『箱庭神話』注釈無し版

 この世は夢を見た。過去、現在、未来を。この世は彩った。光、影の境界を。


 その狭間で混沌は生まれた。過去、現在、未来の子たる混沌は、光の中の影、影の中の光を、境界の中で覗き、その揺らぎを愉しんだ。


 だが、混沌の愉悦は、過去から現在へ、未来へと夢が進むたびに薄れていった。この世に一が生まれ、全へと近づいていき、それをとせんとする黄衣が、『混沌』を『神』へと定義したからだ。


 この世が未来へ歩を進め、『混沌』が名前を得始めた時、死を認識し、恐怖した混沌は、『既知』に溢れたこの世の中に、『未知』という箱を作り出し、箱の中に神を閉じ込め、『混沌』を『既知』へと変える罪人の子を、神殺しの道具、混沌の再来への儀式とした。


 この罪人こそが、『人間』であり、『未知の箱』が『箱庭』である。


 ──箱庭神話、第一節



 注 

 この神たちは、元ネタが存在しますが、その神と似て非なるものだという認識で読むことを推奨します。

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