21

 虎次郎は家で落ち込んでいた。また両親が来て、愚痴を言ってきた。両親が死ぬまで、自分はこんな愚痴を聞かなければならないんだろうか? つらいな。


「はぁ・・・」


 突然、電話が鳴った。誰からだろう。高木からだろうか? それとも、両親からかな?


「ん?」


 虎次郎は受話器を取った。


「もしもし」

「もしもし、お母さんだけど、今さっきはごめんね。これからの人生、頑張ってるんだね」


 母からだった。だが、今さっきの様子とはまるっきり違う。今さっき、愚痴を言ったことを謝っているようだ。第2の人生を応援しているようだ。虎次郎はほっとした。


「ああ。そうだけど。これからの人生、頑張ってるよ」

「そう。だったらよかった。わかってくれたらそれでいいんだよ」


 虎次郎は許しているようだ。母はほっとしている。許してくれないだろうと思った。


「許してくれてありがとね」

「うん。じゃあね」

「じゃあね」


 虎次郎は受話器を置いた。虎次郎はほっとした。これからはもう愚痴を言われなくなる。そう考えると、気持ちが軽くなった。そして、第2の人生を頑張ろうという気持ちになれた。


「やっとわかってくれた。よかった」


 と、インターホンが鳴った。誰か来たんだろうか?虎次郎は玄関までやって来て、扉を開けた。扉の向こうには高木がいた。どうしてやって来たんだろう。まさか、高木が両親に喝を入れたんだろうか?


「どうしたんだい?」

「お父さんお母さん、謝ったって?」


 虎次郎は今さっきの事を知っているかのようだ。どうやら、高木が喝を入れたようだ。


「あーあれね。僕が一喝したのが効いたね」

「そうだったんだ。ありがとう」


 虎次郎は笑みを浮かべた。やはり高木は頼りになるな。


「なーに。俺は虎次郎の味方だって」

「これで一安心」


 虎次郎はほっとした。その表情を見て、高木は笑みを浮かべた。


「よかったね」

「ああ」


 そこに、亜希子がやって来た。まさか、亜希子がやってくるとは。亜希子は凛空を連れている。一緒にここに来ようと思ったようだ。


「どうしたの?」

「両親と仲直りしたんだって」


 亜希子もまるで知っているかのようだ。どうやら両親は、亜希子にも会ったようだ。


「あら、よかったじゃないの」

「うん。付き合ってるのも認めてくれた」


 亜希子はほっとしていた。付き合っているのを認めたようだ。これにて一件落着かな?


「よかったじゃない」

「えへへ・・・」


 と、虎次郎は拳を握り締めた。また頑張ろうと思っているようだ。


「さて、頑張ってくるか」

「張り切ってるね」


 頑張ろうとする虎次郎の姿を見て、2人は笑みを浮かべた。やる気になっていてなにより。その姿を見ると、自分も頑張ろうと思えてくる。


「これからの人生、しっかりと頑張ってるじゃないか」

「そうね」


 虎次郎はこれからの人生をしっかりと頑張っている。そして、戦力外だったことを忘れようとしている。そして、その経験を、後世に伝えていきたいと思っているようだ。


「これからに期待しようよ」

「うん」


 そろそろ帰ろう。明日からまた仕事だ。しっかりと準備をして、明日に備えよう。


「さて、僕も行くか」

「そうだね」


 2人はそれぞれの家に帰っていった。その間、2人は虎次郎の事を考えていた。虎次郎はサッカーへの情熱を忘れないでいる。自分も何かに対して情熱を持たなければ。


 その頃、虎次郎は両親の写真を見ていた。もう愚痴を聞くことはないだろう。そんな両親は自分の交際を認めてくれた。後は亜希子の両親だ。だけど、両親の事を何にも知らない。会った事もない。どんな人だろう。




 ある日曜日の事。虎次郎は家でのんびりしていた。今日は中学校がない。こんな日は日ごろの疲れを取るのが一番だ。今週1週間頑張った自分へのご褒美だ。ゆっくりしよう。


「今日はのんびりしよっと」


 虎次郎はベッドに横になりながら、朝の情報番組を見ていた。最近、仕事ばかりでニュースを見る機会がない。だから、これで今週1週間、何があったのか確認する。見ていると、とてもためになる。


 突然、電話が鳴った。誰だろう。虎次郎は起き上がり、受話器を取った。


「虎次郎兄ちゃん、昔、サッカー選手だったの?」

「凛空か?」


 その声は凛空のようだ。まさか、凛空から電話が来るとは。どうして自ら電話をしたんだろう。


「そう・・・、だけど・・・」

「確かに俺は元サッカー選手だったよ」


 やはり元サッカー選手だったんだ。亜希子の言っていた事は、嘘じゃないんだ。


「サッカー教えてよ」

「いいけど、どうして?」


 虎次郎は戸惑った。まさか、教えて欲しいと言われるとは。だが、言われたら、教えなければ。子供の願いを放っておけない。


「僕、サッカーに興味があって」


 凛空はサッカーに興味があった。将来、少年サッカーに入りたいと思っていた。そして、プロサッカー選手になりたいと思っていた。


「そっか・・・。いいよ」

「ありがとう」


 虎次郎は受話器を置いた。まさか、凛空から誘われるとは。どうしたんだろう。


 虎次郎は身支度を終えると、車で亜希子の住むマンションに向かった。虎次郎はその間、考えていた。

凛空はどうしてサッカーに興味を持ったんだろう。まさか、虎次郎に会って、興味を持ったんだろうか?

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