた感じですね」
「全部で7鯖……まぁ実質は6鯖。それだけあればとりあえずは十分ゆったりと出来ますね」
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