第13話 王都へ到着
あの後、結局大橋を通らせてもらえて無事王都へと到着した俺は御者さんに礼を告げると、さっそく門の方へと向かう。
王都に入るには大きな門から入らなければならないのである。その際にお金を払わなくてはいけないのだが、俺の場合はリンゼルハイム王立学園の受験票を持っているためそれを見せれば無料で入れる。
王都外からの優秀な人材をそんな大したことのない金額でこぼれ落としてしまうのを防ぐためらしい。
入学料はかかるが、授業料に関しては王国が運営しているのもあり、そもそも入学できた時点でトップレベルに才能のある学生であるという理由から無料となるって言うから太っ腹だよな。
とまあ受かった気でいるけど改めて入学試験ってなると緊張してくるな。前世で散々受験勉強してきたのが精神に染みついているからかどことなくソワソワしてしまう。
一応座学はあるしな。まあでもその座学はあまりにも邪悪な人物とかが入学するのを防ぐための道徳試験みたいなもんでどちらかと言えば実技の方が配点は高い。
そして実技と言えば散々ローグ先生から叩き込まれた俺が落とすはずがない。絶対に受かるだろ、そんな思いで今日はここに来た。
「はい、王立学園の受験者ですね。通っていいですよー」
「ありがとうございます」
すんなりと門を通れた俺はさっそく王都の景色を眺める。
くーっ、ゲームの中でしか見れなかった景色が今俺の目の前にある。ちょっと記憶が薄れつつあるせいで若干感動は薄いのがもったいない。
どうせならゲーマーだった時代の記憶を完全に劣化させないままでここに来られたら良かったのに。
「ほっほっほ、久しぶりですな。シュバルツ坊ちゃま」
「おっ、久しぶりです! ローグ先生!」
少しの間、王都の街並みを眺めていると一年ぶりのローグ先生が姿を現しこちらに話しかけてくる。
こんなところに居て騒ぎにならないのかと思ったが、少し目を凝らしてみるとローグ先生の周囲に魔力が纏われているのが分かる。
多分隠密の魔法か何かで気配を消しているのだろう。
「さてとあれから坊ちゃまがどれだけ成長したのか見せてもらいましょうか」
そう言うと突然ローグ先生の纏う雰囲気がガラッと変わる。おいおい待て待て。こんなところで戦い始めるつもりか?
「ろ、ローグ先生! ストップストップ! こんなところで暴れたら犠牲者出ますって!」
「……はて、何のことでしょう? ただステータスを見せてほしいというつもりだったのですが?」
こんのくそジジイが! 今のは絶対そんなつもりじゃなかっただろ!
出会って早々、ローグ先生のいたずら癖が翻弄してくる。まったく、こんだけ年が離れてるのに親しみやすいのは多分こういう子供っぽいところがあるからなんだろうな。
「良いですよ。ほら」
「――ほっほっほっほ、相変わらず子供とは思えない化け物ステータスですな~。感心感心。まさかこの短期間でレベル5まで成長されるとはお見事です」
「良い狩場があるんですよ」
レベル3までは蜂を狩り続けて、レベル5からはそれよりさらに効率が良くて難易度が高いところで狩り続けたからな。
まあレベル5とだけ聞くとあまり大した数字ではないため、聞いている人はみな首をかしげることだろう。
問題はレベルの数値ではなく、このステータスでのレベルの数値だからこそ高いのだという事を認識しているのは居ないだろう。
だってローグ先生ですら何となくの感覚でしか知ってなかったし。
それに俺みたいに数値を上限にしてからレベルアップするというのは実は案外難しいのだ。
最初の方、基本的に俺みたいに魔力トレーニングやら筋力トレーニングを赤ん坊の時からしている人は普通いない。
そのため、レベルがかなり上がりやすいのだ。
レベル1から上限まで鍛えているようなやつはこの世に俺一人だけだろう。
「どこの宿をとったのです?」
「受験会場に一番近いところをとってもらいました」
「なるほど、それならば今日はある程度遅くなっても問題は無いという訳ですな?」
「……嫌な予感がするのは俺だけでしょうか?」
受験会場からとんでもなく遠いところって言っときゃよかったと今更ながら後悔する。
「いえいえいやな予感だなんてそんな。実は坊ちゃまを教えていたら楽しくなって王都でついもう一人教え子を取りましてな。その子と手合わせしてみてほしいのです。その子も今回受験いたしますので最終調整もかねて」
「あー、そゆことですか。ってえっ!? ローグ先生また教え子とったんですか!?」
前は教えるのが面倒だから断ってきたって言ってたのに。まだ顔も見えない誰かにちょっとだけ嫉妬心が芽生えてくる。
「まあまあそういう事ですから。晩御飯奢りますので」
「……分かりましたよ」
そうして俺は王都に到着して早々に肉体労働が確定するのであった。
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