第4話 こんばんは!
翌朝、僕は特攻服を着てコンビニへ行った。琴音は車の中で待っていた。
「おはよう」
「遅いぞ」
「何時から待ってたんや?」
「7時だ」
「そんなに早くから店が開いてるわけないやろ」
「待ちきれなかったんだ、とにかく乗れ」
「おう。失礼します」
僕の挨拶は黒ずくめ2人に無視された。
「無視されたんやけど」
「お前は嫌われているからな」
「なんでやねん」
「私を不良の道に誘い込む男だからだ」
「それなら、俺、居心地悪いやんか」
「私のボディガードに嫌われても実害は無いだろう?」
「それはそうやけど」
「チームの名前も入れような」
「何のチーム?」
「暴走族のだ」
「入るの? やめよう、面倒臭い」
「お前は何というチームに入っていたんだ?」
「どこにも入ってない」
「特攻服は?」
「ファッション」
「じゃあ、2人でチームをつくろう。チーム名は何にする?」
「F」
またビンタされた。
「お前の頭にはそれしかないのか?」
「いや、他にも煩悩はいろいろ」
「もういい、私が名付ける」
「任せる」
「天女(仮)!」
「ええんとちゃうか?」
「お前の特攻服にも天女の刺繍を入れろよ」
「はいはい」
店に着いてから琴音ははしゃいだ。すごく楽しそうだった。
連れてきて良かったと思った。
琴音は黒、赤、ピンク、紫、白の5着を刺繍入りでお買い上げ。
ついでに僕にも白を買ってくれた。
その時、琴音の目がジャンパーに止まった。
「これも定番だろう?」
「そうやな」
「お前は何色を持ってる?」
「黒と金と赤」
「じゃあ、私も同じ色にする」
「ペアルックか?」
「嫌か?」
「嫌ではないんやけど。お揃いがいいのか?」
「ああ、お前とお揃いがいい! 決まりだ! お揃いだ-!」
「めっちゃテンションが上がってるなぁ」
「ところで特攻服の下には何を着るんだ?」
「Tシャツとかでもええけど、サラシとか」
「本当だ、サラシ売ってる。買う!そして巻いてみる」
琴音は店員さんの指導を受けるべく試着室へ。
「どうだ!」
「必要以上に色っぽいな」
琴音は細いのに胸がある。凄く魅力的だ。
「そうか?ダメか?似合ってないか?」
「いや、ダメじゃない、似合ってる、ただ色っぽいだけ」
「ならOK! 帰ろう」
「帰って何をするんだ」
「バイクに乗る」
「誰の?」
「お前の」
「……」
「嫌か?」
「いやOKだ」
その晩、僕等は特攻服を着てバイクで走り回った。
「どうして最初、私を乗せるのをためらったんだ?」
「彼女以外を乗せたことがなかったから」
「そうなのか?」
「そうなんや」
「じゃあ、私はお前の彼女か?」
「ちゃうやろ! お前は俺でいいのか?」
「私はOKだぞ!」
「そうなのか?」
「ああ、お前はどうなんだ?」
「……OKやけど、琴音はいつから俺のことを好きになったんや?」
「最初からだ」
「そうやったんか」
「まあ、いいじゃん」
「わかった」
転校して3日目、僕にお金持ちの彼女が出来た。
次の日から、僕と琴音は恋人であり師弟でもあるという関係になった。
その日は、学校からいったん家に帰りジャンパーに着替えてからコンビニへ行った。琴音は赤い特攻服を着てコンビニで待っていた。
「これからお前のことを何と呼ぼう」
「何回か師匠と呼んだことがあったな」
「そうだったな」
「すぐに“お前”に戻ったけどな」
「やっぱり“お前”と呼ぼう。私のことは」
「F」
またビンタされた
「G?」
「琴音でいい。呼び捨てでいいから胸のことは忘れろ」
「わかった」
「それで今日は何をするんだ?」
「テストの1週間前だ」
「そうだな」
「勉強する。俺の家に来い」
「何故だ? 不良は勉強しないだろう?」
「成績は良いにこしたことないやろ?」
「勉強のできる不良になるのか?」
「そうや。ほな、俺の家においで」
「わかった…」」
僕が特攻服の美人を連れて帰ってきても親は全く動じなかった。流石、俺の親!
「座って」
「うん」
僕は教科書やノートを取り出した。
「練習問題を解こう。わからなかったら聞いてくれ」
僕は黙々と勉強を進めた。が、やがて琴音からの質問攻めにあうようになった。
「わかる問題よりわからない問題の方が多いやんか」
「私は基本的に勉強はしないからな」
「今までのテストとか入試はどうしてたんや?」
「成績なんか、金で買えるんだ」
「問題発言だ。訂正しろ」
「わかった。訂正する。とにかく今までは要領よくやってこれたんだ」
「ほんまかいな」
「私はそれでテストを乗り越えてきた」
「これからちゃんと勉強しよう」
「お前がそういうなら」
「そういえば、俺達が付き合って何日になる?」
「ちょうど1週間だな」
「キスしよう」
僕はまたビンタされた。
「ここはビンタじゃないやろ」
「ムードが無い!」
「じゃあ、部屋を薄暗くする」
「そういうことじゃない」
僕は琴音を抱き締めてキスをした。琴音も抵抗しなかった。少し長めのキスだった。
「琴音」
「何だ?」
「ベッドに入ろうか?」
またビンタされた。
「今のは俺が悪かったな」
「認めるのか?」
「ほな、勉強するで」
テストが終わった。翌週は採点されたテストが帰って来た。まあまあ納得のいく点数だった。
「見ろ!今までで1番高得点だぞ」
「見た。俺が今まで見たことの無い低得点だった」
「そう…良かったな」
「勉強するって楽しいな」
「これからもっと頑張ろう」
「おう!」
だが、僕はそんな琴音を可愛いと思うようになっていた。
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