第5話 レベルアップ

 ルーキータウンの東、ポーロタウンに着いた頃にはどっぷり日が暮れていた。


『魂の監獄』の舞台であるこのベリグランドの一日は現実世界の六時間分となる。


 日本での配信開始が九時からで締め切りが十二時だったので真っ先にログインした者との差は現実世界では三時間、こちらの世界で換算すると十二時間。この差は大きいが、俺にはクローズドベータ版での知識がある。


 現にポーロタウンまで辿り着いているプレイヤーは多くない。


 この状況を理解できないというプレイヤーも多数いるし、ポーロタウンに辿り着くまでの道中でレベル上げをしている者の姿も見られた。


 ほとんどのプレイヤーがリポップするツノウサを待ち、チュートリアル戦闘でこのゲームに慣れようとしていた。


 俺はそのプレイヤーたちの中に有紗がいないか注意深く見ながらも、一度も戦闘をせずにポーロタウンに着いたのだ。


 真っ先に宿を探し、飯を食ってから寝る。アバターといえども腹も減るし、眠くもなるのはニューロギアを通じて脳にそのような命令が下されているから。


 明日何をすべきかを考えてから眠りについた。



――――二日目


 飯を食ってから街を出ると今度は進路を北にとる。


 目指すはモーブフォレスト、そしてその先にあるレイクタウンの街を越え、ベリグランドの中心セントラルシティを目指す。


 ポーロタウンを出てから一時間、ようやくモーブフォレストが見えてきた。


 モーブフォレストとはルーキータウンがあるベリグランドの南西から中央に向かう途中にある森で、別にここを通らずともセントラルシティに辿り着くことは可能。


 しかし、このモーブフォレストにはレッサ―トレントという弱い割には結構な経験値を落とす魔物がポップする。


 しかも火魔法に弱いので俺にはもってこいの魔物。


 森の前で中に入ろうか迷っているプレイヤーたちを横目に躊躇うことなくモーブフォレストに足を踏み入れた。


 数分歩いていると木に擬態しているレッサ―トレントを発見。


 明らかに幹の色が黒いのに擬態できていると思っているからびっくり。


 近づくと枝を伸ばして絡めとってこようとするので《ファイア》で攻撃すると、あっという間にレッサートレントは燃え尽き、鮮やかなエフェクトを残して砕け散った。


 ちなみにクローズドベータ版で森を焼き払おうとしたプレイヤーがいたのだが、火は燃え広がりはするものの魔法による火災は一定時間で消えてしまう。


 木もすぐに生えるので、【木こり】のジョブについた者にも迷惑をかけることなく、火魔法を使って戦闘ができる。


 そのままモーブフォレストを駆け、二体目のレッサ―トレントを倒すと脳内で場違いなレベルアップ音が流れた。


 こんな状況でもレベルアップは嬉しい。


 すぐにウィンドウを開き自身のステータスを確認する。



【名 前】ユウト

【ジョブ】雷魔法使い(1/14)

【状 態】良好

【L V】2(1up)

【H P】66/66

【M P】80/80

【筋 力】36(3up)

【敏 捷】38(4up)

【魔 力】50(10up)

【器 用】38(4up)

【防 御】36(3up)

【魔 防】42(6up)

【適 性】火魔法G(1/10)・風魔法G(1/10)・水魔法G(1/10)・雷魔法G(1/7)

【重 量】4/36

【装 備】-

【アクティブスキル】

・《ライトニング》

・《ファイア》

・《ウォーター》

・《ウィンド》

【パッシブスキル】

・《鑑定》



 予想していた通りのステータス。


 というのも『魂の監獄』では就いているジョブにより伸びるステータスが変わる。


【雷魔法使い】のジョブに就いている限り上昇するステータスはずっと同じ、つまり他の魔法使いよりかは明らかに強い雷魔法使いの俺は、それだけアドバンテージがあるということだ。


 また、レベルアップしたときにHP、MPが全快するのもこのゲームのいいところ。


 ちなみにいうと、ステータス欄の雷魔法使いの脇に表示されている(1/14)というのは、【雷魔法使い】のジョブであと13レベル上げるとジョブマスターということだ。


 職によってはジョブをマスターしなければ就けないジョブもある。


 しかし、躍起になってレベルを上げるのも考え物。


 理由は分かると思うが基本職でレベル上げをすると、それだけステータスも上がりにくい。基本職よりかは二次職、二次職よりかは三次職にあげてからレベル上げした方が強くなれるのだ。


 レイクタウンの街を経由し、目的地であるセントラルシティに着いたのは、参加プレイヤーが千人死んだというアナウンスがあった十日目のことだった――――



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