第7話 ベータテスター
――――十二日目
「一番乗りだと思ったんだけどな、お前ベータテスターか?」
ベリグランド迷宮から戻り、冒険者ギルドにクエスト完了報酬を受け取りに行くと、背後から突然冷たい声に襲われた。
振り向くと、黒い衣装に身を隠し、頭にフード、口元にはマスクをして顔を隠した男の姿が。
「その反応からすると俺のジョブは分かっているようだな。ってことはやはりベータテスターか」
「あんたはどうなんだ? その恰好からすると【コソ泥】だろ?」
【コソ泥】というのは敏捷特化の前衛ジョブ。その名の通り盗むことを生業にしている。
「ああ。俺は隠すつもりはないからな。どうだ? 俺と組まないか?」
「初めて会ったあんたとか? 冗談はやめてくれ」
俺の答えに満足したのか目に笑みが零れる。
「まぁ当然か。お前の衣装は装備品か?」
金色の法衣を見て男が問う。
「これはデフォルトだ」
どうするべきか逡巡したが、答えることにした。些細なことで恨みを買いたくないからな。特に同じベータテスターからは。
「そうか、俺の名前はキョウヤ。明日から俺もベリグランド迷宮に潜らせてもらう。魔物と間違えて俺を撃ち抜くなよ」
「ユウトだ。キョウヤこそ間違っても俺から何かを盗もうとするなよ」
有紗のことを知らないか聞こうとしたが、そもそも俺も有紗のプレイヤー名を知らない。唯一有紗が就きそうなジョブは分かるが、それも確実ではないからな。
キョウヤがクエストを受注したのを見届けてから俺もギルドを後にする。
あと一日くらいは余裕があると思ったが、そんなに甘くはないか。
しかも現れたのはソロプレイヤーでジョブは【コソ泥】。【コソ泥】は攻撃力の低さがネックで初期ジョブとしては相応しくないのだが
これは攻略を急がないといけない。
この二日間でクエストをクリアし続けて手元には3.300ゴールドある。まずは身の安全と自身のジョブを隠そうと、防具を買い、筋力値が上がってから武器を買おうと思っていたがそんな余裕はなくなった。
迷わず武器屋へ向かう。
魔法使い系のジョブが装備するといえば定番のこれ。買ったのはNPCが経営する武器でどこでも買える【木の杖】だ。値段は3.000ゴールド。
【名 称】木の杖
【攻撃力】5
【魔 力】10
【重 さ】25
【特 殊】-
【木の杖】を購入した武器屋にも様々なサブストーリーが用意されている。その内の一つに
それはNPCよりも高い値段でレアなアイテムを売れるということだ。というのもNPCはどんなに価値があるアイテムでも高額買取をしてくれない。とんでもない安値で買い取られてしまうのだ。
ただ武器屋を買い取った
そのため
中間マージンを取られるくらいであれば、プレイヤー同士が直接取引すればいいのでは? と思うかもしれないが、ここがこのゲームのミソ。
プレイヤー同士の取引ではお金を渡しても武器を渡さなかったり、逆に武器を渡してもお金がもらえなかったりするのだ。
当然レアな武器ほど動く額は大きい。だからこそ
なぜなら
だとしたら最初に武器屋や道具屋を買い取った
別の
さすがに今の状況でやらないとは思うが、クローズドベータ版で一度襲撃イベントが起き、プレイヤー間で大いに揉めたことがあるというのを付け足しておく。
さらには武器を売るのは武器屋だけではない。鍛冶屋もある。鍛冶職人も武器の生産に必要な素材を手に入れるため自身のレベルを上げたり、プレイヤーを雇ったりと、武器屋と同様やることは多い。
そんな武器屋を後に̪し、次に向かったのは道具屋。
ポーションとマジックポーションを使い切ってしまったので、買えるだけ買っておく。
これで準備は万端。
【木の杖】を装備した状態でステータスを確認する。
【名 前】ユウト
【ジョブ】雷魔法使い(6/14)
【状 態】良好
【L V】7(2up)
【H P】106/106
【M P】0/155
【攻撃力】51 (6up)(+5)
【敏 捷】58 (8up)
【魔 力】100 (20up)(+10)
【器 用】58 (8up)
【防 御】51 (6up)
【魔 防】72 (12up)
【適 性】火魔法G(6/10)・風魔法G(6/10)・水魔法G(6/10)・雷魔法G(6/7)
【重 量】35/51
【装 備】木の杖
【アクティブスキル】
・《ライトニング》
・《ファイア》
・《ウィンド》
・《ウォーター》
【パッシブスキル】
・《鑑定》
あと1レベルで雷魔法の適性がG→Fに上がる。
確か火魔法はFに上がったらクールタイムが減少したはずだったが雷魔法はどうだろうか?
ひそかな楽しみを胸にしまい、宿に向かった。
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