第147話 北から東へ②
涙目のゆうごを連れて洞窟拠点の本部に戻った。
北海道組の3人、大地、山本、柴田は地下シェルターのLAFに泊まりだ。
「盟主会議が終わったら直ぐに戻りますから!」
誰に向かって言った言葉なのか自分の心に誓った言葉なのか、ゆうごはテレポートリングを持っているのでそれも可能だ。何としても徹夜レベル上げに参加をしたいようだ。若いって羨ましいぞ。
タウさんの集合時間までまだ少しだけある。ゆうごに洞窟拠点の案内をした。
さっきまで少し不貞腐れていたゆうごであったが、洞窟内を案内されていくうちに気持ちが上がってきたようだ。
「凄いな、この天井の高さ! 狭さを全然感じさせませんね。えっ、ギルドとかあるんですか!」
「ああ、まぁ。ギルドと言ってもハロワみたいなもんだけどな。あ、ハロワとか解るか? 若者には無縁か。ハローワークと言う職業紹介所みたいなもんだ」
「まさにギルドですね。魔物の討伐依頼とかもあるんですか?」
「いや、無いよw 異世界と違って魔物なんて居ないか……あ、最近は魔物植物が居るか。あとゾンビ犬な」
「うーん、ファンタジーなのか、ホラーアクションなのか、どっち路線で進むつもりなんですかね、地球は」
「さぁ、どうだろな? 俺は平和路線でお願いしたいぞ? せいぜい、薬草採取くらいにしたい」
「薬草!あるんですか?」
「ない……と、思うが、わからん。エントが居るくらいだからな」
「あ、カンさんちのエントにも会いたいなぁ」
「病院の庭にも居ただろう」
「そうなんだけど会う時間が無かったですから。いいなぁこっちは、何か凄い事だらけです」
「まぁ、おいおいな。婆ちゃんの調子が良いならこっちに越して来てもいいしな」
「そうですね、部屋、空いてるかなぁ」
「ギルドに依頼を出しとくといいよ。不動産屋もいるし、連絡来るぞ。でもまずは婆ちゃんを優先してやれよ?」
「はい、勿論です!」
「婆ちゃんとは念話出来るんだろ?」
「はい。今日もずっとしてました。婆ちゃん、心配性だから……」
ええっ、念話をしているそぶりなんか全く見えなかったぞ?
ゆうごもタウさんと同じで、左右チート持ちか。
洞窟内の主要な場所をブックマークしてもらい、本部へと戻った。丁度いい時間だな。
中に入ると皆が揃っていた。
「お疲れ様です、カオるん。そしてようこそ本部へ、ゆうご君」
各々が定位置(自然とそうなった)に座る。いつもひとつだけ空いていた椅子にゆうごが座った。
俺の席だけ長椅子になっている。両脇にマルクとキヨカが座れるようにだ。
「あの、カオさんだけ秘書付きなんですか?」
ゆうごが不思議そうな顔でポロリ口に出した途端、ミレさんが吹き出した。
「秘書と言うより両親同伴で会議に出席www」
ミレさんがひとりバカ受けしていた。意味がわからん。
タウさんがゴホンと咳をして場を仕切った。
「カオるんはまぁ、お三方でワンセットで。その方が色々とアレですので」
タウさんの言いたい事がイマイチ理解出来ん……、ゆうごもキョトンとしていたが、ミレさんらは頷いていた。
「久しぶりのツキサバ再会ですね。地球に戻ってからは初めてか」
「ツキサバ……凄く懐かしく感じるなぁ」
「月の砂漠はもう無いんですよね」
「無くないぞ? あっちにはあるさ。パラさんやリンさんがさ」
「そうですね。さて、今回の盟主会議の大きな議題は、北海道拠点の構築です。ですが、その話に入る前に小さな議題を片付けましょうか」
隣でキヨカがノートを出していた。それを見てマルクも慌ててノートとペンを出す。俺も出した方がいいだろうか?
キヨカに目をやると、気がついたキヨカが首を横に振った。
そうか、俺はメモらなくてよい、と。うん、良かった。苦手なんだよ、ノート取るのって。
子供の頃もいつも黒板を書き写す前に消されてしまっていたな。
書記とか凄いよな。耳から聞いた言葉を手でボードに書いていくんだぜ?俺なら『聞く』と『書く』がごっちゃになって大混乱だな。
「小さい議題の方は、
「上手くすればなんですけど、筑波山の中を通ってこちらの第1拠点に繋げられるかもしれません。今までは強度の関係で山の中を進むのは躊躇っていましたが、土の精霊のスキルでいけるみたいなんです」
「え、そりゃ、凄いな」
「ええ、そうすると第1、第2拠点が、筑波山内で移動が可能になります」
「期間はどのくらいかかるのですか?」
「そうですね……、おおよそですが2週間と見ています。それ以上かかるようなら、一旦止めて北海道を優先しようと思います」
「って事は、まずこっちの拠点を整えてから北海道の拠点に取り掛かるってことか」
「そうですね。私とカンさんが必要になりますので、
「スキル持ちって他にもいないのかなぁ」
アネと同じ事を考えていた。俺達が知らないだけで異世界帰りは日本中にいると思う。
だって
「残念ながら今のところここでは私達だけですね。その2週間ですが、ゆうご君や北海道からの避難組はLAF地下でのエルフ作成とレベル上げをお願いします。
「俺らはどうする?俺らもゲームの補助に回った方がいいか?」
「いえ、ミレさんには別にお願いがあります。現在学園都市の地下シェルターにあるLAFのサーバーを洞窟へ移転出来ないか、
「サーバーの移転か……
「難しいでしょうか」
「うぅむ、まぁ、聞いてみる。ハマヤン達もどこまで理解しているか」
「あのデカイ機械をただ運べばいいいだけじゃないからな。仮に運んで来たとしてこっちで電力を賄えるのか?」
「それは……カンさんのスキルで大丈夫かどうか。まずはその前段階が可能かどうかですね」
「ねーねー、何でこっちに移すの?」
うむ、俺もそれがわからない。タウさん、カンさん、ミレさんはわかってるのか。ゆうごも何も言わないって事は解ってそうだ。
解らないのは俺とアネだけか。
「何かあった時にこちらの方が安全だからですよ」
「何かって火山噴火とか?」
「そういう自然災害もそうですが、人災も考えています」
「人災って……?」
「あそこの地下シェルターはほぼ謎のままですよね。どう言う人達や団体が入っているのか。現在判っているのはLAF以外は自衛隊がいるくらいです。外からの災害でなく、中から攻められたら破壊は簡単です。」
「あぁ、だから、何かが起こる前に引っ越そうって事か」
「となると、丸ごと引越し…と言うよりも、メインをこっちに引っ越して、目眩しをあっちに置いておくか」
「どう言う事だ?ミレさん」
「つまり、あそこは元々、『LAFジャパン東京』があった。LAFの日本でのメインサーバーだ。だが、洞窟内に『LAFジャパン茨城』を作り、メインをこちらに移してあっちはサブにする」
「なるほー。そしたらあっちが攻撃とかされても、こっちは無事って事なのね」
「そうです」
「問題は上手く出来るか、だな」
「まぁ、自衛隊のやつらは、シェルターのどこかでゲームやってるから、今はLAFのゲーム部屋には来てないんだろ?ちょうどいいな」
という訳でミレさんはLAFの社員らとそのあたりを詰めるらしい。
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