私は普通。だからイケメンには弱い。
私はどこにでもいる普通の女子高生、山田花梨。こう言うと嫌味になってしまうかもしれない。何故なら県内では屈指の進学校に合格出来たから。まあでも三年間毎日普通に学校に行き、普通に授業を受け、テストが近くなると普通に勉強して来た。
それは中三になって入った塾でもそれは変わらず。普通に先生が”やった方が良い”と言ったことをやり続けただけ。実は”普通”ってかなりすごいことなのかも!
「おはよう」
「おはよ……う?」
少し早く来て、窓側の席から外を見ながら回想していると、見たことないイケメンに話しかけられた。かなりのイケメン。ひょっとすると、これはあの木葉ちゃんにも引けを取らない顔面偏差値なのでは!?
「いきなりごめんね。俺は青野奏太。一学期諸事情で来れてなかったんだけれども……」
「青野君!? 実在したんだ……」
「俺そんな七不思議的な扱いなの?」
その言い方はあながち間違ってもない気がする。というのは”称賛なき名スピーチ”、”木葉姫の屈辱”とインパクト与える事件を立て続けに起こしている。しかも1学期の間一度も来ずに……
「青野君は有名人だよ。色々あってね」
「マジかよ……俺一回も学校来たこと無いのに……」
「まあそれはいいけどさ……そうだ、名前聞いても良い?」
「花梨だよ?」
何でちょっと困った顔をしているんだろ……ってあ!
「えと、花梨って呼んで良いの?」
あ、これやばい奴だ……今まで彼氏どころが仲のいい男子すら居なかったから、男子に名前で呼ばれるの初めてだ。しかもこんなカッコいい人に……
「ん……えっと……」
「どうしたの? 花梨?」
凄いムズムズする……でもどこか嬉しいような。
「ごめんね、名前呼び嫌だった?」
名前聞かれて、下の名前を答えたのに深い意味はない。今日は始業式で、夏休みの間、部活や家で私の事を下の名前で呼ぶ人しかいなかったから反射で……
呼ばれるだけで口角あがって、体が熱くなる。この毛布で温めるのとは違う、体の内が熱せられるような感覚は何なんだろう……
―─知りたい! だから、せめてわかるまでは……
「ううん、名前で大丈夫だよ。皆からもそう呼ばれてるし」
「わかった。じゃあ花梨って呼ばせてもらうね。あーあと、俺の席ってわかる?」
「あ、それなら……」
そういえば特段変わったところが無い私だけれど、1つだけあったな……変わったところが
「私の隣だよ。よろしくね」
「そうなんだ! なんか安心したよ。座席表とか無い? 周りの人の名前覚えときたくて」
「ちょっと待ってね」
私は自分のスマホのアルバムを遡る。スクロールしていくと、黒板の色は分かりやすく、すぐみつかったので、その画面を青野君の方に傾けると、体を寄せてくる。
「あ……」
「ごめん。今日コンタクトつけて来るの忘れちゃってさ」
違う。今のは、急に近づかれて肩が少し触れたからびっくりしただけ。決してそういう意味でドキドキした訳じゃないから!
「連絡先、交換しよっか。一瞬じゃ覚えれないし、さっきの送ってくれない?」
「うん!」
QRコードを出し、読み込んで貰う。
……嬉しいな……あれ? 私チョロすぎない? それとも青野君が手強すぎ?
「嬉しいな、こうやって話せる人が隣で」
「わ、私こそ! どんなひとかな~って思ってたら、青野君みたいな人で良かったよ!」
「俺みたいな人って?」
少し笑いながらこちらに顔を向ける。カーテンの隙間から射す太陽の光に照らされた彼の顔は、何よりも美しい。
「青野君みたいなイケメンだよ!」
何かもう綺麗過ぎて腹が立って来たので、本心を告げると、少し悲しそうな顔を一瞬見せてから、再び笑いかけて"直球で言われると照れるなあ……"と言われた。
あの一瞬見せた顔は何だったんだろう……
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