第4章 足を洗って生きる

第21話 正当防衛魔道具

Side:フロー

 路地で、浮浪児達に殴る蹴るされている浮浪児がいる。

 あれは鈍足じゃないか。


「やめろ!」


 俺は警告を発した。


「魔王か」

「くっ、あいつはやばい」

「逃げろ」


 浮浪児達は逃げ出した。


「鈍足、大丈夫か。怪我はないか」

「平気、ちょっと痛いだけ」


「なんでまたタコ殴りに遭ってたんだ?」

「ベーゴマで稼いだ金を狙われたんだ」


「そうか。災難だな。ベーゴマが作れるならアイアンブリットができるはずだ」

「鉄を生み出すのは良いけど何で動かすの。風だって鉄は動かない」


 実は俺も火球かなぜ飛ぶのか分かってない。

 風だとすると、空気を動かしているってことだよな。

 念力か。

 ああそうか。

 流れている空気を召喚して使っているのか。

 何だ。

 簡単だ。


 温度を召喚できるってことは、重力や磁力もいけるな。

 だけど、鈍足にどう説明しよう。

 重力と磁力の説明は難しい。


「火球は……やりたくなさそうだな」


 火球って言葉が出た途端、鈍足は顔をしかめた。

 嫌なのだと分かった。


「火事で死んだ知り合いがいて。火は嫌なんだ」

「そうか。火は確かに物騒だ。呪符を作って売ってやるよ。石礫の魔法だ」

「石なら何度か投げ合ったことがあるから平気」


 ぜんぜん平気じゃないが、昔の子供はこんな感じだったのかな。

 かなり危ない。

 無制限は駄目だな。

 強盗行為を子供の頃から働く奴は駄目だ。

 痛い目にあっても仕方ない。

 もしそれで死んだとしても自業自得。

 ってわけにもいかないよな。

 前世の意識が邪魔をする。


 軽石にするか。

 うん、加速が十分ならそれなりの威力を発揮する。

 よほど運が悪くない限り死なないだろう。


 鈍足と一緒に家に帰り、プログラム魔法を作り始める。


#include <magic.h>

extern char *enemy_real_name(void);

extern char *user_real_name(void);

extern int lie_detector(char *real_name,char *question);

extern MAGIC *pumice_make(int size_meter);

extern void gravitational_acceleration(MAGIC *mp,char *real_name,int range_meters)

void main(void)

{

 char *ename,*uname;

 MAGIC *mp;

 ename=enemy_real_name(); /*敵の真名を取得*/

 uname=user_real_name(); /*使用者の真名を取得*/

 if(lie_detector(uname,"善人か?")==1){ /*善人なら魔法行使*/

  if(lie_detector(uname,"正当防衛か?")==1){ /*正当防衛なら魔法行使*/

   mp=pumice_make(3); /*3センチの軽石を形成*/

   gravitational_acceleration(mp,ename,100); /*軽石を敵に向かって100メートル加速*/

  }

 }

}


 こんなプログラム魔法で良いな。

 自分は善人で正当防衛だと思っていれば使える。

 この問いは他の攻撃呪符にも使えそうだ。

 これなら戦争に使われることはないだろう。


 呪符を100枚ほど鈍足に持たせてやった。


 色々と攻撃呪符を作って頭が疲れたので気分転換に散歩する。

 鈍足にまた会った。


 戦いには勝ったらしいが、まだ納得いかないようだ。

 俺も子供同士で投石というのはどうかと思う。

 拘束が良いというので、攻撃のプログラムを以下に差し替える。


   mp=stone_rope_make(200); /*200センチの石のロープを形成*/

   bind(mp,ename); /*石のロープで敵を拘束*/


 こんな感じで良いだろう。

 嘘判別も欲しいというので、作る。


#include <magic.h>

extern int lie_detector(char *real_name,char *question);

extern char *enemy_real_name(void);

int main(int argc,char *argv[])

{

 char *ename;

 ename=enemy_real_name(); /*敵の真名を取得*/

 return(lie_detector(uname,argv[1]); /*嘘判別して結果を返す*/

}


 ちなみに嘘判別の魔法イメージは、呼吸、血圧脈拍、発汗で調べる。

 それなりに使えるはずだ。


Side:鈍足


 一人でいる所を狙われた。

 くそっ、同じ浮浪児だろう。

 フローにまた助けられた。

 そして、呪符を貰った。


 帰り道にまた見つかる。


「今度は切り札があるぞ」


「魔王はいない。恐れるな」

「コテンパンだ」

「オーク肉の串焼きを腹いっぱい食うぞ」


「警告したからな」


 呪符を起動する。

 灰色の石が現れ、敵の浮浪児、目掛けて飛んで行く。


「いて。こいつ飛び道具持っているぞ」

「投石で対抗するぞ」


 遠距離戦になり、そして勝った。

 負けたら有り金盗られるところだったな。

 敵浮浪児達は泣きながら逃げ帰った。


 金を安全な場所に隠し、歩いていると散歩しているフロー会った。


「どうだった」

「勝てたけど楽しくない。悪いことをした気分だ」

「優しいんだな。拘束にするか。石のロープで縛るのなら、それほど嫌じゃないだろ」

「うん」


 石のロープの拘束呪符を作ってもらった。


 次の日、また奴らに出会った。

 しつこい奴だな。

 拘束呪符を起動する。


「くそっ、抜け出られない」

「こっちも無理だ」

「俺もだ」


「もう、俺を襲わないと反省するか」


 質問する前に嘘判別呪符を使う。


「するよ」

「俺も」

「同じく」


 くそっ、嘘だと出た。

 馬鹿にしやがって。


「嘘ついたな」


 浣腸の刑に処す。

 喰らえ。


「あぎゃあ」

「おい、やめろ。あぎゃゃゃあ」

「お願い。おふっ、ふほぅ」


「懲りたか。もう一度聞く。俺を襲わないと反省するか」


「しないよ」

「俺も」

「分かった」


 今度は本当みたいだ。

 手間を掛けさせる。

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