余談

「八メートル」

 ヴン

「……反省してる?」

「……本当にすみませんでした」

「キミ、自分が思ってる以上にフィルちゃんに気に入られてるって自覚してね?」

「……はい」

「八メートル四十」

 ヴン

「まぁ、土下座で許してくれてはいそうだし、良かったんじゃない?」

「だと、いいですけど……はぁ……お嬢様に心の傷を負わせちゃったかも……」

「……キミが変に意識してる方が傷つくよ、あの子の場合」

「……いつもありがとうございます」

「七メートル八十」

ヴン

「でも、キミが手本を見せたおかげで、フィルちゃん。錬成魔術への意識は確実に変わったよ」

「そうですか?」

「うん。だって、目の周りは赤いけど、確実に的の方を見るようになったもん」

「確かに、そうですね」

「八メートル九十」

 ヴン

「まぁ、私はやり投げは専門外だからよくわかんないけどねー」

「ええ、僕もです」

「へー意外。キミ、何でも使える器用なイメージだけど」

「苦手を克服しているだけですよ」

「……八メートル七十五」

ヴン

「……じゃあ、一言質問いい?」

「知っていることなら」

「そっか。と言っても大したことじゃないけどね」

「……何となく分かります」

「……九メートル」

ヴン

「槍ってさー……こんなに真っ直ぐ飛ぶものだっけ?」

「……放物線描くものですね」

「私にはさー。光の軌跡が真っ直ぐに見えるんだよねー。

「奇遇ですね。僕もです」

「九メートル三十」

ヴン

「フィルちゃんの投擲ってさー。光る槍の軌跡が消えた後に音が鳴るよねー」

「そうですね」

「……音、遅れて聞こえるねー」

「……そうですね」

「九メートル八十五」

 ヴン

「この大きさで作った錬成魔術の槍さー。キミはどこまで飛ばせそう?」

「……僕の出力なら、二メートルくらいですかね」

「私は四メートルかなぁ……」

「あ、当たった」

「当たったね」

 ヴガンッ!

「喜んでるフィルちゃん、可愛いねぇ」

「そうですねー」

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