第3話  こんにちは!

「瞬、起きろ」

「もうちょっと」

「放課後だぞ」

「あれ? 授業は?」

「終わった」

「そうか、じゃあ帰るか」

「帰ろう」


 下校時、不良数人が僕達を待っていた。


「やっと来たか」

「なんや?」

「お前、転校生のくせに粋がってるんじゃねえよ」

「粋がってるか?」

「おう、生意気なんだよ」

「瞬、こういうときは?」

「師匠と呼べ」

「師匠、こういうときは?」

「教室に戻ってもう少し寝る」


 僕は回れ右をして校舎へ移動しようとした。


「待てよ、この女はいいのかよ?」


 振り向くと琴音が捕まっていた。


「しゃあないな」


 僕はさっきから喋ってるリーダー格の男の顔に頭突きをした。転がるリーダー。

 そして背の高い男の襟元と腕を掴んで背負い投げ。ついでにキック。

 背の低い男には上段回し蹴り。


「女を放せ」


琴音を捕まえていた男が琴音を放した。こちらに駆け寄る琴音。


「それでええ。ほな、ついでに」


僕はその男の顔に頭突きをした。


「琴音」

「はい、師匠」

「帰ろう」

「はい」



 僕達は雰囲気の良い喫茶店に入った。


「不良は喫茶店に入るんですか? 師匠」

「不良はコーヒーを愛するんだ」


 僕達はホットコーヒーを注文した。


「さっきはすごかったな」


琴音は興奮していた。


「何が?」

「3年生の4人が相手だったんだぞ」

「そうやな」

「興味ないのか?」

「無い」

「格好良かったぞ」

「琴音が捕まらなかったら無視していた」

「そうか、守ってくれたんだな」

「男は女を守るやろ?」

「ありがとう。嬉しかったぞ」

「どういたしまして。ここのコーヒー美味いなぁ」

「そうだな、ここは奢ろう」

「もしかしてカード?」

「そうだ」

「店員さん、ここクレジットカード使えますか?」

「カードは扱っていません」

「……俺が払う」


「次はどこへ行くんだ?」

「ゲームセンター」

「ゲームセンター?」

「不良はゲームを愛しているんだ」


 僕達はゲームセンターに入った。

 すぐに格闘ゲームを始める。琴音は僕がゲームをするのを眺めていた。

 調子が良くて長時間格闘ゲームをしてしまった。琴音は欠伸をしている。


「退屈させて悪かったな」

「いや、これも立派な不良になるためだから」

「ぬいぐるみでも取ってやろうか?」

「うん」

「どれがいい?」

「これ」

「あ、これなら取れるわ」

「頼む」


 僕は300円でそのぬいぐるみを取った。


「ほら、あげる」

「ありがとう、大切にする」

「いくらでも取ってあげるで」

「じゃあ、次は…」


 5つのぬいぐるみをゲット、店員さんから袋をもらって中にぬいぐるみを詰め込んだ。琴音は想像以上に上機嫌だった。


「そんなに嬉しいか?」

「ああ、嬉しい」

「それなら良かった」

「この後は?」

「一度家に帰って着替えてコンビニに行く」

「じゃあ、着替えてくる」

「また後で。それから、現金も持って来いよ」

「わかった」


 僕達はそれぞれ家路を辿った。



 1時間後、僕と琴音はジャージに着替えてコンビニの前にいた。


「このジャージ、気に入った」

「それは良かった」

「はい、今日の分」


 1万円を差しだされた。


「何これ?」

「授業料」

「ああ、そうか。おおきに」


 僕はありがたくいただいた。


「でも、ボディーガードはいるんやな」


 僕は黒い外車を見ながら言った。


「それは仕方がない」


「あれはどこで売ってるんだ?」

「あれって何?」

「暴走族が着ている服だ」

「特攻服か?」

「多分、それだ。刺繍とか入っている服」

「あんな物がほしいのか?」

「明日、店に連れて行ってくれないか?」

「ええけど」

「店はどこにあるんだ?」

「引っ越したばかりやからわからへん」


 僕はスマホで検索した。


「この住所、わかるか?」

「わかるけど、交通の便が悪い」

「じゃあ、車で行こう」

「誰の車のことだ?」

「あのボディーガードの外車」

「え? って行ってくれるかな」

「琴音の使用人やろ?」

「そうだけど、私が不良になることに両親もボディーガードも反対しているからな」

「何か言われたら“殺すぞ”って言ってれば大丈夫や!」

「わかった、言ってみる」

「特攻服なら、刺繍の絵とか文字とか考えておけよ」

「……イメージがわかない」

「少し待ってろ」


 僕はコンビニに入って一冊の雑誌を買って出た。


「これで勉強しろ」

「うわ、スゴイ!こんな雑誌があるんだ」

「瞬はどんなのを持ってるんだ?」

「“天上天下唯我独尊”が入ってる」

「色は?」

「黒」

「私、紫にしようかな、赤にしようかな」

「金持ちなんやから欲しいの全部買えば?」

「そうだな、金持ちの意味はこういうときに発揮されるんだな」

「そうそう。好きなだけ刺繍して好きなだけ買え」

「明日が楽しみだ-!」


 琴音のテンションが上がって


「今夜は眠れない、待ちきれない」


と言い出した。


「ほな、朝から行こう」

「学校は?」

「サボる」

「私、学校をサボるの初めて!」



 更に琴音のテンションが上がった。







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