第155話 基本はここから①
北海道の主要のブックマークは終わった。その日はもう一台キャンピングカーを出して、2台並べてその中で休んだ。
別にテレポートで洞窟拠点に戻っても良かったのだが、明日も早くに出発すると言うので、そこに泊まる事にした。
カスパーは消して代わりにKBB(キングバグベアー)通称キングさんを出して、車の外で警備にあたらせた。
カセ、ナラ、クマの要望で、5分だけLAFへ飛んできた。
俺の気が変わらないうちに血盟加入申請を受理して欲しいそうだ。マルクもキヨカも一緒に来たがったのでアネも連れて行った。
アネはLAFのシャワー室を借りていた。(15分待った)
戻ってキャンピングカーで休む。向こうにカセ、ナラ、クマ。こっちにアネ、キヨカ、マルク、俺だ。
男女別にしようかと持ちかけたが、寝るだけなのでいいと言われた。天井部分にマルクと俺、後部のベッド上下にキヨカとアネだ。
翌朝まだ薄暗い時間にクマにドアを叩かれて目が覚めた。キヨカとアネは準備が済んでいた。俺とマルクは外で生活魔法で水を出して顔を洗った。キヨカからタンクに水を入れて欲しいと頼まれた。
そう、キャンピングカーの初日にポリタンクの水を入れにガソリンスタンドの給湯室までわざわざ行ったのだが、あの時は自分で水を出せる事をすっかり忘れていた。
あっちのキャンピングカーはアイテムボックスに収納した。こちらに集まり朝食を済ませる。
地図を広げて今日の予定を話している。
「住宅地、と言うのかな、結構家がある街でも救助が微妙ですね」
「ああ、困ってる、救助されたいと言うのは事実だろうが、圧倒的に避難所が足りないよな、やっぱり広すぎるんだよ。足で移動出来る位置に避難所はないだろ。でももうガソリンはない、移動出来ずに自宅に居るしかない家がほとんどだ」
「これは地元の警察や消防団の助けは必須でしょうが、ネットが通じないのがなぁ」
「それとやはり山の方は魔物植物が出て来てますね」
「エントが少ないのか。精霊に頼んで火山灰を吹き飛ばして貰ったがエントが出てこないな。
「
「そうなんだよな。エントって持って来れるのかな」
「だけどエントって全身出ると結構大木ですよ?持ってくるのは難しいんじゃないかな」
「あー、生き物はアイテムボックスに入らないからなぁ」
「とりあえずは自衛隊駐屯地の彼らがどこまで救助活動が可能かですね。彼らが動ければ……。まずは駐屯地を端から周って行きましょう」
「
「私達はブックマークが仕事よ」
アネがバシっと会話を切った。
「ブックマークをさっさと済ませる、それが仕事。自衛隊との交渉とか、北海道の道民の救助は別の者がやるわ」
そうだった。とにかくまずはブックマークだな。考えるのはそれが得意な者に任せよう。
カセやナラのお陰で31箇所の駐屯地のブックマークが3日で終わった。速いな。俺なら3日迷って1箇所にも辿りつけない自信がある。
「俺は生涯運転しないぞ」
とりあえず宣言した。
「大丈夫です。私が運転出来ますから」
「僕も17歳になったら免許取る」
あ、そうなの?免許って17歳からだっけか? まぁ、踏むとこに足が届かないとならないからな。高校生くらいだともう成長が止まるのかな。免許センターはやってないだろうが、カセとかが何とかしてくれるだろう。
そう、サンちゃんに頼まれた
俺らは洞窟へと戻った。
タウさんとカンさんは第2.5拠点(病院側の洞窟)が、ちょうど山場だそうだ。
ミレさんもゆうご達もLAFへ詰めているそうだ。俺たちも暫くはフリーになった。
とりあえず、トマトと
カンさんちは、倉庫どころか庭もエントに侵略されていた。
「カンさん………これ、知ってるのかな」
以前は倉庫の中で頭の先だけを出していたエントだったが、今、倉庫は細い(子供エントか?)のが10本くらい頭を出している。
そして外の庭にはカンさんちの母家を囲むように巨木のエントが、離れのカンさんちの周りは比較的若いエントが並んで立っている。
カンさんちの敷地の外、アスファルトの両脇にも、まるで昔の電柱のような間隔で、エントが立ち並ぶ。
敵だったら、これ、怖いぞ?
マルクは楽しそう眺めている。マルクの声に気がついたのか家の中から
「お帰りー、マルク!」
「お疲れさん、マルク、北海道はどうだったー?」
「お土産あるよー」
実は何を隠そう、途中の道の駅で「5分だけ」とお願いして停まってもらい、超高速収納スキル(とにかくババババっと収納する技)を使い、お土産をゲットしてきた。
若干腐ってるのもあったので、それは廃棄した。
「んとねぇ、白っぽい恋人とー、じゃがモックル!」
「え、何何?食べた事ない」
「いっぱい入ってる?他のやつも呼んでいい?」
「
子供達、いや高校生くらいもいたので子供扱いは違うか、しかし皆一様に楽しそうにお土産に群がっていた。
エントの事を気にする者は居ない……。普通なのか?これ、いつもの風景なのか?
カンさんかタウさんに聞きたいが、あっちは拠点造りが山場と言ってたな。言った方がいいのか言わない方がいいのか。そうだ、まず
俺の顰めっ面に気がついたのかマルクが近寄ってきた。
「ごめんなさい、はい、これ。父さんの分。ちゃんと取っておいたよ?」
違う、誤解だ!お菓子を貰えなくて膨れていたのではない、断じて違うぞ!
「いや、それはお前が食べなさい。それより
マルクの目に涙が上がってきた!
「ち、ちがっ、ありがとう。白っぽい恋人かぁ、これは
「うん!じゃがモックルもあるよ」
「おお、これは人気のやつだ、俺が居た職場でも北海道旅行に行った社員が配っていたな(俺以外に)」
「美味しいねー」
「おお、美味しいなぁ」
うんうん、マルクの涙が引っ込んだ。ふう、思春期だろうか?難しいな。
キヨカがそばでやれやれといった感じで見ていた。
「そ、そうだ、
慌ててアイテムボックスから取り出した。
向こうに居た者もこっちに寄ってきた。えっ?ひと箱8個入りだから足りない?わかった、もうひと箱出す。
それを渡しながら
「
「ん〜? いつ……からかな。マルクやおじさんが北海道に行って直ぐだっけ?」
「そうそう。精霊にこの辺り一帯の灰を吹き飛ばしてもらっただろ?あの後から段々と増えていったよな?」
「そうか、あの、父さん…カンさんは知ってるのか?」
「えー、知らない。あ、知ってるか知らない。だって父さん最近忙しいもんね。僕らも忙しいし」
「
マルクが羨ましそうに言う。
「一緒にやろうぜ! 最近さぁ、クラブが増えたんだよ」
「生活魔法クラブは前からあったよね、僕とマルクで立ち上げたから」
「うん」
生活魔法クラブ?
いつの間に立ち上げたんだ。それで
「私アクセサリー倶楽部に入ってるー」
「俺は、エントクラブと洞窟探検クラブ」
「僕もそれ入ってる」
アクセサリー倶楽部?それは……トマトの
それより、エントクラブって何だよ、何するんだよ。洞窟探検はわかるぞ?でもエントはクラブにはならないだろ?
「クラブは幾つ入ってもいいんだよね?」
「重複可能だぜ」
「人生はゲームクラブ、あれ、面白いねぇ」
「あと盆栽クラブも、年寄りっぽいと思ったら案外ファンタジーなんだよ」
待った待った待った、『人生はゲーム』ってあの盤上のゲームの事だろうか?それはともかく、盆栽クラブがファンタジーってどゆことよ?
盆栽は盆栽だろ? ファンタジー?ファンタジーなのか?
「珠算教室はクラブとは違う? あのジャラジャラするので計算するやつ」
「あれは塾みたいなもんだな。俺3級とれなくてやめた」
「私2級までいった」
「俺、カケワリでたとこで離脱したー」
子供、侮りがたし。タウさんちのエントの事は頭からすっぽ抜けた。
子供達が遊びの延長で始めた『生活魔法』が、いつの間にか現実へと変わりつつある。
今までの地球だったら「出せるわけがない」と決めつけていたが、木が歩いた時点でもう今までの地球じゃないよな?
木が歩けるんだから、人間が水を出したっておかしくないはずだ。
そう言えばタウさんがミレさんに言ってた。ミレさんのシステムエンジニアが『スキル』になってもおかしくない、って。
極めたら、ステータスに載る、かもしれない。
それは、常識にがんじがらめの大人より、柔軟な子供達の方が早いかもしれない。
俺の『HKN』のように、カンさんの『MCN』のように。タウさんの『DIK』のように。
英語3文字…………?
アクセサリーだとACCかな?ACSかな?あとでタブレットで調べてみるか(スペルを)。
洞窟探検はDおーくつTあんけん…DTか?これだと2文字か。
俺はスペルが気になって洞窟の自分の個室へ戻った。マルクには少し
出かける時は必ず声をかけるからと言ったら安心顔になった。
部屋でタブレットを使いスペルを調べる。
洞窟探検……。英語だと、ケイブエクスプロなんとか、CEXかな、かっこいいな
盆栽は……BONSAI?これ英語なのか
じゃぁソロバンは、SOROBAーN
子供らのリアルステータスにどう表示されるのか楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます