第124話 植物の良くない進化②

 しかし、世間はもっと追い詰められていった。



 植物の凶暴化で死者が増え続けた。ネットの書き込みがエグい。どこまでが真実なのだろう。


 除草剤や火は植物を怒らせただけであった。火炎放射器などがあれば別だが、多少の火は植物が怒り狂うキッカケになった。

 そして火の付いた実をぶつけてきたり、火がついたまま巻きつかれて、助かったとしても大火傷を追う事になった。



 一旦チーム別の活動は中止した。そして救助の書き込み先へ大人のみで行く事になった。



「何で、急にこんなんになったんかな」


「こんな?植物が動きだした事ですか?」


「そう。地球では今までは仲良く共存してたのにさ」


「仲良くかどうかはわかりませんね。植物とは意思疎通が出来ていませんでしたから」


「でも少なくとも、植物が歩いたりはしなかったよな」


「ええ、まぁ。しかし人間が知らなかっただけかもしれません」


「そうですね。うちも毎年初夏から秋にかけて植物との闘いでしたよ」


「えっ、カンさん、植物と戦ってたん? リアルで?」


「ええ、刈っても刈っても直ぐに生えてくるんですよ。『雑草』と一括りに言っていましたが、やつら凄い繁殖力ですね」


「そう言えばさ、何かの番組で観たことあるんだけどさ、地球上から人類が滅亡したら、即、植物が世界中を覆い尽くすってさ」


「そうですね。元々、この地球は植物の世界だったのかもしれませんね。そこを何かのキッカケで人間が急増した」


「そして今は、災害によって人間が激減した。植物にとっては頂点を取り戻す良い機会だって事か」


「それってつまり、虎視眈々と狙っていたのか……。怖ぇぇぇぇ。植物怖いな」




「そう言えば、LAFにもありましたね。植物の楽園がエルフの森に」


「あ、うっかりウィズで行った時に俺瞬殺されたわ。エントの大木に」


「ああ、エルフの森ってエルフ以外が行くと排除されるんだよなw」


「まさか、この世界がエルフの世界になった……とか?」


「いえ違うでしょう。単に植物が何故だか凶暴化しているようです」


「全部ではないよな?畑のジャガイモは動いて無かったし」


「畑の作物は大丈夫なようです」


「ジャガイモに手足があったら食べたく無いよなー」


「そうでもないか」


「そもそも牛も豚鶏も、手足や頭があっても食べますからね」


「たしかに」



 そんな話をしながら、鍵付きの救助スレに書き込まれた場所を転々と回っていった。

 新規の場所よりも、自分達が今まで救ってきた所のフォローに回ったのだ。



 スレには植物に対する警告文も載せていた。


『こちらからは決して攻撃はしない事』

『不味い状況におちいっている場合は、その状況の説明を』



 急を要する場所から、そしてその近場をまわる。

 怪我人の対応の他は植物との距離を作る作業、それとカンさんのアーススキンだ。これがかかった建物には植物は侵入してこない。しかし12時間しか保たないのだ。

 それでもかなり被害が減った事が、書き込みにより判明した。


 それから病院の壊された塀にブロック代わりに置いた『硬い石』、これはあちらのダンジョンの28Fのストーンゴーレムからのドロップだ。


 ただの硬い石(大理石っぽい)と思い、ダンジョンへの道路整備に使っていたが、完成後、何故か魔物が道路の中に入って来ないので有名になった。


『森で魔物に襲われたらとにかく石畳へ逃げ込め』と。


 今回は壊れた塀がわりに何気に置いたのだが、何とその近辺を歩く植物が居なくなった。それで病院の敷地に、一定間隔に『硬い石』を置いた所、院内に侵入する植物は無くなった。

 勿論、最初からあった花壇や植物はそのままだ。



「カオるん、石の在庫はどのくらいありますか?」


「えっえっ、石? 何でもいいんか? 拾った瓦礫でも?」


「いえ、違います。ダンジョンドロップの石です」


「あ、あぁ、ええと硬い石だよな? たまに出たレアのも?」


「レア?」


「う、うん。石ゴレがたまに落とすんだ。ゲームには無かったよな?『不思議な七色の石』」


「硬い石もゲームにゃなかったぞ? カオるん」


「あ、そっか」



 俺はドンっと床に置いた。

 1メートル四方の大きさで大理石の様に表面は磨かれてつるりとしている。そして模様のなかに七色に輝く宝石のようなものが散りばめられていた。



「レア石は使い道がわからんから、ボックスの底に眠らせていた。硬い石の方はダンジョンの道整備でほぼ使っちまったからなぁ。今はこんだけ」



 そう言ってタウさんに向かいトレード画面を開き、タウさんの方へと移動した。

 タウさんは俺の方へバナナを置く。うん。どうもね。バナナもいっぱい持ってるけどね。



「298個。ダンジョンで使った割には随分と残っていましたね」


「ああ、ダンジョン完成後にもたまにあそこ通ったからな。ゴレは動きが遅いからなんかちょっと安心するんだよな。速いやつは苦手だ」


「これ、もしかすると全部ですか?」


「うん、全部。いらないから」


「ふぅ。まぁ有り難く頂戴しておきます。こちらで采配して使っても?」


「おう、勿論だ、タウさんの采配で頼む。あ、レアもいるか?76個ある。本当は77個集めようとしたんだが、最後の一個が中々出ずにやめたんだ」


「ははは……ええ。とりあえず5個ほど頂いても?」


「おうさ」



 俺はトレード画面を開いて七色の石を5個、タウさんと方へ置いた。タウさんはバナナを5本、俺の方へ置いた。トレード完了だな。



 俺たちの洞窟拠点の入口にも硬い石は置かれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る