シルビリアースの守護者。

猫野 尻尾

第1話:魔法使いルートガルザ。

一話完結。


魔法使いのルードガルザは皇帝つきの由緒ある家系に生まれた。

通常は城勤めで時には皇帝の話相手や相談相手にもなっていた。


そしてシルビリアースの諸国において内乱や争いが起こった時は現地へ

駆けつけて魔法を行使して争いを収めたりした。


そんな彼が特に仲がよかったのが幼馴染のノルンのワルキューレ

「リンデブルグ・シュタールエック」だった。


格式で言えば女神であるリンデのほうが上位だったがお互い幼くして育った

ふたりには上下の隔たりなど関係なかった。


ノルンのワルキューレは五人いて「アルデランス」「ルカルド」「エレンダレル」「ミスランドル」

それにリンデを加えて五人の乙女戦士。


ルートガルザはリンデとは恋人同士ではなかったが日頃から常に交流があった。


そんな仲のよかったリンデだったが、彼女はワルズの西海岸で起きた週末戦争の時、ワルキューレとして敵に倒された味方の兵士の魂をヴァルハラに導くために戦場に

いたのだが、そこで手傷を負った味方の兵士を助けようとしたさい、敵の不意討ちを

食らってワルズの岸壁から海に落ちた。


そしてそのまま行方不明になってしまった。


リンデがワイズの岸壁から敵と一緒に海に落ちるところを見た者がいた。

その後、海の中を捜索したが、リンデは見つからなかった。


なんとしてもリンデを探しに行きたいと思っていた矢先のこと、皇帝が倒れて

急遽崩御されてしまった。


先祖からのしきたりに従って皇帝の魂をヴァルハラへと導くためノルンの

ワルキューレ五人に招集をかけなければならなくなった。


ヴァルハラはグルムヘイルにあり、ワルキューレによって選別された戦士の魂

が集められる場所・・・いわゆる戦いに敗れた戦士の魂が眠る安住の地なのだ。


皇帝の魂を導くためにはワルキューレ五人全員揃わないとできない。


このままリンデが戻らないと、皇帝の魂は暗闇を永遠に彷徨うことになる。

あまり悠長にはしていられなかった。


リンデが行方不明なままってのが、ルートガルザはずっと気になっていた。

だから彼女がもし生きているなら連れ戻したいと思った。


そこでルートガルザは伝承にある、自分の思いを映すことができるという

幻の鏡を求めてエルフが住むアルカングルスの森に入った。


アルカングルスのエルフの長、レナンギルドは人とは一切関わらない堅物

だったが、ルートガルザには以前、命を救われたことがあって彼に恩義を

感じていた。

だからレナンギルドはフェルリンの鏡を快く使わせてくれた。

鏡でリンデの居場所を探したところ、結果リンデは人間界にいることが分かった。


ルートガルザはまず自分の使い魔を人間界に送った。

その後リンデが無事でいることを確かめると自らも人間界へと旅立った。


心配したリンデは人間の男性と幸せに暮らしていた。

皇帝が崩御めされたことをリンデに説明して魂をヴァルハラに導くために、

一時的にでもいいからシルビリアースに帰ってくれるよう彼女を説得した。


リンデと一緒に暮らす人間の男性は、とてもいい人でリンでをシルビリアーズに

連れ帰ることを快く承諾してくれた。


リンデは一時的に帰国して他のワルキューレたちと協力して自分職務を果たした。

無事皇帝の魂を導いたリンデはシルビリアースには残らず、愛しい人のもとに

人間界に帰っていた。

リンデは自分の命を救ってくれた男性、彼氏のもとをもう離れることはできない

んだろうとルートガルザは思った。

リンデが幸せならそれでいい。


結局そのことがきっかけでルートガルザもまた人間界にやって来ることになる。

一度シルビリアースに帰ったルートガルザは自分の彼女、ディースの

ワルキューレ「ヴァーラ・スキャールヴ」を連れて人間界に戻ってきた。


ルートガルザの彼女、ヴァーラのことをおさらいするとリンデがオーディンの

下で働くノルンのワルキューレに対して、ヴァーラは自分の主人を持たず常に

フリーで動いているディースのワルキューレ・・・言わば傭兵のような存在で、

時によって敵にも味方にもなる、縦横無尽なワルキューレだった。


彼女は黒髪で普段はひっつめ三つ編みにしていて、瞳も黒くて、でもって

黒い戦闘服を身にまとった乙女戦士。


破滅と不吉の未来を予言する、人の運命に介入する役割を持つらしい。

凛々しいリンデと違って、色気ムンムンの妖艶なワルキューレだった。


実は、ルートガルザとヴァーラは幼い時、一度会っていてヴァーラがアルデの

暗闇の森でバルクハイド「強大な蛇の怪物」 に追われた時、助けてくれたのが

ルートガルザだったのだ。


偶然通りかかったルートガルザが魔法でバルクハイドを追い払ってくれた。


そのことをルートガルザはちゃんと覚えていて、密かにヴァーラのことを想い

続けていた。

真面目はルートガルザは、どちらかと言うとアウトロー的なヴァーラに自分とは

違う個性、魅力を感じて彼女を好きになったんだろう。


ヴァーラもルートガルザが自分を助けてくれた時からずっと彼のことを慕ってた。

だからルートガルザから想いを告白された時、ヴァーラはふたつ返事で

オッケーした。


そういうわけで、ルートガルザはヴァーラとリンデと人間の男性カップルと一緒に

人間界で生きていくことになった。


人間界で、のんびり好きにやっていたルートガルザだったが、その後、故郷の

シルビリアースの危機を救うため、ワルキューレであるリンデやヴァーラ

とともにシルビリアースを奔走することになって行く。


END.

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