婚約相手との嫌な時間 ※アルフレッド王子視点

 婚約相手になったアデーレは優秀である。そのせいで俺も比べられる。それが嫌。面倒だった。ちゃんと努力しているのに、認めてもらえない。それだけ、彼女が優秀だから。彼女の実力が高いから。


 そのせいで、アデーレとの定期的な顔合わせの時にはギクシャクしてしまう。何の緊張もせず、当然というような顔で座っている彼女の顔が不愉快だった。


「……」

「……」


 当然、会話も弾まない。無駄な時間が過ぎていく。ちょっとぐらい気を遣ってくれてもいいだろうに、アデーレはそんな素振りを見せない。お前が優秀なせいで、俺は嫌な思いをしているのに。


 自分からは言えないことを察してほしい。おそらくアデーレは、俺に対する愛情はないんだろう。彼女から愛されている実感がない。他に、好きな男でもいるのか。


 そういえば最近、弟と仲良くしているらしい。俺に対する当てつけだろうか。


 そんなに俺との婚約が嫌なら、親に言って断ってほしい。俺の口からは、言えないだろう。そういうことも察してほしい。優秀だが、人の気持ちを探るのは苦手みたいだな。


 こんな思いやりのない女性と結婚するなんて、嫌だな。どうにかできないか。




「また、ダンジョンに行ったそうだな」


 アデーレがダンジョンに行ったことは、すぐ耳に入ってきた。何度も止めているのに、彼女は聞かない。なぜあんな危険な場所に行くのか、やっぱり理解できない。


 しかも、弟のブレットまで連れて行ったそうだ。あんな場所にどうして。


「はい」

「勝手なことをするなよ」

「申し訳ありません」

「俺たちを巻き込まないでくれ」

「気を付けます」


 一応謝ってはいるが、反省していないだろう。これは、いつか大きな事故を起こす可能性があるな。どうせ止めることはできないんだし、もう放置しておこうかな。


 事故が起きたら、アデーレとの婚約を解消できるかもしれないな。これは、事故が起きることを期待した方がいいかも。


「……」

「……」


 再び沈黙の時間が流れる。俺と彼女の共通の話題は、ダンジョンに関することだけなのか。嫌な共通点だな。




「それでは、アルフレッド様。本日は失礼します」

「ああ」


 時間になったので、アデーレが部屋から出ていく。やっと終わった。とても退屈で無駄な時間だった。


 これから先も彼女と一緒だと思うと憂鬱になる。事件が起きて婚約が解消になるといいんだけど、それだけだと期待は薄いか。もう一つ、婚約を解消できるような理由を探しておくべきか。


 アデーレに何か問題がないか、探らせてみるか。問題があれば、それを口実に婚約を解消しよう。

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