幼女聖女の旅

 幼女聖女は周囲の状況に押されながらリンガイア王国を目指していた。


 道中の村々が聖女の名前を聞いた瞬間に怪訝そうな表情を浮かべ、家に引きこもってしまったところを見ると元聖女がどれだけ酷いことをしていたのかよくわかる。



「いったいどんなひどいことをしたのでしょうか?」



 幼女聖女はまだ勇者教育を受けていない。

 そのおかげで他人の家には必ず入ってタンスから何から何まで調べ尽くしてものを奪っていく、なんて非人道的な行いをすることが正しいなんて思っていなかった。



「ここまで嫌われる事なんて想像も出来ないですね」

「すこしでもみなさんのためになにかできないでしょうか?」

「しかし我々も魔族討伐のためにリンガイア王国に向かっている身です。援助できるほど余裕がないのですよ」

「それでもこまっているひとたちをたすけることがわたしたちのしごとのはずですよ。わたしのたべるぶんがへってもかまいませんのでそのぶんをくばってください」

「……かしこまりました」



 良い返事がもらえたことで安心しきった幼女聖女。

 まだまだ他人を信じすぎるきらいがあるようだ。

 幼女聖女の好意は腐った兵士たちによって村人に渡されることなく、私腹を肥やすのに使われることなる。




◇◇◇◇◇◇




 そんな村での出来事が数回あった。

 幼女聖女はついにほとんど何も食べるものを与えられなくなり、その辺に生えている草を食べて飢えをしのいでいた。


 一方幼女聖女の分の飯を奪い取っていた兵士たちは毎回腹一杯食べられて満足そうである。


 そんな状態でようやくリンガイア王国にたどり着く。

 ただあまりにも立派な城壁を見て兵士たちは絶望していた。


 当然であろう。

 幼女聖女が連れてきたのは精々数十人。


 話し合いをするつもりで来ているのだから当然ながら相手を威圧しすぎない人数で来ていた。



「どうしますか、聖女様? この人数じゃあの城門は突破できないかと……」

「われわれははなしあいにきているのです。とっぱしなくてもだいじょうぶです」



 ふらつく足取り。

 空腹過ぎて意識が朦朧とする。


 そんな状態で城門のところへ向かっていく聖女。


 もちろん他の兵たちも護衛としてしっかり、城門から遠い位置に陣を作っていた。



「あ、あの、す、すみません……」

「んっ? どうかしたのかい?」



 門兵に声をかける幼女聖女。

 ただそのまま意識を失ってしまうのだった。




◇◆◇◆◇◆




「こいつをどうすればいいんだ?」



 リンガイア国王と話をして帰ってくると俺の館に幼女が寝かされていた。


 一体どういう状況なのだろうか?


 理解が追いつかずにただただ困惑していた。



「どうやらお腹が空いていたみたいなんですよ。でも意識を失ってしまったみたいなので……」

「とりあえず目が覚めたとき用に料理を用意してくれ。あと、こいつが危険なやつって可能性はないんだよな?」

「さすがにこの見た目ですからないと思っています」



 この世界だと見た目は幼女でも実際はかなりの年上とかも存在する。

 王国側からたった一人でやってきた、ということだから状況的に罠を疑わざるを得なかった。


 すると幼女はゆっくりと目を覚ます。



「こ、ここは?」

「ここは俺の館だ。お前が倒れたと聞いてここで保護されたんだ」

「そう……なんですね。ありがとうございます」



 体を起こして頭を下げてくる聖女。

 見た目の年齢を考えるとどう考えても礼儀正しすぎる。


 やはり偽りの年齢とみるべきだろう。

 もちろん鑑定で年齢自体を見てはいるのだが、その鑑定すら誤魔化せるようだ。



「……どうしてこんなところまでやってきたんだ?」

「えっと、それはその……」



 幼女はここで話して良いものか、と迷っている様子だった。

 だから少しでも言いやすいように助け船を出してやることにする。



「もしかして聖女でも探しに来たのか?」

「っ!?」



 明らかに動揺した様子だった。

 腹芸がまるで出来ない様子。


 もしかしたら本当に年齢通りなのかもしれない。



「ど、どうしてそれを?」

「それはここに聖女がいるからだな。襲ってきたから幽閉してある」

「あ、あわせてもらうことはできますか!?」



 もしかして聖女の追っかけとかか?

 とてもじゃないが聖女の暗殺者とかには見えないために俺は承諾することにした。




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【新作を始めました!】

 タイトル

『転生勇者は破滅回避のために黒幕として君臨する』

 URL

https://kakuyomu.jp/works/16818093079155755838


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