聖女と追っかけ

 聖女の追っかけを連れて彼女が幽閉されている部屋へとやってくる。


 聖女ミリアは特に何かするわけでもなく、日々部屋の中で祈っている、という話は聞いていたのだが中に入ってみるとまさにその通りだった。



「テオドール様、どうされましたか? あれっ、そちらの方は?」

「お前の追っかけらしい。サインでも書いてやったらどうだ?」

「では書くものを借りてもよろしいでしょうか?」

「すぐに準備させる」



 なぜかこの幼女は聖女の姿を見た瞬間に呆然としていた。



「……どうして?」

「なにがでしょうか?」

「どうしてそれだけちからがありながら、ひとのためにつかえなかったのですか?」

「そのことですか。私は何も知らなかっただけですよ」

「それがどれだけのひとをこまらせたのかわかってますか? こくおうさまもむねをいたませていましたよ」

「……なるほど」



 ミリアは複雑な表情を見せる。



「アルムガルド国王は本当に人のために動いているのでしょうか?」

「も、もちろんですよ!? だって……」



 幼女は口を詰まらせる。


 確かに国王が正しいことをしているという証拠は名に一つもない。

 むしろあの国王が民のために動くとも思えない。



「そ、それじゃあ、せいじょさまはただしいことをしてたのですか?」

「いえ、私も国王様や仲間の人たちが言ってることが正しいと思ってぜんぜん自分で考えられてなかったのですよ。今のあなたみたいに」

「……えっ?」

「自分で判断出来るようになってくださいね。私はそれができませんでしたから」



 ミリアはそれだけいうと再び窓から外に向けて祈り始めていたのだった。



 ……聖女もずいぶん反省したみたいだな。これなら解放して様子見しても良いかもしれないな。



 ただでさえ人手不足なのにこんなところでずっと聖女を監視するのに兵を使いたくない、という本音もあった。


 幼女が部屋から出ようとする。



「もういいのか?」

「……はい。ありがとうございます」



 幼女が丁寧に頭を下げてくる。

 この辺りの礼儀正しさを聖女たちには見習って欲しい。

 子供でも出来るのだから……。



「それでこれからどうするんだ? どこに家があるんだ?」

「えっと、わたし……」



 幼女は何か口にしにくいことがあるのか口をつぐんでいた。



「どうかしたのか?」

「あの……、わたしをここにおいてもらえませんか? もうすこしじぶんのめで、じぶんのあしでいろいろとみてみたいのです」



 妙にヤル気になっている幼女。

 もしかすると家に帰りにくい何かがあるのかもしれない。



「わかったよ。俺の館に住むといい。それなら誰かしらの人がいるからな。街を見て回るときには一人で行くんじゃなくて誰かに付いてきてもらうと良い」

「はい、ありがとうございます」



 さて、俺の方はこの幼女がどこから来たのか、一応調べておくかな。




◇◆◇◆◇◆




 幼女聖女は改めてリンガイア王国にある領地内を見て回る。

 魔族に支配されている、という話だったはずが案外魔族の姿は見ない。



 様々な獣人たちが人と仲良く助け合って暮らしている。


 まさに平和そのもの。

 本来目指すべき世界がそこにあった。


 もし魔族がこれを作り上げているのだとしても、平和のためならばしかたないのではないだろうか?


 そもそもこんな平和を作れる人が侵攻なんて手段をとること自体が不思議である。



「なにがおこってるんだろう……?」

「わからないことがあったら聞いてくださいね」



 今日一緒に付いてきてくれている女性が優しげに言ってくれる。



「ど、どうしてここはこんなにへいわなんですか?」

「それはテオドール様のおかげですね」

「てお……?」

「先ほどあなたを聖女様のところに案内してくれた人ですよ」



 確か要注意人物として旅に出る前に聞いていた気がする。

 なんとかして王国に連れて帰るようにって。


 でもこんなに慕われている人を無理やり連れて行こうとしたらどうなるだろう?


 ここにいる人たちが困るような気がする。



「そっか……」



 まだ見て回らないとわからないけどここはそう思わせるだけの何かがあったのだ。





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 タイトル

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 URL

https://kakuyomu.jp/works/16818093079155755838


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タイトル

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URL

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