否定出来ない。だからこれは……
「梓さん...その、なんかすみません」
今一緒にデート? している奏汰君が申し訳なさそうに告げる。さっきからずっとこんな感じ。安易に誘い過ぎっちゃったかな。私は……別に良いのに……
「そんなこと言うなら帰っちゃおうかな~!せっかく楽しみにしてたのに」
「……すみません」
「”女に帰られた”だなんて男の恥だもんね~!!」
「それにさ」
一歩近づいて上目遣いで言う。
「私は奏太君を誘ったんだよ?」
「……え、今……なんて……」
「教えな~い」
あーもう! めっちゃ恥ずい!……でも嘘ではないんだよな~……私は彼のことどう思っているんだろう……やっぱりあれは一目惚れ?
―─いや、それは無いか。私が一目惚れだなんて。あの日誓ったでしょ。それは簡単に出していい答えじゃない。
「ふうー……切り替えます。じゃあ、行きましょうか」
「うん!」
私達は近くのイタリアンに来た。ここはなんだか高そうな雰囲気だが、案外安い。そして量も多く、ものすごく美味しい!
席に着こうとしたら奏汰君が椅子を引いてくれた。
「どうぞ」
「ありがとう」
いや……なにこれ……
嬉しいけどさ! そりゃあこんなにカッコいい人にエスコートされたら誰でも喜ぶよ!
店員の人が来て注文を聞かれ、私はマルゲリータピザ、奏汰君はカルボナーラを頼む。
「梓さんはよくここ来るんですか?」
「んー……ファミレスはちょっとなあって時に良く来るかな」
頻度で言えば月1は来るかも。奏汰君はこの辺に来たのが最近らしいから、絶対に来て欲しかったので連れてきた。
「学生は基本金欠ですもんね」
「そーーーうなんだよ! なんかさ、バイト初めて中途半端にお金持つと前まで使ってたやつより高いもの買うようになって、気付いたらお金無くなってるんだよね……」
お小遣い貰ってる時の方がまだちゃんとやりくりしていた気がする……
「わかります。年をとるだけ必要なものも増えますもんね」
「そうそう。大学生になって、化粧も覚えて高いスキンケア用品だとか美容系のもの買ってみたりね」
「でもメイクするともっと大人っぽくなりますね。ネイルも可愛いですよ」
「ありがと。大変なんだよ? だからもっと褒めて!」
あ、困らせっちゃったかな……あまりにも嬉しかったから調子乗っちゃった……
「……そういえば」
「どうしたの?」
「百華ってなんのバイトしているんだろう……」
……え!? 今解りやすく話題反らされたよね!? やっぱりうざがられちゃったかな……
「えっと……梓さん?」
「あ、ごめんね、もものバイトだったね。ていうか聞いてなかったんだ……ももはね。パラリーガルやってるんだよ」
「パラリーガルって、あの弁護士の補佐的なやつですよね」
「そうそう。何か有能過ぎて実質働いてるみたいな感じらしいよ」
ももは外面だけはいいからなあ……そうしているとご飯が来た。
「おお……おいしそうですね」
「でしょ? 実際すっごく美味しいよ」
料理は二人同時に来たので、食べ始めた。奏汰君は美味しそうに食べている。
「奏汰君。ピザ一切れあげるよ。昼のお礼ってことで。どうせおごらせてくれないんでしょ?」
「じゃあお言葉に甘えて」
そういって私から見ても少し小さく見える一切れを取る。こういうとこちゃっかりしてるよなあ……
「ピザも美味しいです」
「でしょでしょ! 私ここのピザ大好き過ぎていつも頼んじゃうんだ」
「え、じゃあピザしか食べたことないんですか?」
凄く不思議で、なおかつ楽しそうに聞いてくる。
「そうだよ? 違うの頼もうとしても気付いたらピザ頼んでるんだよねえ」
「じゃあ試しに一口どうぞ」
丁寧にパスタを巻いて私の口元に……ってえ!? これって”あーん”なのでは……?
「? 食べないんですか?」
「え、えっと……もちろんいただくよ?」
凄く恥ずかしい……ていうか、なんでこんなにぐいぐい来るの? なんでそんなに余裕なの? ここで引いたら負けな気がして一口頂いた。
―─やっぱり、奏汰君モテそうだし、慣れてるのかな……少し、胸がちくりときた……
え、なんで……
「どうですか?」
「.……美味しい」
「よかったです」
微笑んでくる彼の顔はもう見れなかった……だってもう知ってしまったから……気づいてしまったから……自覚してしまったから……この
やっぱりもう、否定できないよ……
私白川梓はあの日、青野奏汰に一目惚れをしてしまっていたみたいだ。
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