第3話

「……どうやって、部員を集めればいいんだろ」


 帰宅後、僕はベッドの上で横になりながら頭を抱えていた。よくよく考えてみると、僕は部員集めとか向いて無い。人と話すはうまくないし、そもそも友達関係がほとんど無い。どうしよう、このままだとゲーム部は無くなっちゃう。


 誰かに相談するべきだろうか? でも、僕に相談できる人なんて…………あっ、そうだ。


 僕はゲーム実況者、つまり配信者。配信を通して多くの視聴者たちと交流することが出来る。そこで部員集めについて相談してみよう。


 早速、僕は『DWO』を起動する。そして、いつものようにゲームの世界へと飛び込み配信を開始する。タイトルは、『【急募】僕が大会に出場するために部員を集める方法』。




「よ。早速配信を始める」


コメント

・こんばんわー

・タイトルで草w

・レイちゃんがんばれw

・剣姫様、大会諦めてなかったんだね


 様々なコメントが流れてくる中、僕は早速本題に入ることにした。


「今日は皆に相談したいことがある。タイトルに書いてある通り、ゲーム部の部員を集める方法」


コメント

・ゲーム部www

・レイちゃんの学校にゲーム部あったんだwww

・剣姫様がゲーム実況以外をするなんて珍しい……

・なんか面白そうな予感



「生徒会長の圧力により、このままではゲーム部が廃部になってしまう。阻止するためには一週間以内に部員を集めて、生徒会長の用意したチームに勝利しなきゃいけない」


コメント

・生徒会長www

・いきなり面白い展開になって来たな

・これは、ネタなのか……

・ぶっ飛んだ展開に対してレイちゃんクソ真面目で草


 多くのコメントが流れる中で、僕は本日の配信の目的を話す。


「というわけで、学校で部員を募集する方法を教えてほしい」


 僕がそう発言すると、多くの視聴者からアイデアが送られてくる。



コメント

・ビラ配り

・部活勧誘期間を利用して集める

・とりあえず、部室に来てもらって体験入部してもらうのが良いと思う

・普通に友達誘ってみるのが一番だと思うけど


「なるほど。参考になった。ありがとう」


 僕はそれらの意見を参考にすることにした。


コメント

・おつかれさま!

・成功を願ってるよ!

・俺も部活入ってないから入ろうかな

・もう少し遅く生まれてたらレイちゃんと同じ学校に転校してレイちゃんと一緒のゲーム部になれたのに……


「助かった。また明日報告する。お疲れ」


 こうして配信を終えた僕は、早速ビラ作りに取り掛かる事にした。体験入部のお誘いだ。



 

 翌日、僕は登校時間中にビラを配ることにする。学校に到着するなり、僕は校門のそばに立ち、通る人たちにビラを配布していく。しかし……


「受け取ってくれない……」


 僕の作ったビラは、誰一人として受け取らない。それどころか、視線すら合わせようとしないのだ。……つらい。


 ビラ配り作戦は失敗。僕は落ち込みながらも、次の作戦に出ることにした。その名も、『知り合いを誘う作戦』だ。


 教室に到着した僕は、早速クラスメイトに声をかけることにした。まずは隣の席に座っている女子からだ。名前は確か……佐藤さんだったはず。僕は彼女に話しかける。


「おはよう、佐藤さん。部活動やってる?」

「え? あぁ、うん。吹奏楽部に入ってるんだ。あとちょっとでメンバー入り出来そうなの」

「あ、そう……」


 僕が会話を終わらせると、彼女は不思議そうに首を傾げる。……佐藤さんは厳しそう。次は別の人に話を聞いてみよう。


「おはよう、田中くん。今日の午後予定ある?」

「おう、おはよう。午後は野球部の練習があるぞ。ウチの野球部はすごく強いから、レギュラーをつかみ取るのは大変だ。でも、俺はあきらめてないぜ!」

「そう……」


 たまに会話する程度の仲の田中くんにも話を聞こうとした。だけど彼は野球一筋みたいで、とてもゲーム部に誘えそうな雰囲気じゃない。


「あ、レイちゃんおはよう! 今日ね、陸上部の朝練でいいことがあったの。憧れの先輩と手を握ることが出来たんだよ!」

「ふーん」


 水瀬さんが綺麗な金髪を揺らしながら、嬉しそうに語る。陸上部は朝練があったのか。知らなかった。……彼女も部活に入ってるみたい。


 すべての知り合いに声をかけたが、皆部活や事情があるためゲーム部に誘えるような状態ではなかった。……ダメか。やっぱり、こういう事は僕には向いていないな。


 帰宅した僕は、再び配信することにした。タイトルは『【悲報】誰一人、ビラを受け取らず』


「……というわけで、作戦失敗。ビラは一枚も配れず、知り合いで入部してくれそうな子もいなかった。さらなる案を求む」


コメント

・知り合いじゃ断られるだろ

・やっぱり友達じゃないと

・友達いないのか?

・友達作るところから始めた方がいいんじゃ?

・友達いなさすぎて草

・レイちゃん、友達作ろう

・友達0人説浮上

・友達100人できるかな?



「……うるさい」


 皆、僕に失礼すぎないか。少しだけムッとした。でもまあ、そんなことはどうでもいい。今は部員を集める手段を得ることが最優先事項なのだ。


「……とにかく。今はいいアイディアが欲しい」


コメント

・ビラもダメ、友達もダメ、となると……

・レイちゃんのゲーム実況動画を見せる

・レイちゃんのチャンネル登録者を見せてびっくりさせる

・実は学校にレイちゃんのファンがいるとか


「なるほど……それはありかもしれない」


 コメントの言う通り、ゲーム実況をしていることを公開すれば部員が集まる可能性がある。しかし……


「問題は誰にどうやって見せるか」


 それが問題だ。既に部活に入っている人に見せても恥ずかしいだけだ。それに、ゲームに興味がない人に僕の動画を見せるのも避けたい。



コメント

・まだ部活の決まってない一年生に見せるのがいいと思います

・ゲーム好きの子に見せるのがいいと思う

・レイちゃんがDWOの配信してるって噂を流せば、興味持ってくれるかも

・男を誘惑して入部させるんだ。



「……確かに」


 一年を狙い撃ちにするのは良さそう。部活をやってない一年生なら、ゲーム部に入る余裕があるかもしれない。そのタイミングで、配信を見せれば、僕に興味を持ってくれる可能性が高い。そして、もし入部してくれたらラッキーである。


「じゃあ、一年を狙ってみることにする。……あとは、どうやって誘うか。ビラは受け取ってもらえなかったし、工夫が必要」



コメント

・放送部の人に協力してもらうのは?

・同じクラスの子に頼んで勧誘してもらうのが一番だと思うけど

・一年生の教室の前でゲーム好きっぽい子を呼び出すのが確実だと思う

・レイちゃんが「君、ゲーマーだよねぇ」って声をかければいいんじゃないかな

・レイちゃんが校内放送を使って勧誘したら、誰も逃げられない


「……僕には、ちょっと難易度が高い。でも頑張ってやってみることにする」


 みんなが出した意見は、僕には荷が重い気がする。でも、部員を増やすためにはこれくらいしないと駄目なのかもしれない。みんなにお礼を言ってから、配信を終わらせた。



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