第85話 袖擦り合うも、何とかお願い

 ステータスが発現した事で増えた画期的な事、それは『アイテムボックス』、そしてスマホを必要としない『念話やメール』、あと、それほど画期的ではないが『マップ』?……マップはどうでもいいか。


 あ、あと『フレンド登録』もある。俺はタウさんらと血盟が違うのでフレンド登録は有難い。

 ステータスが表示されて真っ先に行ったのがお互いのフレンド登録だった。これで(あの難しい)スマホ要らずだな。まぁ何かを調べる時はスマホは役に立つ。電波が繋がればだが。


 まっさらだった俺のフレンド一覧。まずそこに異世界戻り組が、そして今回はその家族がズラリと並んだ。

 えっ?フレンドじゃない?いいんだよっ!友達の友達(家族)は皆友達なんだよ!



 家族は皆、本名でゲームをしてもらっている。ゲームキャラを作る時にタウさんが『本名』でと指定した。確かにゲームでも本名だとわかりやすくて助かるな。



「父さん? どうしたの?」



 俺が独り妄想でぶつぶつ言ってたのをマルクに聞かれてしまったか?慌ててテキトーな言い訳を口にした。



「フレンド欄が増えたなーとさ、マルクも友達増えただろ?」


「うん! 僕ね、毎朝みんなにおはよーメール送ってる」



 な、何だと!アレは俺だけにではなかったのかっ!お父さんちょっと嫉妬。



「あ、父さんにはね、おはよーの後に元気?も付けてる!」



 そ、そっか。ふふっ。そっかそっか。

 マルクと食堂に向かう。おっ?今日のお供はエンカ(ドーベルマン)か。その背中にナリーが乗っている。イッヌの背中に乗るヌコ。よく落ちないな。




 ステータス表示でアイテムボックスが使用出来る事、これは最大の利点だ。

 現在この洞窟拠点では17人がアイテムボックス持ちになった。物資の収集に物凄く活躍してくれる。


 外は火山灰が積もっているので、俺が過去に行った場所へ皆をエリアテレポートで運び、全員で物資集めをしている。


 タウさんらが確認した地図(紙)で、その近辺に別の店がある場合は、皆が収集作業をしている間に俺は新しい場所へブックマークを作る為に移動する。勿論ひとりではない。概ねの目安を付けた紙の地図を持ったミレさんと一緒だ。



 タウさんとゆうごは相変わらず色々な謎について、定期的に連絡で考察を続けているようだ。俺はそっち方面(頭を使う方面)は手伝えないので、ひたすら身体を使うほうで頑張る。


 そう、ステータスが表示されたと言っても今回表示されたメンバーの『スキル』はブランクなのだ。


 例えば、俺たち異世界戻り組はステータス画面に、


 カオ

 39

 WIZ

 魔法


と表示される。

 WIZが『職』、魔法が『スキル』だろう。正確には俺の場合セカンドキャラ、サードキャラと謎の四番目まであるのだが、今は省く。


 だが、今回のメンバー(マルク除く)には、ゲームで選択したELF(エルフ)やKN(ナイト)が『職』の欄には確かに記載されているのに、ゲーム内のスキルは空欄のままだったのだ。


 リアルステータスでスキルがブランクという事は、リアルで駆使できる技や特技がない、という事だろう。


 それはゲーム内でのレベルの問題なのか、

 リアルでのスキル習得は無理なのか、

 それとも今回の『ステータス表示』のようにいつかは現れるのもなのか、と、タウさんらは悩んでいるようだ。


 俺は難しい事は考えん。今出来る事があるなら、今はそれでいい。アイテムボックスがあるだけで今までより安全性は格段に上がったからな。


 アイテムボックスは大事なものをしまえるだけでなく、スクロールやポーションを入れて置けるのだ。勿論水や食糧もだ。

 この災害時にこんな便利な機能は他にないだろう。絆創膏も入れ歯洗浄剤もだぞ?あ、俺は今のところ入れ歯ではい。



 タウさんは今後もゆうごと連絡を取り合いながら色々な謎の解明に取り組んでいくようだ。


 もうひとつの謎は、ここ茨城のネットの繋がりの良さだ。

 ネット通信の良さは俺らの異世界戻りとは無関係だろう。先日見つける事が出来なかった地下シェルター、恐らくそこに巨大サーバーとか何かがあるはずと、これはミレさん談だ。


 システムとかの話になるともうおじさんにはさっぱりさ。だが繋がるならそれが繋がるうちに利用しない手はないと、ミレさんらが話していた。

 ミレさんがどっかで取ってきたパソコンのおかげで俺らはゲームを出来るわけだ。


 凄いぞ、ミレさん。俺はゴミばかり拾ってたのにミレさんはちゃんと役立つ物を収集していたのだ。


 そこまで考えて、アイテムボックスの中の大量のゴミを思い出した。タウさんからは勝手に捨てないように言われている。

 捨てないけどさぁ、ゴミだらけのアイテムボックスが気持ち悪い。

 まぁ、見なければいいか。



 俺は最近収納鞄を首から下げている。(翔太から返してもらったやつだ)最低限の物はそれに入れている。

 こっちのが容量が少なくて出しやすい(見つけやすい)からな。


 バナナとかパンとかスクロールとかポーションとか。うん。

 時々タウさんが確認したいと言うので、面倒くさいから全員の名前をバッグに書き込んだ。誰でも使える。

 バッグが小さくて名前を書くのが大変だった。極細ペンを使った。



 タウさんは洞窟拠点に居る避難者にもゲームログインを考えているようで、パソコン専用の大部屋を洞窟内に新築した。ミレさんは大量のパソコン設置作業に大忙しだ。


「丸の内にパソコンを盗りに行くか…、ブックマークしてあるしな」



 そう言って消えたミレさんは、初心者に使いやすいパソコンや他にも色々と持って帰ってきたようだった。


 それに伴いカンさんも忙しそうだ。Wi-Fiに繋げる何かを設置していた。


 勉強部屋では急遽オンラインゲームの説明会が開催された。しかし高齢者の参加は少なかった。スマホが苦手な年代がオンラインゲームに興味を示さなくても仕方がない。


 だが俺は参加した。

 勿論、説明するほうではなく説明を受ける側だ。何しろ10年ぶりのゲームなので俺がやってた頃とだいぶ変わっていたのだ。

 マルクとふたりで参加している。いや、翔太しょうた憲鷹けんよう真琴まこともいるから5人か。


 他にも初心者な大人はいたはずだが受けないのか?



「うちはー、私が教えてあげてるー」



 そうか、アネ一家はアネが先生で自宅(洞窟内)で個別指導か。



「美穂さん達もタウさんに?」


「いいえ、私らは自分で習得してます」

「おとん、忙しそうだもんね」



 なるほど、そうだな。

 ミレさんとこの芽依さんも自分の知識でガンガンとやってそうだ。たまにゲーム内で見かけるが、すごい速さで猪を蹴散らしながら狩場で走ってるな。


 タウさんは盟主なので常時接続でログイン状態にしておいてるそうだ。

 マルクら子供組はレベル上げを頑張っている。


 俺は……うぅむ、俺のような中途半端なレベルが一番だるいんだよなぁ。


 始めたばかりのやつらはレベルも上がりやすいから楽しいだろう。

 高レベルのミレさんらもそれなりの狩場に行ける。


 だが、俺は……………。

 はぁぁ。10年前にゲームをやめたのもこれが理由だったかもしれんな。レベルあげの限界。単騎の厳しさ。そしてWIZのヘナチョコさ。



「何が現実とリンクしているかわかりません。出来るだけ時間があればログインしてください」



 そうタウさんに言われたのでログインはしている。

 昔やってた材料集めで矢や料理を作っても、こちらのアイテムボックスには反映しない。

 ブランクスクロールを作っても、スクロール魔法を詰めてもこちらの世界には持ち込めない。



「カオるん? 初心者こども達のフォローをお願いします」



 タウさんに言われてようやくゲーム内での俺のやれる事が出来た。

 うん、マルク達を応援しよう



 ちなみにゲームでそれぞれのキャラはいい感じにバラけたな。申し合わせたわけでないのにバランスが良くないか?



【ナイト】前衛、物理攻撃力

 アネッサ、清華(アネの姉)、美咲(タウ次女)


【エルフ火属性】前衛、素早さと攻撃力

 タウロ、美穂(タウ長女)、芽依(ミレ妹)


【エルフ土属性】後衛、防御力

 カンタ、柊一郎(アネ父)、希和(アネ母)


【エルフ水属性】後衛、素早さと精霊魔法

 翔太(カン息子)、真琴(ミレ姪)、北海太郎


【ダークエルフ】前衛、素早さと物理攻撃力

 ミレイユ、ゆうご、有希恵(タウ妻)


【ウィザード】後衛、補助魔法、攻撃魔法

 カオ、マルク、北野大地、隼人(アネ兄)




「あれっ? 真琴は叔父さん(ミレさん)と同じDEにしてなかったか?」


「ああ、変えたの。叔父さんと同じもカッコよかったけど、何かあった時に叔父さんの役に立つ水エルフにしたの」


「僕もすぐ変えたんだ。土エルフもカッコいいけど同じエルフでも父さんを陰で支えるように属性を水にした。今はゲーム内でしかスキル使えないけどもしかしたら現実で使えるようになるかもでしょう?ステータスだって最初は出てなかったのに出るようになったもんな」


「そうよね? その時に同じスキルより別なの使えた方がいいよね?」


「え、僕…………」



 マルクが泣きそうな顔で俺を見る。しかしギュッと目を瞑った。



「僕、僕も父さん助けたいけど父さんと同じ魔法使いになるのずっと夢だった。だからだから変えたくない。父さん助けたいけど変えたくない……どうしよう……」



 マルクや……。(涙)



「大丈夫ですよ、マルク君。お父さんと同じ魔法使いになっても十分カオるんを助けられますよ」


「そうだな。まずマップを読めるしなw」


「地図見れますから」


「迷子にならないWIZって必要だよね」



 あの?ミレさん、カンさん、アネさんや?酷くないか?



 タウ家は全員が前衛。妻も娘も自分から打って出る性格か。攻撃は最大の防御ってか。


 カン家は後衛。父と同じ職を選ぼうとしたが、水属性はウィズに次ぐ魔法(精霊魔法であるが)の使い手だったはず、攻撃力は高くないが、もしも現実に反映する事があるとしたらかなり良い職だと話す。


 ミレ家は妹は前衛でやる気バリバリ、その娘は後衛か。バランスの良い親子だな。


 アネ家は姉妹で前衛ナイト、両親は揃って防御の土、兄はアネの強い勧めでウィズにか。


 ゆうごの血盟ペナ中の友人らもウィズか水エルフを選択したらしい。あちらは現実が大変なんだろうな。早く迎えにいってやりたい。



 今のところゲームと現実の関係性は判明していないが、ゲームにより現実にもステータスが現れ、職業も記載されている。

 何かしらの紐付けは起こっているはず。


 LAFのサーバーが生きている今のうちに、上げられるところまでレベルを上げる。


 ゲーム上でだが各職のスキルや魔法も出来るだけ取得すべきとタウさんから指示された。

 レベル上げと同時にスキルの取得もお互い協力し合って行うようにと。


 因みに『スキルの取得』は、必要レベルに達すると受けられるクエストを完了するとスキルが取得出来る。ウィズの魔法書もクエストで入手するものがあったな。


 思い出すと、鬼のようなクエストが多かったな。

 ゲーム内の特定のNPCをクリックすると発生するのだが、俺はNPCが見つからずに森を1時間以上彷徨ったのだ。


 ようやく見つけて発生したクエストが、『どこそこの森の誰(NPC)に◯◯を届けてくれ。急ぎなので20分以内だ』と言われた。

 時間制限有りのクエストぉぃぃ!絶対無理なやつ。


 NPCが見つからず森の中を走っているうちにモンスタートレインが発生。モンスターを倒す時間が無いので振り切ろうと逃げているうちにドンドンとモンスターが行列になっていく。最早クエストどころではない。


 ナイトや火エルフなら一撃で倒せる程度のモンスターでも、ウィズには厳しいのだ。そしてモンスタートレインを引き連れて森を走っていると、同じようにトレインになってるウィズとかち合う。


 倍になったモンスターを連れてウィズ2名が一緒に走る。森の中に倒れている(死んでいる)ウィズが居ても、助けられない。復活スクロールは持っているが使う暇がない。止まったら死ぬ。本当にLAFはウィズに厳しいゲームだよな。


 …………マルク、大丈夫かな。クエストは絶対手伝うからな!




 しかし茨城の通信が割と繋がりやすいと言ってもゲームは時々切れたりもした。シェルターがあるとしたら何とか連絡を取り、ゲームの環境を整えたいそうだ。



 俺の勝手なイメージなんだが、学園都市の地下シェルターは物凄いコンピューターとかありそうだ。それとか通信衛星?わからんけどそんな機器とかもありそうだ。

 シェルターに交渉してネットを使わせて貰いたい。


 とは言え連絡先がわからないのでネット掲示板のあちらこちらに書き込み、向こうからの接触を待っている状態だそうだ。

 その書き込みに『異世界戻り』を軽く匂わせる。その餌でシェルターが釣れるかどうか。




 そんなある日、自衛隊員という男から接触があった。


 何と、シェルターに案内をすると言う。

 釣れた?



 まずタウさんとミレさんのふたりで、先日ブックマークした場所のすぐ近くへ向かうそうだ。



 学園都市の地下に巨大なシェルター(があるかどうかは知らんが)、

その一部(中までは見せてもらえないだろう)に案内してもらえるそうだ。


 罠じゃないよな?大丈夫だよな?





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【作者からのお詫び】

すみません、先にお詫びをしておきます。

この先、自衛隊の話がでてまいりますが、『自衛隊』に関して全くの素人でございます。

上部うわべだけの知識とも言えない状態で書いてます。(軽く調べましたが、うぅぅ、難しい(;ω;)……)


本職の方が読まれたら「気持ち悪っ」となってしまうかもしれません。

申し訳ございません。


そこで、アレを出動させていただきます。


『フィクション〜〜〜(>人<;)』


『フィクション』印籠を出させていただきました。

うん、フィクションだからぁ?

しかたないね?

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