晴れた空には、ガーデニングを。
図書館の扉を開け、廊下を歩いている最中……
「……あ、コールが入った」
先に歩いていた私に追い抜き、先導していたお兄様が立ち止まった。
「コール?私はしてないけど……」
お兄様が首に掛けている
回り込んで色を確認してみると……
「まぁ……お姉様だよね……」
宝石は、淡い紫色に光っていた。
「珍しいですね。ルッカ様が僕を呼ぶなんて」
実際、夜のタイミングならともかく、お昼時にお兄様を呼ぶなんて滅多に無いのに。
せっかく一緒に外に出ることが出来ると思ったのに、どうしてここまでタイミングが悪いのだろうか。
『未来を観測』できると自称するなら、私側の事情も
「というわけで、申し訳無いですが一人でガーデニングしてもらってもよろしいですか?フィリア様」
当然だが、お兄様は執事と言う立場上、屋敷の主たるお姉様会わなければいけない事は理解している。
だが、少しだけ我儘になりたい。
「……行っちゃうの?」
上目遣いで、ダメもとで
空さんが「無理を通したい時に使える武器だ」と教えてくれた方法だが……
「ん……んぅ」
「気持ちは分かりますが……仕事なので、すみません」
目尻を下げて、優しく撫で返されてしまった。
……逆にカウンターを喰らう羽目になってるじゃないか
こんな悲しくて、優しい顔でそんなことを言われたら、これ以上の引き留めは私の良心を傷つける行為になってしまう。
「……うん、
「いえいえ。むしろそこまで想っていただけて恐縮ですよ」
私は、彼の進路から右に一歩動いた。
「手短に終わらせますから」
その行動を確認した後、彼はそう言って廊下の先を歩いていった。
……面倒くさいと思われちゃったかな。
玄関の扉を開け、二段の階段を降りて、右側に七メートルほど歩いた先。
縦に五歩、横十歩の紫や黄色の花の咲く空間が、現状の私のテリトリーだ。
いつかは、屋敷の周り全てに花を植えたいな。
踏みなれた、草のクッションを踏みしめながら、私は庭の近くにある百葉箱を開ける。
そこには雨量計とノート。そして、魔法陣が刻印された紙が数枚入っていた。
さて、今日も庭の手入れをしよう。
意気込んでみたはいいが……そういえば、お兄様と共同作業でガーデニングをしていたので、今日は初めての一人作業だ。
少し緊張するが、まぁ、やり方自体は頭の中に入っているから大丈夫だろう。
えっと……昨日の夜は、雨が降っていないようだ。雨量計の中に雨は入っていない。
ノートを開いて、中に入っている時計を確認し、データを書き込んだ。
普段は、お兄様がデータを書き込んでいるけど……すごく細かい。
降水量と、湿度などのデータから、水分量だけじゃなく、入れないといけない肥料の量や配分まで細かく記載されている……
しかも、ご丁寧に計算書をノートの最初に書いてあるから、二、三分あればすぐに作業に入れそうだ。
普段はのんびりとしてて、風景をぼーっと見ていたりするのに、私関連の事は物凄く几帳面にやってくれている。
ちょっとくらい公私の公にも、隙を見てみたいものだと思ったけど……そういえば、泣かされるレベルの事はたまに見せてたな……
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