第2話 おはようございます!
「どうだー!」
お嬢様が笑顔でコンビニから出て来た。
「似合うだろー!」
「ああ、宇宙一似合ってるで」
「うわ、適当」
「いや、美人は何を着ても似合うって」
「え? 私、美人?」
「自覚なかったのか?かなり綺麗だぞ」
「そうか、それは嬉しい」
お嬢様は美人だった。背も高く格好いい。
「ふふふ、これで私も名実ともに不良だな」
「いや、やっぱり無理があるわ」
「どうして?」
「茶髪の陸上部員という感じやからな」
「何故だ?」
「雰囲気。だって、あんた上品やもん」
「あんたとはなんだ?」
「だって名前知らんし」
「そういえばそうだったな、私は琴音だ」
「俺は瞬。相馬瞬」
「私のことは…」
「琴音」
「ちゃんをつけろ」
「わかったよ、琴音ちゃん。俺のことは…」
「瞬」
「様をつけろ」
「つけるか」
「これだけ世話してやってるのに」
「そうだな、確かに世話にはなった。礼を言う」
「どういたしまして」
「ジャージはゲットしたし……」
「まだ何かあるのか?」
「“通り名”がほしい」
「そんなものがほしいのか」
「瞬は大阪で何と呼ばれていた?」
「ミナミの狂犬」
「それだ!そういう通り名がほしいんだ。何かないか?」
「Eカップ令嬢」
またビンタされた。
「Fだ!」
「それは失礼しました。見くびってしまったようやな」
「もういい、通り名は自分で…」
「狂犬令嬢」
「お、それはいいな。では、暫定的にそれにしよう」
「暫定かいな」
「他にもっと良い通り名に決まるまでだ」
「はいはい」
「今日は久しぶりに沢山話ができて楽しいな」
「友達がいてへんからやな」
「うるさい! 金持ちに生まれると友達をつくりにくいんだ」
「そうなん?」
「妙にチヤホヤされたり、逆に妬まれたり……いろいろあってな」
「ふうん、大変なんやな」
「だからお嬢様学校に通わされている」
「ほな、同じ金持ち同士で気が合うんちゃうの?」
「派閥とか面倒臭い。足を引っ張りたくないし引っ張られたくない」
「ふうん」
「私の話に興味は無いのか?」
「そこそこあるで」
「もっと私に興味を持て」
「女性としては興味あるけど」
「どういうことだ?」
「美人やしFカップやし」
「外見だけか?」
「まだ内面はわからへんやんか」
「不良だ」
「不良には興味ない」
「何故だ?」
「俺自身が不良やからな。不良なんて珍しくない。お嬢様の方が興味がある」
「一度、パーティーに来るか? 退屈だぞ」
「着ていく服が無い」
「そうか、瞬は不良だったのか」
「ミナミの狂犬の時点で気付けや」
「では、当分は瞬が師匠だ。弟子入りする。私を立派な不良にしてくれ」
「アカン」
「何故だ?」
「面倒臭い」
「給料を払おう」
「いくら?」
「1日1万では無理か?」
「師匠と呼んでくれ」
「その制服は西高か?」
「そうやけど」
「おもしろいか?」
「今日が転校初日やからわからん」
「そうか」
「ほな、帰るわ」
「そうか、いつ私に指導をしてくれるんだ?」
「どうせ、このコンビニにいるんやろ。おやすみ」
「おやすみ」
次の日、学校へ行くと“転校生が来た”という話で朝から賑わっていた。嫌な予感がした。
「転校生を紹介する」
入って来たのはやはり琴音だった。
「綾小路琴音さんだ。仲良くやってくれ。席は相馬君の横に座りなさい」
美女の転校生に男子は大喜びだった。僕以外は。
「どういうつもりや?」
「私は瞬の愛弟子だからな」
「転校手続き早いなぁ」
「そこは作者の気分次第だ」
「なるほど」
「授業中、不良は何をするんだ?」
「寝る」
僕は眠った。前の学校からこうだった。
「起きろ」
昼休み、僕は琴音に起こされた。
「起こすな」
「もう昼休みだ」
「そうか、飯やな」
「全く眠れなかった」
「こういうのは習慣やからな、慣れるまでは眠れないのかもな」
「不良の昼食はなんだ?」
「食堂か売店」
「一緒に行く」
「ええよ。おいでや」
その日は食堂の日替わり定食が気にいらなかったので売店でパンを買うことにした。
「焼きそばパン2つとフルーツ牛乳」
「奢ってやる」
「おおきに」
「カードで」
「……俺が払うわ」
2人分の昼食を買って、中庭のベンチに座った。琴音も隣に座る。
「初めて食べるパンだ」
「それは良かったな、貴重な経験だ」
「うん、美味いな」
「でも、ええんか?」
「何が?」
「こうしていると、俺と付き合ってるという噂になるで」
「私は気にしない。瞬は気にするのか?」
「気にしない」
「それなら、いいじゃないか」
「そうか? まあ、そうやな」
「昼休みはどうするんだ?」
「中庭でバレーボールしている女の子達のボールが転がってくる」
ボールが転がってきた。
「すみませーん、ボールとってくださーい!」
「ここでボールを取って投げてやる」
「ありがとうございましたー!」
「こういう些細なことから恋が生まれる」
「生まれるのか?」
「生まれへんわ。そんなんマンガだけや」
「じゃあ、昼休みは何をする」
「何をするにもダルくてグータラする。不良の基本はダルさだ!」
「そうなのか?」
「テキパキ動く不良は嫌やろ?」
「確かに」
「昼からは?」
「寝る」
「寝てばっかりだな!」
「夜遊びするから日中は眠たいんや。夜遊びは不良の基本なんや。昼は、夜に備えるための貴重な時間やで」
「なるほど」
琴音が席で一生懸命寝ようとしていた。僕はその姿を見ながら寝た。
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