第98話 検証とクエスト②

 -------------(カオ視点)-------------



 洞窟拠点メンバーが次々とレベル上げをしていく。ゲームの話だが。


 LAFはいまだにウィズは冷遇されたままなのか?ウィズの進み具合とは比べものにならない速さで周りはレベルを上げていく。


 気にするな、大丈夫だ。うんうん、ウィズはゆっくりやろうな。マルクがちょっと涙目なっていた。くっそう、許すまじ、ゲームを作ったやつ。



 現在のウィズは、俺とマルク、それとアネ兄の隼人はやとさん、北海道の北野大地きたのだいちの4人だ。

 とは言え大地だいちはゆうご達仲間とレベル上げを行っているようだ。ゆうごが起こした血盟『きたの砂漠』にもウィズは多数いた。ちょっと羨ましい……。


 ナイトを選んだふたりは早くもレベル45を達成した。

 アネの姉の清華きよかさんとタウさんの下のお嬢さんの美咲みさきさんだ。美咲さんには初対面の時に絡まれたが、のちに謝られた。……謝…られたんだよな?あれ。


-------------(回想)-------------

「カオさん!あの、さっきは!ごめんなさいです!」


「お、おう。別に気にしてないぞ?」


「えと、カオさんを馬鹿にするつもりはなくて、うちのおとんのが凄いと言うかー、おとんが頂点トップだから他が下に見えるって言うかー」


「うん、タウさんはトップオブトップだよなー。俺も尊敬してる」


「えっ!でしょ、でしょ? そーだよねー。うちのおとんは最高なのよ」


「おう、タウさんは最高だよなぁ」


「そうなのよー!カオさん、わかってる!いい奴!」


「おう、サンキューな」

---------------------------------------


 と言う事があった。基本良い子だな。まぁタウさんちの娘だもんな。


 それでそのナイトのふたりがゲームでレベル45クエストを受けたそうだ。

 一応、アネが補助についたらしい。



「だいじょーぶだよ。45クエって割とサクっと終わるから。簡単簡単」



 ふたりはサクっとクリアした。


 それからエルフの面々めんめん続々ぞくぞくと45になっていった。


 エルフキャラを選んでいたのは、タウさんとこの長女の美穂みほさん、ミレさんとこの親子の芽依めいさんと真琴まこと、アネのご両親の柊一郎しゅういちろうさんと希和きわさん、カンさんの息子の翔太しょうただ。


 エルフは属性が『火』『水』『土』『風』と4つに分かれているが、クエストは基本一緒だ。なので、全員が45になるのを待って一緒にクエストにトライするそうだ。



「エルフのクエストは属性は関係ないので皆一緒に受けられますよ」


「エルフの45クエはそんなに難しくないです。数倒さないといけないんですが、全員弓で打ちまくれば一緒にクリア出来ます。あ、PTは組まないでくださいね。PT組んでいると失格になりますから」



 勿論フォローはタウさんとカンさんだ。クエストに失敗するわけがない。ズルいぞ。(←よく解らない嫉妬)



 ダークエルフを選んだのはタウさんの奥さんの有希恵ゆきえさんのみだった。

 ミレさんのフォローと、見守るタウさん。(愛妻家だなぁ)



「ダークエルフのクエストは場所さえ覚えておけば楽勝ですよ……けど15年以上前かぁ。覚えてるかな。あ、運営うんえいさん、攻略地図あるかぁ?あ、どもども。あんがと」



 ミレさんはLAFの社員さんから攻略地図を貰うと言うズルをしていた。でもま、有希恵ゆきえさんだからいいか。タウさんの奥さんだからと言うより、何か儚げなお嬢様って感じなんだよな。手助けしたいけど迂闊うかつに近づくとタウさんに睨まれるからしないけどさー。



 皆からだいぶ遅れて、マルクと隼人はやとさんが45になった。君たちよく頑張った。この速さで45になるとは凄いぞ?

 さて、どうするか、俺の覚えている通りのクエストだとしたら、物凄く大変なのだ。


 一応、LAFの社員さんに聞いてみる。


「あぁ……、変わってないっすよ。ウィズはかなり減ったのでクエストは修正もなく放置でしたねー」



 酷っ。相変わらずウィズに対して塩対応。



 不安そうに見上げるマルク。



「…………スマン。マルク、隼人はやとさん。ウィズの45クエは一筋縄ではいかんぞ。俺3回失敗して4度目で何とかクリア出来た」


「あ、一応クリアは出来るんだ。よかった」



 隼人はやとさんがホッとした顔をした。

 突然ミレさんが笑い出した。



「あははは、そうだ! 思い出した。ウィズ凄かったよなーw 失敗してやり直すウィザードでクエストの出発地点に大行列が出来てたよな。でさ、森の中の行列にモンスターが集まって来て、ウィズのしかばねが列になって地面に並んでたよなw」


「そっ、そうでしたねっ」



 タウさんが笑いを堪えられない変な顔になっていた。



「笑い事じゃないからな! アレ本当に大変だったんだ」


「そうでしたね。それで並んでいるウィズの血盟がそれぞれフォローで寄ってくるモンスターを倒してましたね」


「うちもカオるんから『助けてぇ』コールが来ましたね」


「だって仕方ないじゃないか!ただでさえ防御力がかみ状態のウィズなのに、クエストの条件が武器装備を全てはずす、魔法だけでクリア必須だもんよ。酷くないか? 他の職は皆、武器装備使い放題だぞ?」



「裸のウィズとかw マジで可哀想すぎるなw」


「笑うな! マジ辛かったんだからな。クエストの建物に入るとモンスターが溜まってるんだぞ? 失敗した前のクエストの分のモンスターが! 魔法使うとあっという間にMP切れるしさ。おい、運営! ウィズに何か恨みでもあるんか!」



 俺は近くに居たLAF社員に八つ当たりの言葉をぶつけた。



「いや、すんません。アレは俺らもどうなのかなーって思ってましたよ。でも本部は海外ですからね。ウィズ嫌いのやつが考えたクエストかって言ってたくらいで」



 隼人はやとさんの顔が青ざめていく。


「クリア出来る気がせん……」


「いや、大丈夫だ。あの頃ウィズの間で知恵を絞りまくった攻略法が出来た。隼人はやとさん、マルク、いいか? MPは最後のボスまで取っておけ。途中で魔法は使うな」



「武器ないのに? 出てくる魔物はどうやって倒すの?」


「倒すな。中に入ったらひたすら走れ。魔物が出たらとにかく避けて走り抜けろ。最初は一本道だからとにかく走り抜け。突き当たりに扉があるので触ると開く。中に飛び込んだら直ぐに扉を閉めろ。開けっぱなしだと魔物が大量に入ってくる」



「待って、待ってください。メモします」



 隼人はやとさんがメモとペンをそこらから探してきた。マルクも貰っていた。

 準備が出来たのを見てから話を続けた。



「出口の無い部屋に見えるが、地面にある足場あしばを踏むと地下への入口が開く。だが足場から降りると地下入口が閉じてしまうんだ。そこで魔法の『ゾンビクリエイター』を使う。出てきたゾンビを足場に乗せてから自分は地下入口を降りる」


「ゾンビクリエイター……あ、良かった。持ってます」


「うん、僕もある。前のクエストで貰った」



「降りたら直ぐにサモンを出す。その先の部屋がボス部屋だ。ボスはサモンに倒させろ。残ったMPでひたすらサモンにヒールをしまくる。MPが切れたらボスから逃げ回れ。サモンが倒してくれるまで逃げろ。それでクリア出来るはずだ。一度入って軽く流しておくか?今は人がいないから連続で受けられるぞ」



 気がつくとパソコンを持った皆が周りに寄って来ていた。

 ゲーム内でも、ウィズのクエストのスタート地にナイトやエルフが集まっている。



 皆が見守る中、隼人はやとさんがまず挑戦するみたいだ。



「ああ!囲まれた、ダメだ」



 隼人さんがモンスターに囲まれて死んで街に戻ったようだ。



「ブクマしてあるだろ?戻って青P飲んでMP回復させておけ。次、マルク!」


「はい!」




「うわっ、足場どこ?足場ないー」


「マルク、扉閉め忘れてる、モンスターが入ってきた。もう無理だ、1回死んでおけ」


「うえぇぇぇ」



 結局2人は2回失敗して3度目のトライだ。

 隼人さんが無言のままクエストの建物の中を走り抜ける。



「よし、そこの扉だ!ぶつかれば開く」


「閉めろ、すぐ閉めろ、そう。柱の後ろの床だ。その前でゾンビを」


「開いたぞ!サモンは降りてからだ」


「よし!行け!BB!突っ込め!倒せ!」


「やったぜ!」


「おめ!」

「おめでとうございます」

「おめでとう」


「ふぅぅぅ、ありがとう」


「次はマルクだな」



 という訳でマルクもなんとか無事にクリア出来た。


 いや、本当にこのゲーム、ウィズには鬼畜対応だよな。




-------------

※『BB』サモンの種族名。バグベアの略称で、ゲーム内では「BB(ビービー)」と呼ばれていた。

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