第18話 連携
「アリサ、ちょうどいい。あのパーティを見てみよう」
目の前の部屋で知らないパーティがゴブリン2体、ゴブリンメイジ2体を相手に戦っている。
パーティの構成は【剣使い】【斧使い】【火魔法使い】【水魔法使い】【神聖魔法使い】の5人。
どうやら
MMOではパーティリーダーがIGLをこなすことが多いがVRMMOではそんなこともない。前衛職がパーティリーダーの場合、後衛職がIGLをするというのが常識だ。
だから目の前にいるパーティはその常識にとらわれてないということになる。もしかしたらMMO上がりのパーティでVRMMOを経験したことがないのかもしれない。
「あのパーティの戦い方を見てどう思う?」
「うん、指示が通ってないというのと、指示を出す人が目の前の魔物しか見れてない。後衛の人も魔法を撃ちたいのだろうけど、前衛の人が邪魔そうで……」
よく見えているな。
アリサの言う通りこれがVRMMOでIGLが後衛の方がいい理由なのだ。
MMOばかりやっている人は
「そうだな。相手がゴブリンとゴブリンメイジ相手だから事なきを得ているが、これから先もあのままだったらいずれ命を落とす。まぁ彼らもだからこそ、ここで連携力を高めているのかもしれないが」
さらに奥に進み、大部屋で違うパーティを見つけた。
通路から見学すると、思いもよらなぬ光景を目にする。
「ユウト? あれって……? 【弓使い】……だけ?」
そう、目の前にいたパーティは【弓使い】のみで構成されているパーティだった。
【弓使い】は攻撃力が低いものの、CTなく遠距離から攻撃できる。しかし魔物を狙うのは難しい。そのため適性次第で
が、どう考えても彼らの射る距離はエイムアシストが適応される範囲外。それでも弓は魔物に命中し、一方的にダメージを与え続けている。
ここまでであれば俺もできる。俺もFPSが得意でどのゲームでも最高ランクまではすぐに届くからな。
ただその中でも一人だけ抜きんでているプレイヤーがいた。動き回りながら弓を射っているのだ。しかもIGLをこなしながら。他のプレイヤーはたまに外すこともあるが、そのプレイヤーだけは動きながらも一射も外すことなくゴブリンたちを殲滅させた。
バケモンだ――容易にFPS競技勢というのは予想がつく。
ただこれが通用するのも雑魚敵だけ。とにかく【弓使い】は火力が低いのが欠点。防御力が高い魔物の前には苦戦を強いられるだろう。
が、この状況下にも拘わらず、四人全員が楽しそうにプレイしている。きっと彼らはすべてを解った上で【弓使い】を選択したのだろう。だからこれはこれで楽しむという点では最高のパーティ編成なのかもしれない。
その後も数パーティの戦闘を見ながら進み、ようやく誰も戦っていない魔物たちの部屋に辿り着く。敵はゴブリンメイジが四体。
「アリサ、ちょっと見ててもらえないか? 俺とパーティを組むうえで絶対に知ってもらいたいことがある。何があっても絶対に手を出さないでくれ」
振り返らずともアリサが背後で頷く気配がした。
徐に前進し、ゴブリンメイジに近づく。
俺に気づいたゴブリンメイジたちは一斉に俺に対し《ファイア》を放つ。
「ユウト!!!???」
《ファイア》が飛んできても避ける様子のない俺にアリサが戸惑う。
「大丈夫、来ないでくれ」
努めて優しく声を発した瞬間、四発の《ファイア》が俺に着弾すると、またもアリサが俺の名前を叫ぶ悲痛な声がする。
が、俺はほぼノーダメージ。
「え? どうして……?」
視界左に映る俺のHPバーが減ってないことに気づいたのか、アリサの気の抜けた声が耳に届く。
しかし、驚いてもらうのはこれからだ。
右手には鉄の剣を持ったまま、左手を前に掲げる。
「《ファイア》!」
火の塊が一体のゴブリンメイジに着弾し、
「《ウォーター》!」
水のつぶてが別のゴブリンメイジを体を貫通する。
「《ウィンド》!」
疾風がさらに別のゴブリンを吹き飛ばす。
後ろを振り向かずとも分かる。アリサが呆然と俺の背中を見ていることが。
でもこれからが本番!
「《ライトニング》!」
雷魔法を唱えた瞬間、俺の身を包んでいた金色の法衣は輝きを放ち、髪の毛まで発光した。
【雷鳴士】にクラスチェンジしたときに身に纏っていた法衣は、雷魔法を放つと髪の毛と共に金色の煌めきをまき散らすのだ。
ゴブリンメイジを倒し、振り向くとそこには手に口を当て、声も出せないほど驚くアリサの姿が。
「アリサ、今のを見てどう思った?」
俺に問われたアリサはようやく目の前で起きたことが理解できたのか、思い出しながらゆっくりと言葉を選んだ。
「ただただ凄い……あれだけ剣も上手なのに魔法まで……」
普通の子であれば物おじして距離を取られるかもしれない。でもアリサは違う。いつもアリサは俺についてきてくれた。今回もその眼に決意の炎が灯る。
「じゃあ、次は二人でやるぞ」
気づけばもう誰もいないボス部屋の近くまで辿り着いていた――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます