23

 次の週末の土曜日、亜希子は家でのんびりしていた。今日は中学校の仕事が休みだ。今日はのんびりしていよう。平日の疲れを取ろう。そして来週からまた頑張ろう。


 仰向けになって考えているのは、虎次郎の事ばかりだ。すっかり恋人になってしまった。高校時代に会った事があるので話しかけただけだが、思えば本当の恋人になってしまった。だけど、ここまで恋を実らせた。そろそろ結婚も考えていいのではと思っていた。


 突然、インターホンが鳴った。虎次郎がまた来たんだろうか? それとも、近所の人だろうか? 亜希子は起きて、玄関に向かった。


「はい」


 ドアを開けると、そこには両親がいた。まさか、両親が来るとは。何を言いたいんだろうか? また愚痴だろうか? もう聞きたくないのに。


「亜希子・・・」

「父さん! 母さんも・・・」


 亜希子は驚いている。どうして来たんだろうか?


「話したい事があってね」

「どうしたの?」


 亜希子はびくびくしている。また愚痴だろうか? それとも、それ以外で言いたい事があるんだろうか?


「いいから」


 だが、父は何なのか言おうとしない。愚痴だと思っていたが、何だろう。


「・・・、わかった・・・」

「一緒にファミレス行こうか?」


 母の一言に、亜希子は驚いた。まさかファミレスに行くとは。どうしたんだろう。ファミレスで話したい事があるんだろうか?


「いいよ」

「わかった。正午になったら一緒に行きましょ」

「うん」


 2人は家に入った。それまでの時間を自宅で過ごそうと思っているようだ。両親はダイニングでくつろいでいる。ダイニングのテーブルは2人暮らしにしては大きい、虎次郎がいれば、少しは賑やかになるのにな。


「どうしたの? 最近は愚痴しか言わないのに」

「いいから。でも、愚痴は言わないわよ」


 亜希子は戸惑っているが、愚痴を言われない事を知って、ほっとした。もう言われたくない。そして、もし虎次郎と結婚する事になったら、祝ってほしいな。




 正午になった。そろそろファミレスに行く時間だ。凛空も起きていて、その時を待っている。勉強は11時前に終わらせた。今日のお昼はファミレスで食べると知って、早く終わらせなければと思っていたようだ。


「じゃあ、行こうか」

「うん」


 4人は家を出て、ファミレスに向かった。休みの日のマンションはとても静かだ。


「亜希子、最近どうだい?」


 父は様子が知りたかった。家庭の先生をやっているようだが、仕事は順調だろうか? つまづいている事はないだろうか? もし、悩んでいる事があれば、話してもいいんだぞ。


「仕事は順調だよ」

「そっか。それはよかった」


 父はほっとした。どうやら順調のようだ。このまま頑張ってほしいな。


「頑張ってるんだけどね」


 4人はファミレスにやって来た。ファミレスには家族連れがちらほら来ている。みんな楽しそうだ。週末をしっかりと楽しんでいるようだ。


 4人は指定された席に座った。ここ最近、ファミレスではタッチパネルでの注文を始めた。コロナ禍による非接触が原因だが、素早く注文を送れるという利点もある。


「さて、今日は食べようか?」

「うん」


 4人とも、何を注文するか決めていない。4人は悩んでいた。


「いらっしゃいませ、ご注文はこちらのタッチパネルでお願いします」


 店員がやってきて、タッチパネルを案内した。タッチパネルには様々なメニューの種類が並んでいる。ワンプレートや定食などがある。


「俺はハンバーグ定食で」

「私はさば味噌定食で」

「私はエビフライ定食で」

「僕、お子様定食で」


 4人はタッチパネルで注文を入力した。これであとは注文の品が来るのを待つだけだ。


「急にどうしたの?」

「実はな、あんなに亜希子が頑張ってるのに、どうして愚痴を言い続けるんだと言われて」


 両親は反省していた。最近、亜希子が頑張っていると聞いた。それなのに、どうして愚痴を言い続けるんだとも言われた。ふと、亜希子は思った。誰が注意したんだろう。まさか、また高木だろうか? 先日、虎次郎の両親にも注意した。今度は私の両親にも注意したんだろうか?


「誰に?」

「高木先生」


 やはり高木が注意したのか。高木はとても思いやりがあるんだな。


「そうなんだ。高木先生、杉村先生の両親も同じ事で叱ってたんだ」

「ふーん・・・」


 両親は杉村先生の事が気になった。杉村先生とは誰だろうか?


「で、杉村先生って?」

「元プロサッカー選手の先生。今年から新しく先生になった、英語の先生なの」


 両親は驚いた。元プロサッカー選手の先生が中学校にやって来たとは。こんな人と一緒になるとは、すごいな。


「元プロサッカー選手なの?」

「うん。3年で戦力外になったんだけど、大学を経て、今年から英語の先生になったんだって」


 こんな波乱の人生を送ってきた人がいるなんて。亜希子よりもすごい人生を送ってきたんだな。


「そんな先生が来たのか。すごいな」

「すごいでしょ?」


 亜希子は自慢げだ。こんな先生がやって来たというだけで、話題になる。


「会ってみたいな」

「でしょ? 最近、あの人と付き合ってるんだ」


 両親は驚いた。元プロサッカー選手の英語教員と付き合っているとは。なかなか面白い彼氏だな。ぜひ、恋を実らせてほしな。


「本当に?」

「うん。高校時代の2つ下の後輩だから」

「そうなんだ」


 こんな経緯があったんだな。ぜひ、交際を順調に進めてほしいな。

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