第5話 風呂上がりは牛乳!
「広っ!」
俺は町の入り口にあった地図を見て驚いた。さすが、町というだけあって村とは比べ物にならないくらい広い。
「カラシはここに来たことあるんだろ?」
「はい!何度か。とってもご飯が美味しいんですよ!」
何て言うか異世界特有のヨーロッパっぽい町並みで、外国に行ったことのない俺はめっちゃワクワクした。俺たちはその町並みを眺めつつ、今日泊まる宿屋を見つけた。
「やっぱり、ベッドは1つか…」
「えっ嫌ですか!?もしかして、私の寝相やばかったですか!?確かに昔、目が覚めたら玄関までいっていたことがありましたけど…」
「いや!そんなことはないよ!全然うれしい!」
と言いつつも寝る時また緊張するんだろうなあ。…………ってか玄関までは行きすぎだろ…
「じゃあ、ご飯の前にお風呂に行きましょうか!山登りで結構汚れましたし……町のお風呂は大きいですよ!大浴場です!」
「大浴場か~いいね!」
お風呂は誰もいなかったら泳ぎたいぐらい大きく、気持ちよかった。
「ふぅ。」
俺は一息ついて、エントランスでカラシがお風呂から上がるのを待った。
「あんたはここのお風呂初めてかい?」
エントランスのソファに座っていると、若い男性が話しかけてきた。
「えっ、ああはい。初めてです。」
「じゃあ、おすすめを教えてやるよ。あそこで牛乳が売ってるんだ。風呂上がりの牛乳……最高だぜ!」
男性が指差した先で確かに牛乳が売っている。……欲しくなってきた。風呂上がりの牛乳って定番だしな!
「確かに美味しそうですね。…買ってきます。」
そう言って俺は牛乳を一本購入した。
「まいどありってやつだな!」
すると、先ほどの男性がそう言ってきた。
「えっ、どういう?」
「実は俺ここで働いてるんだよね!牛乳買ってくれてありがとな!」
「……」
牛乳を一口飲む。何か良いように騙された気もするけど、うまいからいいや。
「まあ、そう落ち込むなって!良いこと教えてやるから!」
「落ち込んでないっすけど…何ですか?良いことって?」
「実はな、この町の近くに山があるだろ?…そこで、幽霊がでたらしいぜ!怖いよなあ。」
「あー…会いましたよ。」
「えっ」
「幽霊に会いましたよ。何ならさっき。」
「ははは!またまた~。幽霊に会って無事なわけないでしょ!だって噂によると10年前に殺された村人たちの霊だぜ。きっと、スッゴい怨念でスッゴい恐ろしいに違いねーって。」
あの村は10年前に襲われたのか。
「いや、結構優しそうでしたよ。危害も加えてこなかったですし。」
「……マジで会ったの?」
「マジっす。」
「………ははは!面白いね!ありがとう。商売中の話のネタが1つ増えたよ!これ、お礼ね。」
「あっありがとうございます。」
男性は1本牛乳をくれた。と同時にカラシがこちらに来た。
「いや~気持ちよかったですね!」
「そうだな。…牛乳いる?」
「おっ、ありがとうございます!」
俺は今もらった牛乳をカラシに渡した。すると、まだ男性はいたらしく、
「なんだよ~あんた、彼女いたのか!」
「ぶふぅー」
つい口に含んだ牛乳をはいてしまった。
「ちっ違います!この子は仲間です!」
「はい、はい。じゃ、ばいばーい。」
「ちょちょっと!」
話したいことだけ話して男性は去っていった。……びびった~。
「ふぅ、ちょーうまいですね!この牛乳!まさに、ぷはぁってやつですよ!」
カラシはどうやら聞いてなかったらしく笑顔で牛乳を飲んでいる。……ぷはぁってやつ、ってなんだよ。
「よし!じゃあ、ご飯食べに行くか!お腹空いたし!」
「はい!お腹ペコペコです!」
今日は山を登って、幽霊に会って、衝撃の事実を知って…色々あったからなあ。お腹もぎゅるぎゅるなってるよ。
「ここです!前にこの町に来たときにこの店で食べて、すっごい美味しかったんです!」
「へ~」
看板には『料理屋ハラペコ』と書いてあった。中にはたくさんの客がいて、美味しそうな匂いがぷんぷん漂っている。
「すみません!カウンター席でよろしいですか?」
店員さんの問いに「はい」と答えて俺たちはカウンター席に座った。そこの料理はいわゆる中華っぽい味付けで、中華料理大好きな俺からするとめちゃくちゃ美味しかった。
「いやあ、すげぇーうまいな!」
「ですよね!箸が止まりません!」
「そうよね~、私もここの商品全部食べるまでは成仏できないよ~」
「そうですよね!」
「ああ!……ん?」
今誰かが会話に入ってこなかったか?しかも、聞いたことある声……成仏とか言ってたし…まさか!
「ひっヒガン!?」
「えっ」
「おっ、気づいた?」
「なっなんで、ここに!?」
「いやー、付いてきちゃった…というより、憑いてきちゃった。」
「どっどういうことですか?」
「やっぱり、君たちだけに外での情報収集を頼むのは悪いと思ってね。カラシちゃんの杖に憑いてきたの。」
「そんなことできんの?」
「うん。ユーレイだからね!」
確かに、付喪神とか物に幽霊が宿ることがあるって聞いたことがあるけど…まさか本当だとは……
「まあ、気にしないで良いよ。日光が苦手だから昼は杖の中で寝てるし、夜は聞き込みに出掛けてるからさ。」
「聞き込みっていっても、その見た目じゃ驚かれるだろ……あれ?」
ヒガンの下半身に目をやるが、ふよふよがない…というよりロングスカート的なものを穿いていて見えない。
「あはは、どう?これだったら幽霊だってバレないでしょ?」
「おお、確かに!賢いです!」
「そんなそんな~それほどでも…あるか!」
楽しそうに話している……カラシは自分の杖に憑かれることは特に気にしてないのかな…
「そういえば、ヒガンさんって魔法使いなんですか?服装がそれっぽいっていうか…」
「おっよく分かったね。そうだよ。死ぬ前は魔法でブイブイ言わせてたからね!まあ、まだ記憶が曖昧で何の魔法を使えたかあやふやなんだけどね。」
「そうなのか…戻ると良いな、記憶。」
「うん。ありがとね……」
そう言いつつヒガンは料理を口にする。
「ってか、幽霊ってご飯食べれるの?」
「頑張ればね。半実体化っていうの?少しの間だけ、実体を持つことができるの。幽霊だから餓死はしないけど、やっぱり食べるのって楽しいからね!お陰でめっちゃ疲れるんだケド。」
「なるほど…だから昼は寝てるんですか。昼夜逆転ってやつですね!」
「そうよ。まあ、幽霊である私からしたらその昼夜逆転は当たり前で、むしろ君たちが昼夜逆転してるんだけどね!」
「ややこしいな…」
「じゃあ、またね!私はこの店で聞き込みをするからさ。2人は疲れたでしょ?ゆっくり休みな~。それと、朝になったら勝手に杖の中に戻るから~よろしくね!」
「はい!分かりました!」
「さようなら~」
はあ、今日はホントに疲れたな…憑かれてたし……宿屋でゆっくり休むか!
「ふぅ~、今日は色々大変でしたね。」
「ああ、まさか幽霊に会うとはな……っていうか、案外幽霊ダイジョーブそうじゃん。あんなにびびってたのに。」
「良い幽霊たちだったので!脅かしてきたときはホントにやばかったですけど!」
「でも、良い幽霊の基準がダジャレを言うか言わないかだったけどな…」
「いいじゃないですか!後から聞きましたが、とても面白かったですし!特に布団が吹っ飛んだなんて、私じゃ思い付きません!」
「1番有名だろ、それ…」
「私も1つ良いですか?」
「えっ」
「服で拭く!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………おやすみなさい…」
「おやすみ~」
昨日ほどではないがやはりまだ緊張する。
「ぐぅー」
相変わらず寝るのが早いな…俺も早く寝よっと…………
ネタバレーーマチ ガ ヒ ニ ツツマレル
「!!」
町が火に包まれる!?……何が起こるんだ…うう、最近のネタバレは心臓に悪いな…………
ーーー続く
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