第5話深き暗闇の洞窟

碧き水晶の湖面サファイアレイクの先に進むと大きな洞窟があった、【死霊候】の巨体を遥かに上回る大きさである

碧き水晶の湖面サファイアレイクを見物するため、橋から飛び降りて正規のルートを外れながら谷沿いに進んで辿り着いたのがこの洞窟である

「この洞窟の先が渓谷の出口に繋がっているハズだよ」

「それもまた一興ですね」

当ての無い放浪の旅である、気の向く間々に進んで行き着いたのならば其処を進むのもまた何かの縁である

幸い架空の悪魔パラファラピヌであるギアと吸血鬼ヴァンパイアである【死霊候】は種族の特性として暗視能力ダークビジョンが備わっているため暗闇も昼のように見通す事が出来る

「此処は深き暗闇の洞窟ダークネスケイブ、別名を大毒蜘蛛の洞窟アラクノケイブと言って巨大な毒蜘蛛の魔物アラクノポイズンが生息する洞窟だよ」

毒蜘蛛の魔物アラクノポイズンとは二メートル程の麻痺毒を持つ蜘蛛型アラクノタイプ魔物モンスターである

【死霊候】の語るところによるとこの洞窟に住むモノは最長五メートルのものが存在し、この洞窟の主となっていると云う

「それは面白そうですね、早速その洞窟の主とやらを拝みに行きましょうか?」

しかしギアは恐れる素振りも見せず洞窟の中に踏み込んで行く、この洞窟の事をある程度知っている【死霊候】が先に立って先導する

洞窟の中に入ると奇妙な光景が飛び込んでくる、真っ白い絹布のような物が洞窟のあちらこちらに架かっている

「これは、蜘蛛の糸ですね?」

近くで観察すると少し粘り気があり、此処に住む蜘蛛の魔物モンスターの糸である事が推察出来た

周りを見渡すと灰色の胴体を持つ巨大な蜘蛛の魔物モンスターが身体を揺すりながらこちらを伺っている

しかし襲って来る気配はない、野生の観察力で、こちらが遥かに格上高レベルだと、群れで襲っても自分達が圧倒的な力で返り討ちに合う事を看破していた

「野生の生物は本能的に格上が分かるって言うからね~」

「目の前の主もそうですか?」

目の前に現れたのは周りの蜘蛛モンスターと違い巨大で紺色の身体に灰色の縞模様がいくつも入っている、恐らくこの洞窟の主であろう

(聞いてたより大きいですね、五メートルどころか十メートルはありますかね?)

ギアが臨戦態勢に入った瞬間、毒蜘蛛の魔物アラクノポイズンは八本の足を交互に動かして毒糸を吐き出して来た、しかし次の瞬間、ギアを拘束する筈だった糸は身動きを封じる事無く地に落ちた

「行動阻害への耐性ですよ」

事もなげに言い放つ、野生生物は自分が負傷する戦いは挑まない、負傷は自然界で生きる上で大きなハンデになる

結局大蜘蛛はそれ以上何もせずギア達を通した、野生で生きる上で必要なのは、無闇に格上に挑んで負傷を追わない事である

「なんだか拍子抜けだったねぇ?」

「そんな事はないですよ、野生の生物として正しい判断です」

まるで初めから分かっていた事のように呟く、無論全ての魔物モンスターわきまえている者ばかりではないのだが・・・

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